〜その十 成功の極意〜
松下幸之助は『実践経営哲学』の中で、企業経営で成功するための極意について、次のように述べています。
・企業がその使命を果たし社会に貢献していくためには、常に安定的に発展していかなければならない。業績が不安定では、その使命も十分に果たせず、社会への利益の還元、株主への配当、従業員の生活など様々な面で社会に好ましくない影響をもたらす。
・物事がうまくいったときは“これは運がよかったのだ”と考え、うまくいかなかったときは“その原因は自分にある”と考えるようにしてきた。つまり、成功は運のせいだが、失敗は自分のせいだということである。
・物事がうまくいったときに、それを自分の力でやったのだと考えると、そこにおごりや油断が生じて、つぎに失敗を招きやすい。・・・“これは運がよかったから成功したのだ”と考えれば、そうした小さな失敗についても、一つひとつ反省することになってくる。反対に、うまくいかなかったときに、それを運のせいにして“運が悪かった”ということになれば、その失敗の経験が生きてこない。自分のやり方に過ちがあったと考えれば、そこにいろいろ反省もできて、同じ過ちはくり返さなくなり、文字どおり「失敗は成功の母」ということになってくる。
・不景気の中でも利益をあげ、業績を伸ばしている企業があるということは、やはりやり方次第だということではないだろうか。つまり、業績の良否の原因を、不況という外に求めるか、みずからの経営のやり方という内に求めるかである。経営のやり方というものは、いわば無限にある。そのやり方に当を得れば必ず成功する。
・好況のときと違って、不景気のときは、経営にしろ、製品にしろ、需要者、また社会から厳しく吟味される。ほんとうにいいものだけが買われるというようになる。だから、それにふさわしい立派な経営をやっている企業にとっては、不景気はむしろ発展のチャンスだともいえる。
企業は、事業を成功させ、社会に貢献していくために、時代の変化に適応して、安定的に継続発展していかなければなりません。そのためには、経営者が成功するための正しい考え方をもつ必要があります。
まず大切なのは、物事がうまくいったときには、他者のおかげと考え、うまくいかなかったときは、自分に原因があると考えることです。そうすれば、うまくいっても、おごりや油断が生じることなく、うまくいかなくても、自らの改善を促すことができます。
また、不況のときは、特に経営者の姿勢が試されるのでしょう。不況で業績が悪化した場合に、その原因を外部環境に求めても、何の手立ても見つからないでしょう。一方、その原因を自身の経営のやり方に求めれば、やり方次第で成功への道があることに気づくでしょう。
不況のときは、好況のときより、顧客や社会から、商品や経営について要求も厳しくなりますが、企業にとっては、商品、サービス、経営のあり方を改善するための重要な機会にすることができ、事業のさらなる成功につなげることができるのでしょう。
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