乳の裏側



呉エイジ師匠もYB氏も巨乳には目がない。一般的にいってオトコというのはでかい乳に魅力を感じるらしい。特に最近はある種流行のような感すらある。流行だからといって大きくしたりサイズを変えることはできないのだろうけど。

しかし、僕は、というとあまり大きさ自体には魅力を左右されないのだ。つまり、大きければいい、という趣味ではないのである。大きさよりも形ということだろうか。

僕の好きな榎本加奈子も実は胸は小さい。グラビアに出ているときはムリがあるくらい寄せてあげて“加えて”いることがわかるだろう。それでもいいのだ。将来長く垂れることさえなければ…。

やはりこういうのは幼少のころのトラウマというのが強く響くのだろうか。僕の場合は多分あのことが意識下で作用しているように思えてならない。すべての習い事には順序というものがあると思う。

例え世の中が厳しく人生も甘いものではないとしても、夢があるということを先に知っておかなくてはいけないと思う。夢を知る前に絶望を知ったのでは、ダメじゃないか。



あれはおそらく小学校に上がる前、保育園に行っていたときの話だろう。だから5歳とかそこらだ。僕の両親は共稼ぎだったので、たまに母親の帰りが遅くなることがあった。父親に至っては帰りが午前になることも珍しくないくらい帰宅はいつも遅く、いつも僕らが寝た後に帰ってきていた。

母親が夕方の7時とかくらいに帰ってくるなら、せいぜい夕飯が遅くなるだけだからほとんど問題はないのだが、これが9時や10時になると、さすがに空腹のまま待つことはできない。かといって当時は電子レンジもなかったし、5歳で火を使うことはできなかった。

そこで、うちの母親の帰りが遅くなるときは決まって隣に住んでいた金井のオバちゃんに姉とともに預けられたのだった。そこで夕飯をごちそうになって、母親の帰りを待つのである。金井のオバちゃんは一人で暮らしていて、どうやら子供もいなかったようなので、喜んで面倒を見てくれたのだった。


ある日、僕らがやはり預けられた時のこと。その日は暑い夏の夜だった。風呂から上がったオバちゃんはシュミーズというかスリップというか、ようするにアッパッパーのようなものを羽織って、食事の準備をしていた。

オバちゃんはかなり恰幅がいい、というか、かなり太っていたので、たぷんたぷんと揺れる二の腕が肩からむきだしになっていた。いや、それだけではない。ワキが大きく開いたアッパッパーなので、ノーブラの内側まで覗けてしまうのである。

加えて、布地がとても薄いのでもしワキが開いてなかったとしても、中の様子は確実に見て取れたのだった。たしかに5歳くらいの男のコの前で、40歳のおばはんが体裁を気にすることもないだろう。

しかし、見えてしまった僕としては、とても悪いものを見てしまった気がしてしょうがなかったのである。

ヘソ近くまで長く伸びた乳。

かといってボリューム感はない。薄い肉が下に垂れている、という表現がぴったりだろうか。大きいのではない。あくまでも長く、広いのだ。子供心でさえ、

「オバちゃん、その裏に何が隠れてるの?」

とツッコミたくなったものである。しかし、何もなかったようだ。食事中、オバちゃんは、テーブルの上の布巾をとっておもむろに「暑いわぁ、かゆいわぁ、」といって乳を持ち上げながら「乳の裏側」を拭くのである。そして、その同じ布巾で僕の口元を拭いたことは今でも覚えている。

もう一つ、5歳の僕を大人にしてくれたのは、その乳首の色だった。濃い紫というか変色した茶色というか、そんな色。子供心にも、それは

「オバちