初めてのデート




 


デート。

なんという甘美な響きを持つ言葉だろうか。

お互いに好意を持つ男女が同じ時間と空間に存在し、互いの恋愛感情を確認し、あるいは好意を深め合っていくという過程。

たまに好意を減少させるということもあるが。

そして男と女がデートを重ねるうちにそれが本物だと確信し、一生そばにいたいと思うことによって結婚は成立する。

デート。

なんという神秘的かつ荘厳な響きを持つ言葉なのだろうか。

このひとつのシステムによって人類は種の存続を図ってきたといっても過言ではないのだ。

さて、今回はこの偉大なデートについて僕の数少ない経験の中からいくつかのアドバイスをしてみたいと思う。

これからの秋のシーズン、学園祭、文化祭は目白押し。

男性諸氏は心して理解してほしい。

*****

1.下見

相手が誰であれ、初めての相手とのデートというのは緊張するものである。

ある程度下準備をしておくとその緊張も薄れるというものだ。

そこで、おおまかな行動予定を立てておく、というのをオススメする。

ここでのポイントは自分の予算にあったスケジュールを立てる、ということだ。

いくつか例をとって解説してみたい。

例:(貧乏なA君の場合)

『自転車で彼女のウチまで迎えにいって、二人乗りで映画館まで行く。そのあと公園のベンチでジュースでも飲みながら楽しく会話。公園を散歩したりして時間をつぶしたあと、再び自転車で自分のアパートへ。ウチで得意の貧乏料理をふるまった後、めでたくベッドイン』

間違いなく2度目はない。

女のコというのは多少なりともデートに対して「夢」や「あこがれ」を抱いているものなのだ。

もしお金がなくてクルマがないというならここは逆にリヤカーの荷台に彼女を乗せて映画館まで乗せていく、というくらいのシャレッ気が欲しい。

そのときは首にタオルを巻くのを忘れないこと。

2.待ち合わせ

待ち合わせというのは結構ドキドキするものだ。

特に、普段会社や学校で互いに制服姿しか見たことがない場合には「どんな格好で来るんだろう?」とウキウキソワソワしてしまうものなのだ。

このときも女のコはある程度の期待をして待っているということを忘れてはならない。

つまりその期待に応じることであなたの好感度もアップするということだ。

また、普段とは違う雰囲気を漂わすことで、普段彼女に持たれているイメージをイイ意味で破壊することができるという点にも注目しなくてはならない。

例:(普段会社で冴えないグレースーツしか着たことがないB君の場合)

『いつも地味で目立たないスーツだし、実際やってる仕事も地味で目立たない。いっそ私服のデートでは赤いネクタイに黄色いジーンズ、青いジャケットを着てイメージを一新し、好感度をアップしたい。僕のアバンギャルトな服装に魅かれた彼女はそのまま僕の部屋にきてめでたくベッドイン』

おまえは信号機か?

女のコというのは一緒に歩いていて恥ずかしくないオトコを選ぶものだ。

もし地味なイメージを一新したいというなら逆にサルスーツを着て登場するほうがマシというもの。

やはりそのときにも首にタオルを巻くのを忘れないでほしい。

ただし、初めの数分は笑いが取れたとしてもその後それをひっぱり続けるのは至難というところか。

3.相手をほめる

どんな女のコでもデートにはおめかしをしていくものだ。

服装や髪型、メイク、なんでもよいのでいつもと違った点に気づいてほめてあげることは、「あ、この人いつもあたしのこと見ててくれてるんだ」という認識を与えることにつながり、ますます好感度はアップする。

