僕がアメリカをキライな理由


僕は高校2年の夏、アメリカに行った。たった6週間の海外体験だったけども、いろんな人に会えたし、いろんなことを知ったし、考えもした。何より楽しかったのは、生まれて初めてのホームステイだった。

それまで、6週間という長さで家を離れたことはなかったから、最初はどきまぎしたものだった。アメリカ人の家庭というのは、もちろん地域にもよるのだろうし感覚的だが、寛大のような気がする。一般的にアメリカ人と聞いて発想するあの陽気さだ。

僕のホストファミリーも陽気な人だった。そこの町は規模はほんとに小さかったけども、おかげで町中の人が太平洋の向こうからきた日本人を歓迎してくれた。

そういうこともあって、僕はアメリカ人は好きである。ただし、これはあくまで「人」単位の話であって、国単位ではちょっと違ったことになる。


僕はアメリカという国は嫌いだ。もちろんいくつか好きな部分もあるが、今回はキライな理由をいくつかあげてみたい。

まず、アメリカは自分勝手過ぎる。アメリカは自由の国、という言葉があるが、それは言いかえれば「アメリカ国内では公平なルールが守られている」ということであって、海外に対してはそれは適用されていないのが現実である。

例えば、アメリカは率先して「関税廃止・完全自由貿易」を謳っているが、それはアメリカが国債貿易で競争力を持つ分野に限ってのことである。例えば農作物。かつてアメリカの「自由貿易」圧力に負けて日本がりんごとオレンジの輸入を自由化したことは記憶に新しい。

しかし、一方でアメリカが競争力を持たない分野では、管理貿易を強制するのである。近年、自動車輸出に関してアメリカが「数値目標」を押しつけてきたのは良い例だろう。このときはなんとか妥協にもっていけたが、実はこれと同じことがかつて半導体分野で行われ、そのときには完全に日本が議論に負け、半導体輸出を制限されたのである。

このように、アメリカは、自国が競争力を持つ分野に関しては「自由貿易論」を振りかざして門戸をこじあけ、一方で競争力のない分野に関しては2国間協議で管理貿易を押しつけるのである。


次に、アメリカは勝手に「世界の警察」を気取っているが、誰もそんなことは頼んじゃいない。アメリカが振りかざす正義は、必ずしも万人の正義であるとは限らないし、それどころか単純に経済的な利益に影響されて動くことだってあるのだ。

アメリカは国内に、政府と密着した「軍産複合体」と呼ばれるシステムを内包している。これは簡単に言えば、軍事産業と国防省が蜜月状態であり、軍事産業界に対して強い影響力を失っているのである。

軍事産業界にしてみたら、戦争はカネのなる木であって、どんどんやってもらいたいはずだ。だからロビー活動によって戦争をあおることだってありえるのだ。国連決議を待たずにコソボ内紛に参入する裏にはそういったこともあるのかもしれない。

冷戦構造の中で肥え太った軍事部門をうまく削減していくことができないので、比較的平和である現在もかなりの額が軍事部門に費やされている。ちなみに、日本も新安保条約の下にかなりの出費を行っているはずだ。


第三に、前述の正義とも関連するが、アメリカ的価値観を世界中に押しつけている感がある。実はアラブ文化にはアラブの、中華文化には中華地域の、アフリカにはアフリカの独自の歴史的背景とそれに基づく価値観が存在しているのだが、アメリカはそういったものを「後進的」であると片付けて、欧米的価値観を「教え導く」ことに腐心している。

そういったこともあって、アメリカはアフリカ地域、中東地域ではかなり嫌われている。中東地域の紛争のたびに国連決議を待たず、国連大使を差し置いてしゃしゃり出てくるところに、「目立ちたがり屋」の心が見え隠れする。


実はこういった独善的な行為はかつてはパックスアメリカーナと呼ばれた「強いアメリカ」時代の名残なのである。冷戦構造がまだ健在だったとき、資本主義側はアメリカを中心にまとまっていた。そして東側諸国との競り合いの折にはアメリカが先頭にたって、資本主義陣営を守っていたのである。そして社会主義陣営を切り崩そうとしていたのもアメリカであった。

しかし冷戦構造の崩壊は資本主義側の勝利を意味しないし、アメリカの地位保全を意味するものでもない。ライバルであったソ連が崩壊したのと同時に、アメリカに期待されていた役割も縮小したのである。しかし、アメリカはいったん手に入れた権力を手放すことをしなかった。それが今の行動に現われているのだと思われる。

現在、アメリカが東アジアの経済復興に熱心で、日本の経済政策にもケチをつけるのは、アメリカが現在好景気であるのと関係している。好景気だから、市場が欲しいのだ。

日本を含む東アジアが不況で、「購買能力」がない。すなわち、「モノを買ってくれる人がいない」のである。これは、モノを作ってるアメリカにはうれしくない話だ。買ってくれる人、買えるだけのおカネを持っている人を創らなくては。

そのためには、たとえヨソの国だろうが、うまいように経済政策に口を出して、景気を回復させなくちゃいけない。だから日本の経済政策にもこれだけ熱心なのだ。しかも、日本の閣僚も弱腰だからいちいち計画案を持っていって「おうかがい」たてに行くし。いったいどこの国民のための閣僚なんだか…



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