ここでは、車輌や線路のちょっとしたお手入れ、気軽にできるメンテナンスについてまとめてみました。頑丈をもって鳴らす北米製品も、いつかは集電不良や油切れを起こし、さらに放置すれば、やがて重大な故障に発展することもあります。
簡単なことばかりですが、日常こうしたお手入れをしていただくことによって、より長く快調にご使用いただけます。ぜひお試し下さい。
(豆知識他項のお手入れ記事も、順次こちらにまとめる予定です)

§1・車輪とコレクターを清掃しよう

車輪やコレクターは、モーターを動かし、諸機器を作動させる源である電気の通り道です。ここは汚れの溜まりやすい箇所でもあります。レール上のホコリや油が、車輪とレールの間に生じる微細なスパーク(火花)の熱によって車輪に付着し、黒いスケール(垢)になると考えられております。
車輪やコレクターが過度に汚れると、走りがギクシャクするばかりか、逆転器やサウンドユニットの誤作動にもつながる恐れがあります。運転数時間毎に清掃してやりましょう。
必要なモノは左の写真のとおりです。まずひっくり返した車体を乗せるクッションになるもの(古タオルなど)、車輪を拭くための綿棒かティッシュペーパー(駅前で配っているもので可!)、シンナー、ピンセット。シンナーはいつもの癖で、ラッカーシンナーが写っていますが、プラ製部分にこぼして溶かしたりしてしまってもいけませんから、プラ用シンナーを使うことをお勧めします。

車体を寝かせるベッド?を作りましょう。スポンジなどでできた「修理台」と称する小洒落たモノも市販されていますが、廃物利用で充分役に立ちます。古タオル1枚を四つ折にして下に敷き、もう1枚をノリ巻きのように巻いて、手前に置きます。
(ご注意)ブラス製のものなど、ディテールが細かい車輌は、タオル地だと引っかけて破損しやすいので、綿やペーパータオルなどを上に敷いてから車輌を置くとよろしいです。
裏返した車輌は、写真のように手前に傾いた姿勢で、巻いたタオルを枕にもたれるような感じで寝かせます。車輌の屋上機器の配置や、屋根の形状に合わせて、下にも巻いたタオルを適宜挟み、ディテールが折れたりしないようにします。
コントローラーからの2本のコードを、コレクターと車体の金属部分(写真ではカプラー取り付けボルト)に接続します。写真のようにクリップ付きコードを使用するのが簡単かつ確実でしょう。
客車や貨車の車輪を清掃する場合は、この配線が必要ないのはもちろんです。
車輪を拭くものは、綿棒があれば手軽ですが、Oゲージくらいの大きさになりますと、かえってティッシュペーパーを丸めたものの方が効率がよく、しかも無料ときていますから、面倒でなければこちらをお勧めします。写真のように直径5ミリくらいの小さな丸っ玉を、作業の前に沢山作っておきましょう。
ピンセットにはさんだティッシュの玉を、シンナー(だからラッカーシンナーを使うなと…)に浸して車輪を拭きます。しずくが垂れるほどビチャビチャではいけません。全体が湿る程度がよろしいです。
ラッカーシンナーはもちろん、プラ用シンナーでも、車体や台車に垂らしますと跡が付くことがありますから、くれぐれもご用心!
コントローラーのボリュームを操作して、車輪がゆっくり回る程度の電圧に調整します。ピンセットの先のティッシュ玉を車輪のトレッド(踏面・レールに乗る部分)に押しつけると、ティッシュがみるみる黒く染まっていくのがわかるでしょう。
車輪に巻き込まれないよう、力加減にご注意下さい。
車輪の裏側も同様に拭いてやります。直接集電には関係ありませんが、ここは軸受部の油が車軸を伝わって、遠心力で広がり、それがホコリを呼んで固まっている場合が多いものです。レールを汚す原因にもなっている場合があるので、やはりキレイにしてやりましょう。
ついでですから、車軸に巻きついているホコリや毛髪も、ピンセットの先でつまんで取り除いてやります。お座敷運転で毛髪やペットの体毛をたくさん車軸やギヤにからませてしまい、がんじがらめになって動きが悪くなっている例をよく拝見しますので…。(お座敷運転の前には床に掃除機をかけましょう!!)
ううむ、ピントが合わず申しわけありません。電動カミソリのCMなら、ここで「今朝剃ってきたんですがネエ…」と来るところですナ。1枚の車輪を数秒拭いただけでも、最初はこのくらい汚れが出ます。白いティッシュが、まるで炭団のように真っ黒に変わり果てました。
汚れぐあいが実感できますね。これを放置すれば、故障の原因になるのもむべなるかなといったところです。
汚れが出なくなるまで、何度もティッシュを取り替えて拭いてやりましょう。各車輪おおむね1個を使用し、下の列が1回目、上の列が2回目のものです。上の列は下に比べて、だいぶ汚れが薄まってきたのがわかります。
車輪を拭き終わったら、コントローラーのボリュームをOFFにするのを忘れずに…。
車輪の清掃が済んだら、コレクターも拭いてやりましょう。こちらは動力がついているわけではないので、指で回しながら汚れを拭きとってやります。
付記しますと、シンナー拭きでは落ちないガンコな汚れは、ついヤスリやサンドペーパーをかけてしまい勝ちですが、ヤスリ傷が新たな汚れを呼ぶこともありますのでなるべく避け、やむをえない場合でも目の細かいサンドペーパー(#500〜#800程度)で軽くこするくらいにしておきましょう。


