8月27日のニュース





お久しぶりです。華です。

今日は実はニュースではないのです。

先日行方不明だった編集長から突然こんな命令がありました。

「会社の引越しをするぞよ」

どうやら第3編集局も東京に進出するようです。

だから今日は二人で引越し準備です。

*****

華: 「編集長、どこにいってたんですか?!」

いきおいよく編集長室のドアを開けると、編集長(イギリス紳士)はデスクで一輪の花を眺めていた。

穏やかな表情である一方で、深く感じ入るものがあるらしかった。

その一輪の菊の花から顔を上げて、

編集長: 「やあ華ちゃん。久しぶり。」

華: 「やあ華ちゃん、じゃないですよもう。仕事ほったらかしにして。心配したんですよー(ちょっとだけ)。私だけじゃなくてきっと他にも(ちょっとだけ)心配してくれた人がいると思いますよー(やっぱrりちょっとだけ)」

編集長: 「ああ、すまん。実はね、旅に出ていたのだよ」

華: 「旅?」

編集長: 「ああ、この一輪の花を探すたびにね。この幸せをもたらすといわれてる七色の花はどこかでひっそり咲いているといわれていたんだ。コスモスを帽子にさしてたんぽぽをお昼寝枕にしてアカシアのアーチを抜けて・・・」

華: 「おまえはルンルンか?花の子なのか?

編集長: 「これが見つかったおかげで僕は幸せさ。これでフラワーヌ星に戻れるよ」

華: 「結局裏庭にあったのですか?」

編集長: 「いや、裏のお墓に供えてあった」

華: 「・・・。」

幸せにはなることはないだろう。

編集長: 「ところで今日は引越しだ。早速とりかかってくれたまえ。そのあいだ僕はガンダムのビデオを見ているから」

ガンッ!!

思い切り机を蹴飛ばしてみた。

編集長: 「・・・というのはウソでね、さあ、僕も片付け始めるとするか・・・」

こうして二人での作業が始まったわけだけど、この第3編集局、あらためて片付けてみると仕事に関係ないものもたくさんあるようだった。

今日一日で引越し準備終わるのかな・・・。

華: 「たくさんモノがありますねえ。運賃とかのこともあるし、とりあえず、捨てれるものは全部捨てましょう。」

編集長: 「全部ってことは・・・、『夢見がちな自分』とか『切なすぎる思い出』とかも捨てたほうがいい?

華: 「・・・。」

編集長: 「あと童・・・

華: 「オマエが廃棄されたいか?

編集長はビビったのかそのとき手にもっていたガンダムのプラモデルを強くにぎりしめ、パキッと何かのパーツを折ってしまったようだった。

今、編集長には部下に叱責されたことと大切なプラモデルに傷を負わせてしまったことの二つの悲しみがあるようだった。

でもこの分ならちゃんと仕事してくれるかもしれない。

華: 「この電子レンジ、捨てちゃってもいいんですか〜?」

編集長: 「電子レンジ、か・・・。冷凍食品は暖めてくれたけど機種が古いから僕のココロは暖めてくれなかったな・・・。

華: 「そうそう、最近の電子レンジは進化して今じゃ寂しい人のココロも暖めてくれるんですよね、って、んなわけねーだろ。もしかして寂しいんですか?人生が。」

編集長: 「・・・。」

どうやら図星だったようだ。

華: 「この洗濯機も古いですね。捨てるんですか?」

編集長: 「その洗濯機、汚れた服は洗ってくれたけど、僕の人生は洗い直してくれなかったな・・・」

華: 「・・・。試しに脳ミソ洗ってみるか?」

こんな調子では引越しの準備が終わらない。

私は編集長の意見は置いといて、とりあえず自分に必要なものだけを残してあとは捨てることにした。

今ゴミ袋にガンダムのプラモデルを捨てたような気もするけど、どうでもいいや。

華: 「でもこうして引越しとかすると昔なくしたモノとかが出てきて懐かしくなったりしますよね」

編集長: 「じゃあ『子供のころになくした夢』とか『あの頃の自分』も見つか・・・」

華: 「見つかりません。っていうかプラモデルの修理は後回しにしやがれ。ハイそこ、手を休めない!」

・・・。

私が自分の荷物以外をほとんど捨ててしまったせいだろうか、案外スムーズに片付けが終わりそうだった。

華: 「あれ?編集長、この薬用石鹸の箱はなんですか?なんでこんなに大量の石鹸があるんですか?」

編集長: 「ああ、それか。」

編集長が来て、懐かしげにその一つを手に取った。

編集長: 「これはね、そう、以前つきあっていた彼女に『ミュールが欲しい』とねだられたことがあってね・・・。間違えて薬用石鹸ミューズを大量に買ってしまったのだよ。そのあと死ぬほど殴られたよ、ハッハッハ

華: 「・・・。」

すると、そこで電話が鳴った。

華: 「編集長、お電話です」

編集長: 「ああ、多分呉社長だ。代わりに出てくれ。今こっち手が離せない」

あの呉エイジ社長のお電話を私がとってもいいのだろうか。

多少の緊張を伴いながらも受話器を手にとった。

華: 「こちら第3編集局です。あ、ハイ、呉社長ですか。いつもホームページ拝見してますー。ええ。でも更新が月一回くらいなのが残念ですけど・・・。え?旅に出ていたんですか?はあ、なるほど・・・。青い鳥を探して?でも実はウチにいたんですか?ってか、おまえはチルチルか?

これがアミーゴの血筋なのだろうか。

私は軽い頭痛を覚えて受話器を置いたあと、片付け途中の荷物をそのままにして帰宅した。

外では夏なのに冷たい雨が降っていた。






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