数年前、イタリア中東部のマルケ州にある小さな町に滞在していました。ホントに本当に小さな町でした。最寄で最も大きな町は、Jesi(イェーシ)という町。なんでも、フェデリーコ・セコンドが生まれた町だとかで、その辺りには彼の名前を冠したものがたくさん。フェデリーコ・セコンド通りはもちろん、ホテル・フェデリーコ・セコンド。私がよく利用した旅行代理店の名前も、ヴィアッジョ・フェデリーコ・セコンド。私が滞在させてもらっていたお家の小さな弟の名前もフェデリーコ。「ここでは、フェデリーコ・セコンドってよく耳にするし、この名前は響きも綺麗で好きだから、こう名付けたの」と、お母さん。プーリアにフェデリーコ・セコンドが建てたお城がある、と聞き、一度、見てみたいな・・・と、思っていたのです。

ということで、遂にやって来ました、プーリア州です。とにかく、この約1週間の旅のメインは、『フェデリーコ・セコンドのお城を見ること!』であります。バロック建築を見るのも、アルベロベッロで世界遺産のトゥルッリに宿泊するのも、憧れのレッチェを訪れるのも、全てはオマケです。目的は、あくまでも、『フェデリーコ・セコンドのお城』。

プーリアにフェデリーコ・セコンドのお城がある。という情報しか私は持っていないので、とりあえず本屋に向かいます。ありました、地球の歩き方05〜06、南イタリアとマルタ編。世界遺産に指定されているカステル・デル・モンテ。“How to access”によると、「最寄りはAndriaというところ。この鉄道駅から約18キロの距離。通年のバスはなく、7/1〜9/30頃のみの運行。これ以外はタクシーやレンタカーに頼るしかない。」。オッケーです。完璧です。これだけの情報があれば、着いたも同然です!
今回、イタリアには8泊する予定。ガイドブックを見ていると、行きたいところがわんさと出てきましたが、あくまでも目的はお城なので、旅程の前半にお城訪問の予定を入れます。Andria(アンドリア)へは、プーリア州の州都バーリより電車が出ています。バーリから1日がかりでお城へ行くことになりそうです。バーリに宿泊して、朝からお城へ向かい、その日のうちにアルベロベッロへ行き、トゥルッリに宿泊する、という予定を立てました。5月なので、タクシーで訪問ですね。

関空を午前中に発ち、夜遅くにローマに到着。その日はローマに宿泊し、翌早朝、鉄道でバーリへ向かいます。ローマからバーリまではユーロスターで約5時間。これからお城は無理なので、この日の午後はバーリで観光をして過ごします。さて、バーリに宿泊した次の日。いよいよ、カステル・デル・モンテ、フェデリーコ・セコンドのお城へ向けて出発です。

バーリより、最寄の鉄道駅であるアンドリアまでは、バーリ・ノルド線という私鉄で約1時間です。ここからはタクシーに乗っていけばいいんだよね。18キロということは、20分くらいで着くのかな?。午前中にお城を観光して、バーリに戻る。バーリで昼食を取って、この日の宿泊地であるアルベロベッロへ向かう、というのがベストの予定です。

いうことで、8時45分バーリ発の電車に乗り込みました。このバーリ・ノルド線は、日本でインターネットで調べて時刻表を印刷して持ってきています。準備は、ぬかりありません!。随分と便利な時代になりましたね。ヴィヴァ!インターネット!。バーリからアンドレアまでは、往復で6.80エウロ、出発も到着も時刻表の時間通りでした。
アンドリア駅には、9時51分に到着。さて、ここからタクシーなのですが、その大事なタクシーが見当たりません。駅前に停まっているだろうと思っていたのですが、見当たらないのです。その上、普通なら駅前にあるはずの、『Taxi』の標識もありません。駅の切符売り場の窓口で尋ねてみました。「カステル・デル・モンテに行きたいんだけど・・・」「あぁ、バスは9時30分に出たところだね。次は午後までないよ。」「タクシーで行きたいんだけど・・・」「タクシーは無いよ。次のバスは午後だよ。」

