僕は、このイギリスの大学に正規入学する前に、少しだけ英語学校に通った。
この大学付属の英語コースで、ここにくる留学生は取ることを薦められている。
それはおよそ二ヶ月ほどのことだったが、かなり刺激的な毎日だった。
このコースを取っている生徒はおよそ50人。
それをテストによって5クラスに分けていた。
したがって1クラス10人程度だ。僕のクラスには、3人の日本人がいて、他はそれぞれの国から一人づつ来ていた。
今回の主人公は、ベネズエラから来ていたシルビア(♀・24歳)と、台湾から来ていたスティーブ(♂・23歳)だ。
中国系の学生は皆、その発音の難しさから、自ら英語名を作って名乗っている。
だからスティーブといっても、実は台湾人そのものだ。
彼は、どっちかというと、森田健作とか石坂浩二に似ている。
まあ、悪くはない顔だ。
背が低めなのがちょっと問題だが。
でも、結構おもしろい男で、僕と芸能界の話とかもしていた。
どうやら台湾の芸能界と日本の芸能界はとくにタレントのところで共通するところがあるらしい。
事実、酒井法子や千葉美加が台湾に行って派手に出稼ぎしているのは有名な話だし、ビビアン・スーにしてもブラックビスケッツにしても、台湾絡みだ。
さて、で、問題のシルビアだ。名前はすがすがしくて、颯爽としてるよね。
なんか、そよ風を聴くようなそんな感じだ。でもね。
見た目はぜんぜん違う。背が2メートルくらいあって、顔がめちゃめちゃ大きいんだ。まるでダダ星人みたい。
毎回会うときは、心の中でアイスラッガーを投げていたよ。
あるいはワイドショットを炸裂させていたよ。
「おまえもやはり3つの顔を持つのか?容積は確かに3つ分あるが?」
しかも、ダダ並みに顔がでかいだけじゃない。
クチビルも分厚くて「いかりや長介」にそっくりだったのだ。
おそらく、いかりや長介を太らせて太らせて太らせたら、ああなるに違いない。
僕は、何度、
「日本の芸能界、お笑いの世界に親戚はいませんか?」
と尋ねそうになったことか。
そして、
「おたふく風邪まだ治らへんの?顔だけじゃなくて体中むくれてるやん?」「そのおたふく風邪治ったら『いかりや長介』そっくりなのに」
と何度言いたかったことか。
そんなシルビアに僕がもっとも言いたかったことがある。
脂肪のついたぶよぶよの脚をしておきながら、ミニスカートはくなよ。しかも、中を見せるなよ!これ以上目に毒をあてたら、エメリウム光線発射するぞ。
ある日、スティーブに僕が好きなタレントの画像を見せたことがある。
僕は榎本加奈子が好きなのだ。
あるいは、吉川ひなののように、壊れ気味の女のコに魅かれる傾向がある。
「かわいいけど、胸がないよね」
やつは冷たく言い放った。
胸があったらいいのか?そんなはずはない。顔、トータルプロポーション、キャラクターすべてを考慮してどんな女の子がいいのか決めるべきだ。
いや、確かにそうだけど、胸の大きさは重要だって。
じゃあおまえはどんなんがええねん?
そうだな〜、たとえばうちのクラスの、シルビ…
あれはただのデブだ。
おまえはそれでいいのか?あんなんでいいのか?
趣味が人それぞれ、アイドルの構成要件も文化それぞれということだ。
その後、彼ら二人が仲良く歩いているところを発見したが、まるでそれは、動物園の女王様と小間使いといったコンビだった。
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