§2・お手軽に線路を清掃しよう

車輪とともに、電気の通り道であるレールは、車輪やコレクターとの間に生じるスパークや、車輌から飛散した油、お部屋のホコリなどで徐々に汚れ、放置すると、いずれは通電が阻害されて運転に支障をきたします。こちらもマメに拭いてやりましょう。
もっともお手軽な線路の清掃は、丸めたウエスを握ってゴシゴシ…それもよろしいのですが、ここは少々スマートかつ能率的?に参りましょう。用意するものはタオル地以外のウエス(Tシャツなどが最適。写真は手拭の切れっ端)と、カマボコ板くらいの板切れか、同じような大きさにダンボールを二つ折りにしたもの、それとガムテープです。
板にウエスをたるみのないように巻きつけます。布の端のほつれに、レールの継ぎ目などが引っかかるといけないので、端を折りこみながら巻くのがよろしいです。 車輪の清掃のときと同じく、ウエスは汚れたら取りかえるのですから、同じ大きさに切ったウエスを何枚も用意しておくとよいでしょう。
巻いたウエスをガムテープ(布テープがよい)で留めます。スマートとか言っておきながらすごくガサツな外観がGood。
まあ、お手軽に入手できるものでお話を進めておりますので、ここはご勘弁くださいまし。
シンナーを表面にまんべんなく染み込ませます。これも車輪のときと同様、表面がまんべんなく湿る程度で、ポタポタ垂れるまで染み込ませるのはやり過ぎです。(あ、やっとプラ用シンナーが出てきた。実は中身がほとんど入っていません。)
写真のようにレール面に水平に押し付けて、レールの頭についた汚れを拭き取ります。ゴシゴシ往復させるより、一定距離をスーッと一方に撫でるように拭きましょう。汚れが出なくなるまで繰り返し…。
「レールの側面は拭かなくていいの?」というご質問も時々ありますが、電気が主に通るのは、車輪の重量がかかる頭部の水平部分ですので、ここをキレイにしておけば通電性能が確保できるのです。
写真のようなプラ製道床の線路の場合は、プラの部分にシンナーが垂れないよう気をつけて…。
月に1回は拭いている店頭運転場のレールでも、一周拭きますとこれだけの汚れが出てきます。快適な運転のためにも、ぜひレールの清掃におはげみ下さいまし!


