一月もそろそろ終わりになるという頃。
僕はケムちゃんと別れることになった。というよりむしろ、
逃げることができた。
最後のデートの帰り際は修羅場だった(笑)。結局数えるほどしか会わなかったし、二人で会ったのなんか、
片手でも余るくらいだったはずだ。
だって僕にその気がなかった
から。そもそも大和市と練馬じゃ、ほとんど遠距離恋愛じゃないか。
片道2時間もかかるから、遊ぶときは新宿だし、
それだってうちから一時間半もかかるんだ。
そして半月ほど過ぎてバレンタインがやってきた。
彼女がいない男にとってはイマイチ面白くない一日だ。
こういう日は同類の友達とカラオケにでもいくのがよろしい。
ついでに服なんかも買ってしまうと、釈然としない気分も
晴れてくるというものだ。
そういうわけで、家に帰ったのは夜の8時くらいだったと思う。
「あれ? これはなんだ?」
部屋の前に、でっかい紙袋が置いてあった。10キロの米を
想像してもらえばちょうどいいサイズだ。
聞くと、
夕方女のコが訪ねてきて置いていったそうな。中学から私立男子校だったから、この地域で考えれば小学校の時の
同級生ということになる。誰やねん?。
とりあえず袋を部屋に持って入った。ずっしりと重い。
でかい割りになかなか凝ったラッピングだった。
ん?
“ブライト艦長、レーダーに反応ありです!”
僕はラッピングに紛れた手紙を発見した。
それは、ケムちゃんからだった。
おまえ、どうやってここまで辿りついてんっ?!
言っておくが、彼女を家まで連れてきたことはない。
田園都市線に乗せたこともない。
心当たりがあるとすれば、年賀状に書いた住所だけだった。
おまえはその額にカーナビでも内蔵してるのか?!(笑)
というよりストーカーに近い。
“
ブライト艦長! 本艦甲板、敵モビルスーツに乗り込まれました!”“
索敵班、どこを見てる! 弾幕薄いぞ、何してる!”手紙には、たしかこんなことが書いてあった。
「いまさら手作りじゃ、受けとりにくいと思ったから、チロルチョコをたくさん買ってみました。
友達とみんなで食べてください。200コあります」
他にもなんか書いてあったけど、忘れたということはたいしたことではなかったのだろう。
ずっしりと重い中身は、
チロルチョコ200個だった(笑)。なんかよくわからんが、やられた気分だった。
袋のなかを覗いてみると、たしかにチョコがたくさん。
ん? なんだ? なんか入ってるぞ。
ひとつ取り出してみると、それは
ジグソーパズルの破片だった。
〜つづく。