このときのほめる言葉には要注意だ。

いくつかの例を考えてみよう。

悪い例:『今日の赤いジャケット、かっこいいね。もうそれだけキレイに赤い色を着こなされたら、カゴメのトマトジュースも真っ青さ

青いトマトジュース、見せてくれ。

一応カタチ的にはほめ言葉になっているが、真実味がなく、寒いだけである。

悪い例:『今日の黒い服、キレイだね。もうそれだけキレイに黒い色を着こなされたらカラスも恥ずかしくて明日から白いハトになっちゃうよ。もう、キミって悪い人だ』

悪いのはおまえの頭だよ。

ハトに変わったカラスを見せてくれ。

これも一応カタチ的にはほめ言葉にはなっているが、無茶苦茶である。

ホメ言葉はあくまでもさりげなく、それでいて印象的な言葉を選ぶこと。

4.会話

デート中の会話はとても重要である。

この会話の中身一つで今後の2人の関係がどうなるかが変わってしまうといっても過言ではない。

女のコが自分に対して少なからず持っているあこがれや夢を破壊しないようにその内容を吟味しなくてはいけないのだ。

もっとも無難なのはクールでかつ優しく、知的で紳士的な男を演じることである。

良い例:『ああ、そういえばこのあいだ僕が扱ってるプロジェクトで上司がちょっとしたミスしちゃってさ。それがニューヨーク支社との取引だったもんだからフォローに数日徹夜だよ。まあ、もう慣れっこだけどね。』

狭く深いトピックについてカルト的な知識を披露するのは致命的でさえある。

悪い例:『ザビ家から狙われたシャア・アズナブルが妹のアルティシアと一緒に地球に降りてきたときの名前がエドワゥ・マスだって知ってる?』

悪い例:『あ、1979年生まれなの?ふ〜ん、宇宙世紀でいえばジーンのザクがサイド7に突入した年だね』

悪い例:『え?フィレオフィッシュとポテト注文するの?偶然だな〜。僕の注文と一緒だよ。もしかしてキミ、ニュータイプ? やっぱり人って分かり合えるんだよね

もう何言ってるんだかわかりません。

5.部屋にて

運良く自分をごまかし通せたあなたはめでたく彼女を自分の部屋に連れこむことに成功したとしよう。

しかし、ここでも彼女は一抹の不安を抱えていて、簡単にHできると考えるのは間違いである。

性欲ばかりが先行する男と違って、女のコはほとんどの場合、夢やあこがれ、そしてそれらの延長線上にある恋愛感情ややさしさを要求しているものなのである。

例えその日一日のデートで多少の好意や優しさを漂わすことができたとしてもあなたの期待通りにベッドで裸になってくれるとは限らないのだ。

最後のひと押しが必要になる。

ここで、彼女はひとつ訊いてくるはずだ。

『あたしのこと、好き? どれくらい好き?』

もうこの際、ウソでも構わないだろう。

良い例:『好きだよ。いっぱい好き。表現できないくらいさ』

耳かき一杯分くらいしか好きじゃなくてもこれくらいのことは言っておくこと。

次に悪い例をいくつか見てみよう。

悪い例:『好きかな? 多分。どれくらい…? わからないなあ』

ハッタリでもいいから自信持って言え。なんで疑問形やねん?!

悪い例:『好きだよ。いっぱい好き。「前田吟」に換算して50人分くらい

すごさはなんとなくイメージできるけど、意味が不明。

悪い例:『好きだよ。いっぱい好き。「100,000みの」くらい好き

「1みの」ってなんの単位なんですか?

6.Hが済んだ後

男はHが済んだあとは急激に性欲が消失し、それと同時に恋愛感情だと思っていたものが性欲に過ぎなかったことを思い知るのだが、女のコは逆にHをしたことによって恋愛感情を深めてしまうものである。

ここは、例えシャワー後のすっぴんが「麻呂」だったとしても、気がついたら「武蔵丸」だったとしても、やっぱりどう見ても「ジャミラ」だったとしても優しさを持って接してあげよう。

良い例:『今日はキミと一緒の時間が過ごせて人生で最高に幸せだったよ。今度結婚しようか』

多少オーバーでも許されるはずだ。

反対に悪いのは、わけのわからないことを言うことである。

悪い例:『ねえ、琵琶湖で大根を洗うときの感覚ってわかる?』

なんのことだ?

悪い例:『ねえ、納豆のにおいってかいだことある?』

だからなんのことだ?

悪い例:『ねえ、最近の下着ってよくできてるよね、もうテクノロジーの発展にはびっくりだよ』

一体なにを言いたいのだ?

悪い例:『キミのこと、これから南極3号って呼んでいい? いや、僕の中での話なんだけど…』

一体どういうつもりだ?

*****

以上のことをよく守って、これから精進に励んでほしい。

by愛を讃える詩人の会・会長






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