合コンの悪夢

大学生にもなれば、合コンの話は当然のようにいくつかあがるものである。

一応、京都市内ではそれなりに名が通っていたので、一回生の頃は、結構マメに開催されたのだった。

今回の話は、そのときのお話。

ちなみに、ここに登場する男どもは、すべて同じサークルの仲間である。

女の子は、某女子大学一回生。

かなり気合の入った合コンだった。

だって、男10人、女の子10人の合計20人の合コンだったからだ。

普通、合コンは3on3、もしくは4on4あたりが望ましい数字であるのだが、

そのときは、10on10だった。

野球でもするのか?

という大人数である。

仕組んだのは僕ではない。

竹内(仮名)というヤツだ。

とりあえず10人呼べば、アタリもいるだろう。

というのが、この人数になった原因である。

しかし、今回の主人公は女の子ではなく、あくまでもコイツだ。

話の中心をコイツにおいて話したい。

関西での合コンでは、ノリのいいヤツが人気者である。

渋くクールなのがいいとされる関東の合コンとはちょっと違う。

どれだけ笑いをとれるか、そしてどれだけ汚れるか。

そこがポイントとなる。

竹内君は、はしゃぎすぎて飲みすぎてしまったらしい。

ここでの彼の会話が非常にヘンテコだったので、今でもしっかりと覚えている。

さっさと忘れたい記憶である。

竹内「(隣の女の子に向かって)あ、ごめん、消防車呼んでくれるッ!?」

女の子「…え? どうしたん?」

竹内「キミが僕のハートに火をつけて、燃え上がっちゃってるんだ!」

勝手に焼け死んでくれ

ヤツは続けた。

竹内「ねぇ、キミ、泳げる?」

女の子「え?水泳?…うん、50メートルくらいなら、、、」

竹内「キミにおぼれた僕を助けて欲しい」

是非そのままおぼれ死んでくれ

スパートかけっぱなしである。

“エヴァ初号機、暴走してます”

もはや、電源プラグなしでも動きまくりだ。

竹内、突然胸を抑えてうずくまる。

飲みすぎか?

女の子「どうしたんですか? 大丈夫?」

竹内「救急車…いや、医者を、、、今、突然病気になった」

女の子「え?」

賢明な読者のみなさんにはオチがおわかりだろう。予想通りである。

竹内「恋わずらい」

是非そのまま死んでくれ。

しかし、彼の暴走もそう長くは続かなかった。

調子に乗って飲みすぎたのである。

宴もたけなわになるころ、彼はできあがりを通り越して、

すでに泥酔状態だった。

そろそろ次の店に移ろうか、という頃、彼はもう死人同然だった。

ここでひとつ事件が起こる。

あとから聞いた話によると、彼は心の中ではしっかりしているつもりだったらしい。

そして、「“大”がしたいのでトイレに行かせてください」と言っていたつもりだったとのこと。

確かにあれだけムリして飲み食いすれば多少腹が下るのもうなずける。

しかし、現実に彼の口から出た言葉は、

「うんこぉ〜、うんこぉ〜、うんこぉ〜」

という、まるで呪文のような情けない言葉だけだった。

キザでクールを気取ってみてもすべて水の泡であった。

仕方がないので、とりあえず、店のトイレに突っ込んだ。

これで一安心とおもったが、しばらく待ってみても一向に出てくる気配がない。

中で死んでいるかもしれない。

事実、残った人間はそう思ったのである。

ドアには鍵がかかっていなかった。

開けて確かめてみるしかない。

果たして。

中ではヤツが下半身を丸出しにしてくたばっていた。

生まれた「子供」もそのままである。

とりあえず、流したあと、下を穿かせて店を出なくてはいけない。

しかし。

友人その1「やっぱり、拭かなあかんのとちゃう?」

友人その2「ええやん、もう。そのままズボンあげてしまお」

友人その3「でも、見たところ、かなり“ついてる”から、そのままではクサイのとちゃう?」

議論の結果、じゃんけんで負けたヤツが「拭く」ことになった。

じゃんけんの結果、運悪く負けたのはK君だった。

ちなみにK君は竹内君よりも年下である。

K君は、ぐるぐるぐるぐる幾重にもトイレットペーパーをむしり取り、そして拭いた。

それ以来、竹内君はK君に頭が上がらない。

結局、そんなクソまみれになった死人を抱えて、次の店に移動するわけにもいかず、

後日ヤツを除いたメンバーでの合コンを約束して、その日は解散してしまったのである。

これは、調子に乗って飲みすぎたヤツに与えられた天罰のようなものだ。

彼は、その女の子たちに二度と会うことはなかった。

いくら汚れ役が人気者になれるとはいえ、彼の場合は汚れすぎだったのだ。

教訓「せめて自分で“拭ける”くらいの意識は持っておくべきである。」


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