裁きの瞬間





●年●月●日、午後1時開廷。

本日の公判は、以下のとおりである。

被告: イギリス紳士

起訴事由: ホームページに関する罪

*****

そう、今僕は裁判所にいる。

公判は今日で何回目になるのだろうか。

毎回毎回同じ質問が繰り返されているような気がするが。

案外狭い法廷で、いつもの顔が並んでいる。

メガネの判事。ポマード頭の検事。白髪の弁護人。ポール牧。
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え?ポール牧?

判事: 「それでは第●回公判を始める。被告、前へ。」

僕は怯えた顔で証人台へ着く。

検事: 「キミは1999年の3月3日からホームページを開いているね。で、なんで『イギリス紳士』なんだ?」

僕: 「当時イギリスに留学していたからです」

検事: 「ほほお。では他には名前の候補はなかったのかね?」

僕: 「ありません!」

検事: 「ウソをつくな!」

僕: 「・・・。ありました」

検事: 「それは何だったのかね?」

僕: 「他に候補は・・・、『マンチェU』と『IDPM』でした。」

検事: 「本当にそれだけかね?3つしか候補はなかったのかね?もう一つあるだろう?」

僕: 「・・・『翼の折れたエンジェル』です」

弁護人: イギあり!

判事: 「異議を却下する。ハンドルネームの決定理由は大切だ。検事、続けて」

検事: 「何ゆえホームページを作ろうと思ったのかね?故郷の親に申し訳ないとは思わなかったのか?」

僕: 「ハイ?」

検事: 「判事、証拠番号乙号の証言テープをここで聞きたいと思います」

そう言って、検事はカセットテープをデッキに入れた。

〜〜〜

母親: 「ええ、いつもマジメにしてるとてもいいコで、今でも母親として自分の息子を信じています。潔白を信じています。まさかあのコがつまらないギャグを世界中にバラまいているなんて、とても信じれる話じゃありません・・・ウッ、ウッウ・・・。ああ、すみません思わず涙が。ええ、確かにあのコはそういう傾向が以前からあったのかもしれません。でもきっとついしてしまった出来心だと思うんです!例えばですか?・・・そうですね、家でくつろいでいるときに、お茶でも入れようと思って、あのコに聞いたんです。紅茶とコーヒー、どっちにするの?って。そしたらあのコ、『ん〜、スローなブギにしてくれ』って・・・。ワザとではないんですよきっと!」

〜〜〜


検事: 「ほら、キミのお母さんもこういう証言を泣きながらしているぞ。」

僕: 「わかってくれる人はいるんだ!」

検事: 「他にもあるぞ。これは極秘に我々が入手したファイルだ。この中には、未遂に終わったとはいえきっちり犯罪にむけて準備されたものが入っている。例えば、だ・・・」


以前、何人かの友達と京都から名古屋までの日帰りドライブ計画が持ち上がったときのこと。

友人A: 「うち車出せるよ」

友人B: 「じゃあおれのところもいけるしあと1台必要だな、オマエんところは?」

イギリス紳士: 「よしわかった、うちの車だん吉をだそう。一人しかおんぶできないが




僕: 「あ、そのボツネタだけは!そのネタだけは勘弁してください!」

検事: 「・・・まあいいだろう。ところで被告人、あなた普段は非常にクールに気取っていますが実はかなりの甘えん坊ですね?」

僕: 「な、なぜそれを!」

検事: 「認めますね?しかもあなたは、彼女がいたとき、ひざ枕をしてもらっているときに、『ニャオォォォ♪』って絡むのが好きでしたね?

僕: 「実話だけに認めたくはないですが・・・(泣)」

検事: 「しかもあなたはそのあとハダカになって『交尾しよ、交尾しよ』、といいましたね?バカなのですか?人間として間違ってませんか?

僕: 「ううう・・・」

弁護人: 「ネギあり!

判事: 「黙れ

検事: 「尋問は以上です。」

判事: 「それでは弁護人の尋問を始めてください」

僕は泣きそうになりながら、弁護人の質問を待った。

日本の法律では、被告人には弁護人をつける権利があり、弁護人は法廷で法律に縁のない被告人を救うのがその仕事となっている。

判事による公平な進行と、罪を追求する検事、そして被告の権利を救おうとする弁護人。

この3者のバランスの上に、せめぎあいの上に、正しい判決が下されることが期待されているシステムである。

今、僕は検事の追及によって精神的にボロボロにされていた。

これからは弁護人の質問だ。

弁護人は僕に有利な質問をしてくれるはずだ。

それによって判事の認識を変えてくれるはずだ。

そして弁護人は口を開いた。

弁護人: 「ええっと、イギリス紳士さん、今の気分は『淋しい熱帯魚』ですか?

ええッ!(驚愕)
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(静寂)
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判事: 「判決。被告・弁護人、ともに死刑!」

おれもかよ!?







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