僕と彼女の事情
〜届かなかったメッセージ〜






えっと、何から話したらいいんだろう・・・。

なんか、こういうのって、照れるなぁ。いざとなると緊張しちゃうよな。

僕がキミに会ったのって、もうだいぶ前のことになるのか。

僕は夏の陽射しを受けてキラキラと輝くキミに見とれてしまったんだ。

この感情は何だろう、と思ったよ。

もちろん、それまでにも僕は誰かを好きになったことはある。

手をつないだり、キスをしたり、ドキドキしながら気持ちを伝えたこともある。

でも、そのときは何かが違っていたんだ。

心臓をギュっとつかまれたような、息をすることもできない苦しさ。

その時すでに僕はもうキミに支配されていたのかもしれない。

テレビを見ているときのキミは少し右に頭を傾げているんだね。

好きなのはダージリンの紅茶。砂糖とミルクを少々。

おやつが好きで、友達の手前、イチゴポッキーが好きっていうことになってるけど、ほんとに好きなのはイカソーメン。

七味とマヨネーズをたっぷりとつけて食べるときは本当に幸せそうな顔をする。

笑ったときに左側だけにできるエクボ。

ディズニーが好きで、キーホルダーは色褪せたドナルドダッグの小さな人形。

好きなテレビドラマは、流行りの俳優・女優をキャスティングした連続ドラマということになってるけど、たまに時代劇も観る。

真面目な顔で冗談を言うときは必ず右の眉が少しだけ上がる。それは僕だけが知ってることかもしれない。

彼女: 「これ、ホンマの話やねんけどな、次の流行りにはゴム長靴が来るらしいで?」

結局、来なかったよ。

僕: 「自分でも信じてないことを他人に信じさせてどーする?」

僕はそんな他愛のないやりとりが大好きで、

僕: 「知ってる? 韓国の人とかインドには美人が多いやん? あれって辛い食べ物に含まれるカプサイシンていう成分が肌とかカラダの新陳代謝によく効くからなんだって」

真面目な顔でキミは答える。眉は上がっていない。

彼女: 「カプサイシン1リットル買ってきて

僕: 「・・・。」

こんな会話もあったね。

彼女: 「今日の世界史のテスト、絶対に100点やわ。すっごいよく出来たもん」

僕: 「ほー。確か昨日の夜、疲れたとかって夜の9時に寝てなかったか?ポケベルでそんなこと言ってたような・・・」

彼女: 「絶対に100点やって。んじゃ賭けようか? 100点じゃなくて●ーくんが勝ったら、アタシの脚のマッサージと肩たたきさせてあげるわ」

普通、それって罰ゲームのほうだよね。

僕: 「・・・もし結果が100点でおれが負けたら?」

彼女: 「ディオールの口紅」

やっぱり結果がどう転んでも、あんまり関係ないよね・・・。

でも、そういう会話が好きだったな。

そうそう、このあいだ中間試験が終わった打ち上げとかいって、木屋町に飲みに行ったんだよね。

あそこまで酔ったキミは、初めて見たよ。

彼女: 「ねえ、秋のサンマ食べたいー。ねえ、アタシのこと好き?好き?好きだったら今から鴨川で泳いで魚つかまえてきて!

僕は、キミが大好きだよ。

でもそれはねーだろ。



 
教訓「ムリなことはムリ」




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