ベトナム・ホーチミンのフォー
〜僕はCセットを頼んだ〜




 
モーガン・フリーマン。



映画“Seven”や“ショーシャンクの空に”でも有名な世界各国で賞賛を浴びる実力派国際俳優であり、最も名誉ある俳優の一人だ。

“ディープ・インパクト”では、隕石の衝突とそれに続く地球の壊滅から人類という種を守るべく戦う合衆国大統領の姿は映画史に残る名演だろう。

その存在感、知性、落ち着き、渋み、苦味は彼にしか出せないもので、今のハリウッド映画には欠かせない役者となっている。

2004年『ミリオンダラー・ベイビー』ではアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞しているほどだ。

海鮮フォー・Cセットを運んできたウェイトレスの娘は、そんなモーガン・フリーマンにそっくりだった。

私は運ばれてきたそれを見て驚愕を隠せなかった。

フォーとは、ベトナムの代表的な麺料理で、米粉の麺、透き通ったナンプラ(魚醤)ベースのスープに牛肉などの具が載っているものだ。

香川県における讃岐うどんくらいメジャーな食べ物で、もちろんホーチミンの街の定食屋には必ずある。

私はほどよく客の入った定食屋を見つけてそこで“Lunch Menu”と書かれたセットメニューの中からお手頃なCセットを選んだわけだが、

なぜ、サイドメニューがスープなのだ?

もう一度説明しよう。

フォーとは米粉のうどんのようなもので、スープに麺が入った状態で提供される。

セットのお供となるサイドメニューが、ゴハンもしくはギョウザであれば納得もしよう。

だが、モーガン・フリーマン似の彼女が持ってきたのは、紛れもなくフォーとスープだ。それ以上でもそれ以下でもない。

フォーのスープをひと口、そして麺をひと口食べてみた。

うん、おいしい。

野菜の旨みと海鮮のダシが効いている。

そして、とりあえずそのサイドの方のスープもひと口すすってみる。

うん、間違いない。

フォーで麺がひたっているスープとまったく同じだ。

小分けにするところに何か意味があるのか?

店主を呼んでその生い立ちから問い質してみたい。小一時間ほど問い質してみたい。いや、明け方まででもいい。

そんなフォーセット、37,000ベトナムドン(≒185円)。

ココナッツジュース、15,000ベトナムドン(≒75円)。

精神的ダメージ、プライスレス。







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