渋谷という街


週末の渋谷はおそろしい人混みだ。

実をいうと渋谷という街はそれほど広くはない。そして行く場所も限られている。

いや、狭いからこそ人混みが加速されてしまうのかもしれない。

そんな渋谷はある意味『魔都』と呼んでもいいのではないだろうか。

今回の話は渋谷という、奇妙な魔力を持った都市に振り回される少年の話である。

ちなみに
BGMとして広末涼子のMajiで恋する5秒前」を掛けてくれるとうれしい。

彼は、某女子校でかわいいと評判の女の子をデートに誘いだすことに成功した。

しかも普通のデートではない。

彼女の誕生日のデートとしてだった。

しかも当然、グループデートではなくて、
11だ。

少年の心は踊っていた。


今日から彼氏と彼女の関係だ。
(←早合点)

この女のコが将来のおれの嫁さんかもしれん!
(←誇大妄想)

将来の家庭の話でもしようかな
(←大バカ!)

そして待ち合わせの場所に一時間も早く着いてしまうのであった。

別にすっぽかされることもなく、彼女は到着した。

そしてその後、ぎこちない会話をしながらもデートは進行していく。

少年の頭の中では完璧なシミュレーションが完成されていた。

一週間前から『Hot Dog Press』を片手に下調べをこなしていたのだから当然だった。

午後の三時くらいになって、彼は言った。

「この時間は混んでるんだけどね、有名でしょ…」

そしてスペイン坂にある
『アンナミラーズ』というケーキ屋に入った。

案の定、混んでいたが、列に並ぶのも苦ではなかった。

なぜなら予定していた映画は超が
4つつくくらいに混雑していて観ることができず、その瞬間、マニュアルは無に帰してしまったからだった。

しばらくして呼ばれ、席につく。これだけ混んでいるともはや好きな席を選ぶなんてことはできない。

少年が頼んだのは、ブラックコーヒーとエクレアだった。

そして女の子は紅茶とチーズケーキ。少年は実は普段、砂糖とミルクをガポガポと入れたコーヒーが好きだったのだが、
甘党→マザコンと思われる?→振られるという実にシンプルな公式が頭を離れず、それにビビっていたのだった。

苦いコーヒーを我慢しながらそれをおくびにもださず、飲む。

少年はマシンガンのようにしゃべりだした。

はっきりいって女の子にしゃべるスキを与えない。


沈黙に耐えられるほど丈夫な神経を持っていなかった
だけなのだ。

そう、小心者ほど口数が多くなる、というアレである。

話はいつのまにか、『過去の女のコ』の話に移っていった。

といっても、「遊び人」であることを自慢するのではなく、自爆ネタ、そして密かに過去の女のコと比較して
「君の方が素敵だよ」というのが狙いだった。

このとき、話に夢中になって、周りの客に対して注意力が散漫になっていた。


で、そのときの女のコが、またヘンな顔しててさ、まるで
『ペガッサ星人』
(注)みたいなんだ。知ってる?ペガッサ星人。目がこ〜んな離れててさ…思わず心の中でアイスラッガー飛ばしちゃったよ(笑)

少年はそのとき、ふと視線を感じた。隣のテーブルからだった。

ちら、と見ると目が合った。


“艦長、右舷前方に敵機影発見。通常のモビルスーツのスピードじゃありません! は、速い!!”


“索敵班、なにをしていたッ?! 弾幕うすいぞ! 三倍のスピード…やはり
ヤツか?!”

なんでそのペガッサ星人がここにおんねん!(瞬時硬化)

渋谷の街は、そう、とても狭いのだ。行くところが限られている。

多分彼女も友達と遊びに来たのだろう。そして運悪く少年らの隣に座らされてしまった…

目が合った瞬間から、話を進めることができず、しかし目の前の女の子は
どんなオチがあるんだろう?と楽しみに続きを待っていた。

少年は、ブラックコーヒーの苦みを味わいながら、再び心の中で
アイスラッガーを投げまくっていた。

教訓「偶然の出会いはいいものばかりではない」

[出身地]ペガッサ星

[身長]2メートル

[体重]120キログラム

[備考]故郷の星が爆発したので、宇宙空間に巨大な都市を建造し宇宙をさまよっている。

普段はダークゾーンという異空間に潜んでいる。その宇宙都市と地球がぶつかりそうになったため、地球を爆破しようとした。

 

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