1.叱責される
『むしろ、小人の忌毀(きき)するところとなるも、小人の媚悦(びえつ)するところとなるなかれ。 むしろ、君子の責修(せきしゅう)するところとなるも、君子の包容するところとなるなかれ。』(前集一九二)
(訳)つまらない人間に憎まれ嫌われてもよいが、媚びへつらわれるようではいけない。立派な人間に叱責されてもよいが、見放されてお情けを受けるようではいけない。
現代人は、SNSの普及もあいまって承認欲求がますます強くなっているように思えます。そのため、他者に嫌われたくない、他者から褒められたいと思う心情に囚われやすくなっているのでしょう。
ビジネスにおいても、顧客であれ上司であれ同僚であっても、本当に自分を成長させてくれるのは、時として忠告してくれる人たちです。苦言を避け、ほめられることばかり求めれば、うわべをつくろう表面的な人間関係しか築けなくなり、成果を出すための知恵も生まれず、自分を成長させることもできなくなるのでしょう。
韓非子の言葉にも「至言は耳にさからう」とありますように、リーダーたる者が、組織に貢献し自らを成長させるのに必要な知恵を得るためには、安易な承認欲求を抑えて、耳に痛い忠言にも素直に耳を傾ける度量の大きさが求められるのでしょう。
2.冷たい心
『人の恩を受けては、深しといえども報(むく)いず、怨(うら)みはすなわち浅きもまたこれを報ゆ。人の悪を聞いては、隠(かく)れたりといえども疑わず。善はすなわち顕(あらわ)れるもまたこれを疑う。これ刻の極にて、薄の尤(ゆう)なり、よろしく切にこれを戒むべし。』(前集一九四)
(訳)人から受けた恩は、たとえ深いものでも報いようとしないのに、受けた恨みは浅くても必ず仕返しする。人の悪評は、本当かどうか解らなくても疑わないのに、善い評判は明白なものでも疑う。 このような人は、極めて心が冷たい人である。くれぐれも自戒すべきである。
ビジネスにおいては、顧客をはじめ様々な利害関係者から様々な恩恵を受けて、それに報いるためにできる恩返しをすることで、利害が一致し事業の成功につながっていきます。
また、ビジネスにはトラブルがつきものですが、相手に対して恨みを抱き責任を追及するより、原因を究明して再発防止に努める方が事業の継続に役に立ちます。
そして、ビジネスにおいて、相手を評価する際には、他人の陰口に惑わされたり、嫉妬心から正当な評価が下せなかったりすれば、相手の協力を得られなくなります。
感謝の心を忘れずに、些細なことは水に流し、人の陰口に付き合わず、人の善行を素直に認める冷静な思考と温かい心がリーダーには求められるのでしょう。
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