〜その九 使命観をもつ〜
松下幸之助は『実践経営哲学』の中で、企業を経営していく上で使命観をもつことの大切さを、次のように述べています。
・人々の生活文化の維持、向上という願いにこたえ、それを満たしていくところに、事業経営の根本の役割というか使命があると考えられる。
・あらゆる生活物資、さらにはサービスとか情報といった無形のものを含めて、人々の生活に役立つ品質のすぐれたものを次々と開発し、それを適正な価格で過不足なく十分に供給するというところに、事業経営の、また企業の本来の使命がある。
・供給する物資なりサービスの内容は業種によりさまざまであっても、そのように事業活動を通じて、人々の共同生活の向上に貢献するということは、あらゆる企業に通ずるものである。この根本の使命を見忘れた事業経営は真に力強いものとはなり得ない。
・利益が企業の究極の目的かというと、そうではない。根本は、その事業を通じて共同生活の向上をはかるというところにあるのであって、その根本の使命をよりよく遂行していく上で、利益というものが大切になってくるのであり、そこのところを取り違えてはならない。そういう意味において、事業経営というものは本質的には私の事ではなく、公事であり、企業は社会の公器なのである。
・たとえ個人企業であろうと、その企業のあり方については、私の立場、私の都合で物事を考えてはいけない。常に、そのことが人々の共同生活にどうのような影響を及ぼすか、プラスになるかマイナスになるかという観点から、ものを考え、判断しなくてはならない。
・”企業の社会的責任”ということがいわれるが、その内容はその時々の社会情勢に応じて多岐にわたるとしても、基本の社会的責任というのは、どういう時代にあっても、この本体の事業を通じて共同生活の向上に貢献するということだといえよう。こうした使命観というものを根底に、いっさいの事業活動が営まれることがきわめて大切なのである。
世の多くの企業が利益を目的に経営されていますが、松下幸之助は、世の中がより豊かになるために、事業活動を通じて社会によりよいモノ・サービスを供給することに企業の存在意義があり、そのためには、正しい使命観をもつべきだと説いています。
企業は、自らの事業活動が、人々の生活の向上、社会の発展に貢献できるようにしなければなりません。自らが供給するモノ・サービスが世の中を豊かにするよい影響を与え、悪い影響を及ぼさないよう自らを律する社会的責任を負わなければなりません。
そのために、経営者は、企業が公器である自覚をもって、自らの事業で社会に貢献する強い使命観をもたなければならないでしょう。
そして、その使命を継続的に実現するために「利益」が必要となりますが、それは目的でなく手段であることを肝に銘じる必要があるでしょう。
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