街中至る所が観光スポットであるローマ。歩いて周ることも可能ではありますが、やはり観光の強い味方といえば、バスです。地下鉄も走っていますが、どうも痒いところに手が届かない・・・ということで、ローマ滞在中は、バスのお世話になることになります。当然、地元の人々、ロマーノにとっても重要な生活の足であります。

ナヴォーナ広場の辺りへ向かうバスに乗っていた時のこと。

ローマ名物である渋滞に巻き込まれてしまいました。停留所はもう目の前すぐなのに、ここからバスはなかなか進みません。私達のバスの終点でもあるここは小さなターミナルのようになっており、行き先の異なるバスがいくつも並んでいます。

進んでいるのか止まっているのか分からない程ののろのろ運転の中、車両の真ん中辺りにいた紳士が声を上げました。

「ここでバスを止めて、降ろしてくれ!」

運転手の答えは、「もう少しで到着するから。ここはいつも込むんだ!」

「昨日はここで降ろしてもらったぞ!」と、紳士。

もうターミナルの中には入っているのですが、運転手は、もう少し進んでぐるりとターミナルを回り、本来このバスが止まるべきである場所まで、どうしても行きたい様子。紳士の提案を無視したバスは、再びのろのろと進み始めました。が、数メートル動いたかどうか、ってところで、完全に渋滞にはまり込んでしまいました。窓の外、先の方を見やると、ただでさえ細いローマの道なのに、ちょうど工事をしており、車線が半分になっていました。交通量の多い場所でもあり、バスが進む気配は全く無くなってしまいました。

先ほどの紳士、運転席のすぐ横に陣取り、「だから、さっき言っただろう!どうしてこうなることに気がつかなかったんだ!」

50代と思わしき、身なりの良い紳士、ものすごい勢いでまくりたてます。でも、今更どうにもならない・・・。あーだ、こーだとバスの中は騒然とし始め、乗客はみな口々に運転手を責め立てます。

怒り納まらない様子の紳士と、自分の主張は曲げない運転手。白熱する口論に、前の方の座席に座った老婦人が大声でたしなめます。

「Buono!!」

ブォノ。『良い』という意味なのですが、小学校で悪ガキ達を注意する時によく先生が使っていました。『ラガッツィ!ブォーニ!!』いい子にしなさい!っていう感じでしょうか?。私も子ども達相手によくこの言葉を使いましたが、50代の紳士にも使う言葉だとは知りませんでした。

ま、ともかく、『Buono』な状態にはならず、車内の口論は白熱の一方です。運転手のそばで文句を言い続ける2〜3人の乗客。他の人たちもそれぞれ大声で文句を口にしています。私たちのすぐ後ろの大人しそうに見えた若い女性も、その風貌に似合わず、突如大声でまくし立て始めました。

「で、降ろすのか、どっちなんだ!」

ってな感じの話になり、ドアのそばに座っていたお上品そうな老婦人、エレガントなとても素敵なご婦人でした。そして、少し足がお悪い様子・・・。こんな揉め事には関わらなさそうなお上品さだったにも関わらす、突然立ち上がりふらふらと車両真ん中のドアの前に。口論の様子から、そろそろ降ろしてもらえそうだと踏んだ様子です・・・、が、タラップに降りて待つも、ドアは開く様子はありません。運転手も妥協する気はさらさら無いようです。痺れを切らした老婦人、「開けろぉう!」とばかりに、ドアをガンガン叩き始めます。

彼女の催促にも関わらず、運転手は最後まで職務を全うすることに成功しました。

ご存知のように、イタリア人、ゼスチャーがとてもオーバーです。両手を広げ、振り回しながら大きな声で主張を述べる彼ら。「私もそう思う!」「それがいい!」なんて、ちょっとお芝居を見ている気分でした。願わくば、次回、遭遇した時には、私も参加することができますように。もうちょっと語学力を磨かなくっちゃ!!