ROD TELLS A STORY

ロッド自身が語るロッキュメンタリー
ロッド・スチュワート
ロッドが1989年にMTVのインタヴューに応えたドキュメント番組からコメントを抜き出したものです。
デヴュー時の頃から、ジェフ・ベックとの出会い、フェイセズの解散、そしてロックに対しての思いを語っています。
(テキスト by ミーハーさん)

デビュー、そして家族との絆

ロッド  確か19歳ぐらいの時は1年ぐらいでやめようと思ってたんだ、実は。
MTV  自信がなかった?
ロッド  ああ、なかった。今でも自信はないよ。この声でいいのかって思うね。


   (コンサートライブの映像・・「Forever young」が流れる)

MTV  '88年は記録的な年ですね。アルバム「Out of order」の大ヒット、グラミー賞初ノミネート、そしてツアーも大成功。絶好調の理由は?
ロッド  人気は不安定な物だよ。今は良い曲が書けてシンガーとしてもまずまずだと思っている。でもファンは気まぐれだし、競争も激しい。ほんと、俺はラッキーだよ。毎日神に感謝している。もし明日声が出なくなっても文句は言わないよ。


   (「I was only joking」のビデオクリップが流れる。セピア色の小さい時の何枚もの写真の映像)

ロッド  スチュワート家は家族の絆が強いんだ。俺だけ変わり者だったけどね(豚と一緒の写真の映像を見なが僕、ロッド。3ちゃいデチュ。ら)。豚を飼ってたこともあるんだ。


   (両親とロッドの少年時代の写真の映像)

ロッド  これは大好きな一枚だね、(自分のことを指して)ひねた顔だね・・。父は俺にサッカー選手になってほしかった。実際6週間だけ頑張ったけど、プロになれなくて、父はショックだったようだね。でも好きな事をさせてくれた。音楽が好きならそれもいい。しっかり儲けろよって・・。



ジェフ・ベック・グループ、
そしてフェイセズへ


   (ジェフ・ベックグループ時代のビデオが流れる)
Jeff Beck Group
ロッド  ジェフ・ベック・グループさ。ミック・ウォーラーのドラム、ロンのギター、ニッキー・ホプキンスのピアノ。あのグループがなければアメリカ進出はできなかった。サンキュー・ジェフ!


   (「Infatuation」のビデオクリップ撮影現場で、ロッドの隣に座るジェフ・ベック。出会いについて聞かれて・・。)

ジェフ  クラブでたむろってたんだ。かなり飲んでたかな。
ロッド  (ロッドがジェフに)タクシーの運転手か?と聞いたんだ。ジェフは俺に「用心棒か?」と聞いたんだ(笑)
ジェフ  ロッドも随分酔っぱらってたよ、こんな感じにね(いすの肘掛けを使って身振りをするジェフ)。あれが出会いだった。ロンドンのクラブだ。午前3時まで騒いでた。
ロッド  ロンもいた。
ジェフ  俺は仲間を捜してよくうろついていたよ。
ロッド  (笑いながらジェフの肩をたたき)俺で悪かったな・・。


   (再びジェフ・ベックグループ時代のビデオが流れる)

ロッド  ジェフは俺とロンの仲の良さがうらやましかったんじゃないかな。ファンも俺とロンに大声援を送ったりしてね。ジェフは面白くなかったかも。そしたら「ロンを辞めさせる」と言いだしね。「俺とロンとの相性の良さでバンドも成功したんじゃないか」と話したよ。俺には信頼できる仲間が不可欠だった。「ロンなしではやれない」と思って二人で「ザ・フェイセズ」に入ったんだ。


    (ロンとロッドが「Sweet little rockn'roller」を歌う映像)We are rockn'roller!

ロッド  ミックは言ったよ。「ロンを奪うつもりはない。おまえとロンのコンビは最高だからね」と。でもフェイセズは成熟しきってた。音楽的にも限界に達してた。ロンもストーンズでやりたがってたし。フェイセズのツアーが始まって2人とも同じ考えを持った。「これがフェイセズとしてのラストツアーになる」とね。

  

   (「Gasoline Alley」にかぶって)

ロッド  フェイセズを辞めて、俺だけが急に売れた。罪の意識があったよ。それに一人立ちする重荷もあった。 新しくアルバムを作るたびに「Gasoline Alley」と比べてしまう。売れなかったけれど良いアルバムなんだ。一番売れたのが「Every picture tells a story」。ヒットを意識しすぎるとみんな同じような曲になってしまい「あれ以上の曲はかけない」と誰もが思う。でも売れたからベストな曲だとは言えないけどね。過去の成功のプレッシャーはきついんだよ。



ソロでの成功

   ('78の「Da ya think I'm sexy ? 」のビデオクリップの映像に重なって)

ロッド  一番ヒットしたのが 「Blondes have more fun 」の「Da ya think I'm sexy ? 」。自分の事を歌っていると思われて意外だったよ。第三者を歌ったのにね。「思い上がりだと」と批判されたさ。誰でも一度くらい批判の的になるもんだ。


   (ビデオクリップの映像が次々流れる中)

