これを書いている現在、僕はニューヨークの某銀行でトレーニングを受けている。 このトレーニングプログラムには僕以外にも何人か外部からの参加者がいる。 シャハーン・テンジョウキアンもその一人だ。 彼はアルメニア出身だが父親はアルメニアで国際的なプライベートバンクを経営し、彼自身現在はイギリスの大手運用会社で働いている。 高校はアメリカンスクールで、大学はアメリカのタフツ大学なので、英語もネイティブ並みだ。 タフツ大学はハーバード、MITと並ぶボストンの有名エリート大学で、入るのは並大抵ではない。 トレーニングプログラムの初日に行われた初顔合わせランチの折。 彼は自分がタフツ大学出身で現在はイギリスでファンドマネージャーをしていると告げたあと、 シャハーン: 「I have larned Japanese a little. (少しなら日本語習ったよ)」 僕: 「Really? (ほんとに?)」 シャハーン: 「Because we have some Japanese Stocks. (日本の株もいくつか持ってるからね)」 僕: 「Say some (なんか言ってみてよ)」 シャハーン: 「O---KO!!」 え? 最初は聞き間違えだと思ったのだ。 僕: 「What? (何?)」 シャハーン: 「OPAAI, OPAAI, OMA--O!, OMAN--! (オパーイ、オパーイ、オマ●コ、オマン●)」 おまえバカだろ 初対面の人間に向かって、彼は放送禁止用語を力いっぱい口にしていた。 日本株関係ないし。 僕: 「・・・」 シャハーン: 「I like BIG OPAAI (大きなオパーイが好き)」 僕: 「Good for you ... (まあ、がんばれ…)」 僕と彼の出会いは、まあ、そんなカンジだった。 少なくとも日本に帰って上司に報告すべき事柄でないことは確かだ。 ***** 数日たったある日のこと。 何人かで昼食を外で食べることになり、ウォール街近くの日本食のレストランへ向かった。 当然ここには何人もの日本人が働いている。 お客さんとしても日本人がいるはずだった。 シャハーン: 「I wanna come to Japan, there are Special SUSHI restaurants arent? (日本に行きたいんだよ、特別な寿司屋があるんだろ?)」 僕: 「Special? (特別?)」 シャハーン: 「Guests don't use dish but a lying naked lady, at secret room...(秘密の部屋ではお皿をつかわないで代わりに裸の女の人が横たわって…)」 僕: 「・・・」 女体盛り?! いったいどこでそんな情報を??? それを食べたいの? いくつもの疑問がわいたが、それはどうでもいいことでもあった。 ひとつ確かなのは、彼の知識は間違った方向へ深い、ということだ。 そして彼は手で▼の形を作り、 シャハーン: 「I wanna drink Japanese SAKE which she is keeping THERE (アソコに貯めてある酒を飲みたいんだよ)」 おまえ本当はバカだろ 僕: 「I 've never been to, sorry (ごめん、行ったことないんだ)」 周りの日本人がこちらをちらちら見ている。 そしてクスクス笑っている。 会話を普通のものにしなくてはいけない。 僕: 「Any other favorite food? (他に好きな食べ物はないの?)」 彼は待ってましたとばかり、 シャハーン: 「Oh! NO-PAN Shabu-Shabu!(ノーパンしゃぶしゃぶ!)」 彼は名門エリート・タフツ大学出身である。 そして彼は日本を含むアジア株のファンドマネージャーでもある。 彼曰く、日本をこよなく愛し日本についての造詣も深いとのことだが、 偏っていて、間違っている と言わざるを得ない。 もし彼が日本に来ても、日本社会では生きてはいけまい。 ランチが終わるころ、僕は彼に言った。 僕: 「Listen,(聞いてくれ)」 シャハーン: 「?」 僕: 「You have wrong accent. Not OPAAI, but OPPAI(アクセントなんだが、オパーイじゃなくてオッパイ、だ)」 僕には彼のアクセントを矯正することしかできなかった。 |