Tivoli−タイトル
 


ヴィラ・デステ
Villa d’Este ヴィラ・デステ
数ある噴水の中でも、ここが私の一番のお気に入り
ローマで数日過ごすことが出来たら、ちょっぴり足を伸ばして“Tivoli ティボリ”へ。
がんばって足をう〜んと伸ばしたら、フィレンツェへも日帰り出来ますが、フィレンツェへ行くなら、宿泊する方がいいと思うので、日帰り旅行ならティボリへ。朝、出発したら、夕方にはローマでお買い物と食事が出来ちゃいます。地下鉄とバスを乗り継いで、ローマの東、約30km。ハドリアヌス帝の別荘が残ります。
地下鉄B線の終点、Rebibbiaの駅前からティボリへ向かうバスが出ています。さすがは観光地、バスは乗客で満員。なんだか、おばあさんが多いなぁ・・・とは、思っていたのだけれど、途中のバス停で理由が分かりました。ティボリといえば、テルメ。温泉です。バスのドアが開くと、座っている私に届くくらいの硫黄の匂い。イタリアでは、日本と違って温泉は医療なんですって。だから、医者の診断書がないと入らせてもらえないとか。温泉を目の前にして入ることが出来ないというのは、なんだか悔しい。日本に戻ったら、有馬温泉でもどこでもいいから、思いっきり、浸かってやるもんねーだ。病人じゃないけど。
おばあさんの代わりに硫黄の匂いを乗せて、第1の目的地は、“Villa d’Este ヴィラ・デステ”。広い緑の庭園には、数え切れないほどの噴水。中世の修道院をエステさんが、豪華な別荘に改築したものだとか。残念なことに、この日は夏のローマには珍しく朝から曇天。緑に覆われたヴィラ・デステ。お天気なら、もっと美しかったんだろうな。ちょっぴり、残念。しかし、この遮るものがほとんどない庭園の中、炎天下だったら・・・、と考えると、これくらいのお天気でちょうどよかったのかもね。
噴水といったって、日本の駅前や公園にあるものを思ってもらっては困ります。 私も、大きなお庭の真ん中に、これまた大きな噴水がでぇ〜ん、と座っているのだと、「トレビの泉」のようなものを想像していました。ところが、着いてみてびっくり。これじゃあ、庭の中に噴水があるのか、噴水の中に庭があるのか・・・です。数百年の時を経て、もとの姿がわからないほどに埋め尽くされたる苔。緑蒸す噴水に囲まれた宮殿。16世紀・・・。きっと、夜な夜な絢爛豪華な宴が開かれたんだろうね。ふと、木陰に回ると、ドレスで着飾った人達がダンスしていそう。なんて、時が止まっているかの錯覚を起こしてしまうような静けさ。夏の間、夜間はライトアップされているのだとか。昼間に見てもこの雰囲気。ライトアップだなんて、さぞかし幻想的なのだろうな・・・。
ヴィラ・デステ
ハドリアヌス帝の別荘
Villa Adriana
ハドリアヌス帝の別荘
しかし、今日はこのお天気。いつ雨が落ちて来てもおかしくなさそう。せっかく、ここまで来たのだから、もう1カ所、“Villa Adriana ハドリアヌス帝の別荘”にも行ってみたい。別荘の跡、というから、絢爛豪華な宮殿のようなものを想像していたのだけれど、着いた先は、これは遺跡!だよね、どう見ても・・・。ハドリアヌス帝が広い、ひろ〜い、ローマ帝国を旅して見てきたものを、このお庭に再現したのだとか。「お庭」というより、「町」のよう。ギリシアのアテネを模した“Pecile ポイキレ”と、エジプトを再現した“Canopo カノプス”が有名なんだとか。
こんなお天気のせいか、私たちの他には、ほとんど人がおらず、ますます、幻想的。なんだか、違う世界に迷い込んでしまったみたい。天気のせいか、水面はグリーン。古代彫刻がそっと、影を落とす。このまま、この水辺に座って、古代に思いを馳せながら、ぼんやりとしていたいところなのだけれど、いよいよ、空が怪しそう。こんな屋根ひとつないところで、雨に降られては大変。と、現代へタイムスリップすることに。バスひとつで、数百年の時を超えられちゃうんだから、すごいよね。
行きは気がつかなかったのだけれど、帰りのバスからの車窓は素晴らしかった。ローマからたった1時間程度の郊外なのに、窓の外は、のどかな田園風景。オリーブ畑に、葡萄畑。先週まで滞在していた、トスカーナみたい。ローマにもこんなところがあるなんて驚き。1日で、古代ローマまで旅して、現代に戻る間にトスカーナに気分だけお出かけ。あとは、美味しいご飯でお終い。さぁて、何を食べに行こうかな?

1995.07


ハドリアヌス帝の別荘ハドリアヌス帝の別荘


 

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