桜の季節になりました。万葉集でも多くの歌が詠まれているように、桜は古来から日本人に愛されてきました。日本最古の桜とされているのは、山梨県の実相寺の境内にある山高神代桜(やまたかじんだいざくら)と呼ばれる桜の木で、樹齢約2,000年と言われています。弥生時代から悠久の時を超えて日本人を魅了し続けてきたのでしょうか。
山高神代桜は、高さ約10メートル、幹の周囲は約12メートルに及ぶ巨木で、天然記念物第1号に指定されていますが、幾度と枯れかけながらも、人の力を借りて樹勢を回復させてきました。長い歳月の中で、病苦に耐えながらも、懸命に花を咲かせて人々に喜びを与え続けてきたのでしょう。
桜の花は、温かくなると、春の到来を告げるように、一斉に豪華絢爛な花を咲かせ、短い間咲き誇った後は、潔く一斉に散りゆく姿を見せます。桜から感じとれる生命を愛でる心、季節感、無常観が日本人の豊かな精神性を育み、人も桜を大切に育て日本全国に広げる。そんな豊かに支え合う関係を、人と桜は、大昔から続けてきたのでしょう。
現代においては、人類による自然環境の破壊が、世界中で様々な形で大きな社会問題になっています。地球環境を守り、人と自然が共生できる社会が世界中で実現するために、日本人の自然を慈しみ調和のとれた文化を築いてきた精神性と、近代以降の産業化の波の中で破壊された自然環境を回復させてきた日本の環境テクノロジーが、全世界で役立てられることを切に願う今日この頃です。
2025.04.01
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