§3・クリーニングカーを使って線路を清掃する

線路延長が長く、とても手作業では掃除し切れない! という方、センターラインプロダクツ製の「レールクリーナー」なるクリーニングカーは如何でしょうか。
これは手で拭くように強い圧力をかけるわけではありませんから、すっかりキレイになるというわけではありませんが、通電を阻害するような汚れを除去するという意味では、非常に効率が良く、過去にさまざまなスタイルのものが発売され、珍案続出の感があったクリーニングカーの中では恐らく最も利用価値の高いものです。
真鍮ムクの枠の中に、コットンローラーが落としこまれた単純なスタイルですが、原理は従来のものと大きく異なり、「圧力をかけて拭き取る」「ヤスリなどを回転させて削り取る」などではなく、「薬液を塗布して汚れを溶解させ、浮いた汚れを吸い取り、枠の内側に擦りつけて排出する」というプロセスで、長時間に渡り清拭効果を保つという優れた性能を持っています。
この製品の高性能は、構造もさることながら、指定の柑橘系染み抜き液「グーゴン」に着目したところが大きいでしょう。ご存知のように、ミカンやオレ
ンジの成分には、スチロール系樹脂を溶解させる作用があります。レールに付着する汚れは、主に服などの繊維を主体としたホコリが、車輌から飛散した油や、車輪・レール間のスパークの熱によって貼り付いたものと考えられますが、「グーゴン」はこの汚れを実に良く溶解させるのです。
クリーニングカーによる清掃の手順を見てましょう。
まずはコットンローラーの表面に、まんべんなく「グーゴン」を注ぎます。染み込ませる量は清掃距離にもよりますが、ローラーの表面が濡れる程度の、少し多いかなと思うくらいがよろしい。
なお、ローラーの中にはボルトやナットなどをギッシリ詰めこんで、ウエイトをかけることを忘れずに。これを機関車で推進させるのですが、速度はあまりゆっくりだと、ローラーについた汚れを枠の内側に排出する効果が落ち、早過ぎると今度はローラーに染み込んだ液体が飛び散りますので、早からず遅からずの速度に、実験の上調整して下さい。
あとはクリーニング列車を運転させるだけ。お茶でも飲みながら、列車が走るのをノンビリ眺めていれば良いのです。
エンドレスでしたら、最低7〜8回は周回させましょう。ここでレール上面を観察して下さい。
クリーニングカーが通過した後のレールは、「グーゴン」が塗布されシットリと濡れています。汚れのついた部分を見ると、頑固にへばりついた汚れが「グーゴン」によって次第に軟らかくなり、浮いたようになってくるのがわかるでしょう。浮いた汚れは、列車が通過するたびローラーに少しづつ吸収され、ついには無くなってしまいます。
清掃が修了したら、今度はクリーニングカーを観察してみて下さい。レールの汚れを吸収したローラーには、三本の黒い筋がついています。ローラーがはまっている枠の内側を見てみると、ローラーが押されていた方の壁面に、横一線に泥のようなものが黒い筋になってついているのが見えるでしょう。これがローラーから排出された汚れです。
この作用のおかげで、高い清掃効果を長時間維持できるのです。なお、清掃終了後はすぐに列車を走らせたりせず、20分ほど置いてから運転を再開するようにしましょう。「グーゴン」は乾燥するのにしばらく時間がかかり(だからこそ汚れをよく溶解させると言えます)、清掃後すぐに重い列車を走らせたりするとスリップする恐れがあるからです。
なお、ローラーが汚れてきたら、上の写真のように、中性洗剤をつけて、両手でキリをもむようにして洗い、終わったらよく水を切ってから陰干ししましょう。一度洗うとコットン部分の厚みが減るので、汚れを取る能力は若干落ちますが、洗浄することにより反復して使用できます。


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