親切なお兄さんでしたが、どうしても彼の言うことを信じることが出来なかったので、駅の外にでます。駅前の広場の左手側にバス会社のマークのある扉を見つけました。開けてみると思ったとおり、バスの営業所でした。「すみません、カステル・デル・モンテに行きたいんですが・・・」「あぁ、バスは行ったところだね、次のバスは15時30分」。と言いながら、私に時刻表を手渡してくれました。「あの・・・、タクシーはないんですか?」「タクシーはないよ、バスが1日に2本。9時半と15時半。帰りは11時半と17時半。」

親切なオジサンでしたが、どうしても信じたくないので、町を探索してみることにしました。駅前にタクシーが停まっていなくても、チェントロ(町の中心)には一台くらいあるかもしれない。駅前に標識が立っています。『市役所』という矢印が右側に向かっています。市役所の前になら、タクシーがいるかもしれない・・・。15分くらい歩いて、市役所らしきところに着きましたが、タクシーはいない。
しかも、ぜんぜんチェントロ(中心街)じゃない。タクシーが存在しない町でタクシーを呼んでもらうにはどうしたらいいんだろう・・・(そんな小さな町はよくあります。私の滞在していたマルケ州の町もタクシーは存在しませんでした)、ショックで呆然とした頭で、一生懸命考えを巡らせながら駅まで戻ってきました。駅前の広場でよく目を凝らすと、ツーリストインフォメーションのマークが書かれた標識がありました。近づいてよく見ると、ピアッツァ・ヴィットーリオ・エマヌエーレ・セコンドと書かれた小さな文字と電話番号が。よし、ここに行こう!。人影のない駅前でしたが、幸運なことに、標識の近くに車を停め荷物を積み込んでいるおじさんがいました。標識を指差し、インフォルマッツィオーネ(インフォメーション)に行きたいんだけど、ヴィットーリオ・エマヌエーレ・セコンド広場はどこ???

私たちが先ほど様子を見に行った市役所とは反対の方向でした。広場までの道は店の立ち並ぶ町のメインストリートのよう。こっちがチェントロでしたか。

『狩猟禁止』の標識。
教えてもらったとおりに進み、約15分ほどで、無事にインフォルマッツィオーネを見つけることが出来ました。中には若いお兄さんがひとり。「カステル・デル・モンテに・・・」「あぁ、パンフレットが欲しいんだね」「そうじゃなくて、行き方を・・・」「あぁ、バスの時刻を調べてあげるよ」「いや、そうじゃなくて。バスの時刻表は持ってるんだけど・・・」「次のバスは、今日の午後だね」「タクシーはないのかな?」「ノー。」「・・・・・。ありがとう。」

インフォメーションの前の広場で呆然と立ち尽くす私たち。どうしよう・・・。ここで15時半まで、あと5時間近く待つしかないのか。

しかし、駅からお城へ向かうバスは9時半と15時半の2便のみ。行ったら当然、戻ってこなきゃいけないんだけれど、帰りの便もやはり2つだけ。お城を発つのが、11時半と17時半。17時半にお城を発ったら、何時に戻って来れるんだろ?。今日は、アルベロベッロの宿泊を既に予約しています。トゥルッリに宿泊する、というのも、今回の旅の主要な目的であるので、すごく楽しみにしていたし、キャンセルするのは非常に辛い。お城は諦めるしかないのか・・・。とりあえず、カフェでも飲みながら検討するかと歩き出したのだけど、手元の電車の時刻表を見ると、今から急いで駅に戻れば間に合う電車がある!。

トゥルッリに宿泊した後は、南へ向かい、ブリンディシに2泊する予定でした。幸いなことに、ブリンディシのホテルの予約が出来ていない。予約の問い合わせをしたけれど、返事が来なかったのです。ブリンディシの宿泊を1泊にして、バーリにもう1日滞在しよう。そして、お城にリベンジだ!!