友 情 論



 



誰にでも、仲のイイ異性の友達、というのはいるものだ。

男女間の友情、というのはどちらかが必要以上の好意を持たなければ成り立つと思っている。

僕にはその頃、つきあうほど好きではなかったものの、とても仲のいい女のコの友達がいた。

顔もなかなかカワイかった。

僕は顔で好き嫌いをするわけではないのである。

そのコとは小学校のころ同じ塾で、中学・高校に入ってからもたまに使う電車が同じだったのだ。

中高一貫私立の男子校・女子校に通うと異性の友達というのもそうは増えない。

お互いに恋愛相談なんかをするのにはもってこいの状況だったのだ。

とまあ、別に恋愛感情もなかったのであえて恋愛は格闘技だ!のコーナーに載せるべき文章ではないので区別に困ってこのコーナーに配置している。

*****

高校に入ってからのある日のこと。

僕がその電車の前から4両目に乗っていると、途中の駅で彼女が乗ってきた。

セーラー服だ。

僕: 「おはよ」

彼女: 「あ、おはよ」

朝の7時台の電車はあたりまえの話だがラッシュ時間だ。

もみくちゃにされながら適当な距離をとって普段の会話をしていた。

行ってる塾の話とか、共通する友達の話とか。

ハウッ!

彼女のスカートの横のジッパーが全開になっている!

そこらへんを動き回る手がないことと、彼女がいたって普通にしゃべっているところを見ると痴漢の仕業ではないようだ。

きっと朝忙しくて閉めるのを忘れていたのだろう。

水色のパンツが丸見えになっていた。

ただ幸か不幸か今はラッシュ時ゆえ、それが見える位置にいるのは僕だけらしい。

僕: 「あのさ」

彼女: 「ん?」

スカートのジッパーが開いててパンツ見えてるよ、と言おうとして口をつぐんだ。

そうだ、彼女が降りる駅は僕が降りてからまだ先にあるのだ。

この電車で周りの人と一緒に乗りつづけなければならないのだ。

恥をかかせたままで置き去りにするわけにはいかない。

まして、彼女がジッパーを上げるよりも先に僕の声できっと周りの人間の目がそちらに向いてしまうはずだ。

水色のパンツを見られるのは避けなければならなかった。

もしここで僕が彼氏なら密かに彼女のジッパーを閉めてあげることも可能だろう。

僕: 「・・・僕が彼氏とかってどう思う?」

彼女: 「ん〜、なんかもうイイお友達ってカンジだし〜(笑)」

失敗!

そしてこれではフラれたマヌケな男だ。

これでは合法的に彼女のジッパーに手を触れることはできない。

ラッシュ時にはカラダが他人と密着し、何かにはさまれて服の一部が引っ張られることもある。

会話を続けながら黙ってジッパーを上げることは不可能だろうか?

僕: 「冗談だよ、いや、どんなのがタイプなのかな〜と思って」

手をスカートに伸ばしながら、

僕: 「ほら、前の彼氏はおしゃべりがつまらなくて別れたんでしょ?」

彼女: 「そうね、確かに・・・キャ!

電車が揺れた途端、お尻に手が触れてしまった。

これで手をつかまれたら僕が痴漢だ。

平然と、

僕: 「ん?どうしたの?」

彼女: 「あれ?ううん、なんでもない」

もう知らないフリをしてあきらめたほうがいいのかと思った。

しかしやはりここには簡単に手を入れることができる以上、黙っておくのは友達として失格だ。

そうだ、誰か他人のジッパーが開いているのを示唆してあげれば自分のスカートにも注意が向くかもしれない。

誰かズボンでもスカートでもジッパーが開いている人は・・・?

当然だが、誰もいなかった。

よし。

こうなったら仕方ない。

僕のジッパーを開けて、彼女の注意をそこに向けさせ、そして自分のスカートのジッパーが開いていることに気付いてもらおう。

ラッシュの電車の中だし、トランクスなら別に構わないだろう。

しょせんは男子高校生の失敗だ。

そして、彼女に注意されて笑われても後日スカートのジッパーが開いていたことを伝えれば納得してくれるだろうし、むしろ感謝されるくらいの話だ。

僕は電車の中でジッパーを下ろそうと手を伸ばした。

もしこの瞬間を誰かに見られれば、露出系の痴漢に思われても仕方のない行為ではある。

しかし、友情を優先するならば。
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ん?



そして僕は気付いた。

学ランの下で僕のズボンのジッパーは全開だった。

僕は予定外の出来事に驚き、思わず自分のソコを見た。

やはり開いていた。

そして彼女も僕のズボンのジッパーが開いているのを見た。

僕がそれを閉め、

僕: 「まあこういうこともあるさ」

と言って密かに彼女のスカートのジッパーを見ると、閉まっていた。

今から思うに、もしかして教えられていたのは僕のほうだったのだろうか。









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