ロッド  「Out of oreder」はギターが良くていい曲がたくさんできた。ウケようとは思わない、満足できる物を作りたい。ロックンローラーとしての誇りとファンの聴きたいもの、両方を満たすのは大変さ。ロッド・ザ・モッド

ロッド  俺がもっと地味な男だったら、ソングライターのイメージの方が強かったと思う。だけど独特なヘアースタイルに特徴のある鼻や声のインパクトがありすぎて作曲家には見えないらしい(笑)。それもいいけどさ・・・。


    (ライブでのサッカーボールを蹴る映像)
    

ロッド  ファンの反応やバンドや自分の声の調子など始まるまで分からないよ。それでも観客の上気した顔を見るのは無上の喜びさ。一万人もの人を感動させられるこんなすばらしい仕事はない。「一生の思い出にしてほしい」といつも思ってるよ。アメリカとイギリスの観客は最高だね。ヨーロッパやカナダのファンも良い。コンサートをめいっぱい楽しもうと始まる前から盛り上げてくれるんだ。


    (「I don't wanna talk about it」のライブ映像)

ロッド  でも、コンサートが終わるといつも心に穴があいたような気がするんだ。気が付くとホテルにいて自分に戻るのに5〜6時間もかかってしまう・・・。だからツアーの時は大変さ!でもツアーは好きだよ。移動だって努力次第で楽しくなるし。気の合う仲間と一緒の旅なら苦痛じゃない。


   ('82のインタビューで「大金をつぎ込むビデオの時代はもうすぐ終わる」と言っているのを見ながら)

ロッド  大はずれだったな!!(大笑い)
MTV  今のビデオをどう思う??
ロッド  なくてはならない存在だ。 あらゆる意味でね。ビデオ作りは好きじゃない。時間がかかりすぎるのが苦痛でね。でもできあがりは楽しみさ。もっと作れば好きになるかもね。入念なリハーサルも苦手なんだ。ワインでも飲むと気楽にやれるけど。知覚的なものも余り好きじゃない。 歌のイメージは歌いながら広げていくものだと思ってるから、ビデオでそれをやるのは難しいよ。僕はライブパフォーマーさ。スタジオにこもってビデオを作るのは性に合わない。観てくれる人がいるからノレるんだ。コンサートは毎回死刑台に昇るようなもの。でも楽しいよ。


    (アポロシアタ−の50周年記念ライブからの映像)

ロッド  アポロシアターの50周年ライブに招待されたよ。本当に緊張したよ。尊敬するマービン・ゲイ達の育った所だからね。リトル・リチャードやウィルソン・ピケットに囲まれて歌ったよ。偉大なシンガーの前で歌うのは怖かった。アポロは思い出の場所。初めてのニューヨークに行ったとき、ロンと行った所でもあるんだ。白人の運転手が行きたがらなくて困ったもんだ(笑)。まだそんな時代だった・・。忘れがたい思い出だ。
MTV 昔はオーティス・レディングやサム・クックをまねてると言われたけれど??
ロッド  無意識に似てくるのは仕方がない。逆に俺の歌い方に影響されてるシンガーもいるだろ?一生シンガーでいたいよ。歌は俺の天職。人の心を動かす歌、情熱的な歌を歌っていきたいね。ブルース・シンガーよりはバラードを歌うシンガーなのさ。



シンガーとしての生き方

ロッド  歌を始める前からファッションに興味があった。いつも目立つ格好をしていたよ。車なんかより洋服に目がいった。
MTV 今もファッションは重要??
ロッド ファッションの虜ではないけれど大好きさ!

MTV セックスはロックンロールの一部??
ロッド  そう思うよ。ロックが生まれた時からセックスは重要なテーマ。俺はそれほどプレイボーイじゃない。それよりシンガー、ソング・ライターとして認められたい。10年前と違ってね。だからといってセックスを捨てたわけじゃない。子供の前だから言えないけど・・。


   (イギリス、タブロイド版のゴッシプ新聞の見出しの映像) プリプリッ。
   「ロッド乱痴気パーティー!!」「レストランでお尻サービス!!」(漫画付き)


ロッド  イギリスの新聞には世話になった!! テキーラを飲み過ぎた晩に店の連中にはやし立てられて調子に乗りすぎた。罪のないジョークさ。

ロッド  音楽をやるのにユーモアのセンスは大切だよ。作曲したり歌ったりするのと同じくらいジョークは好きさ。

ロッド  大人になりたくないね。 男はみんなそうだよ。子供心を失わないのは大切だと思う。大人でありながら未熟な部分も持っていたいと思う。俺はやるべき時には真剣に取り組む。だけど根底にユーモアが必要なんだ。

ロッド  '90年代は面白い時代になるよ。デイビッド・ボウイや僕、エルトン・ジョンやミック・ジャガー、みな40歳を過ぎてこの先の10年が楽しみ。俺の終わりはファンが決めてくれる。アルバムが売れなくなりコンサートに人が来なくなるまで俺は続けるよ。今はまだ力がみなぎっているから。それか、ソングライターとして名が残せたら一番うれしい。良い曲を作った男として覚えてもらえたら最高だね!(笑)。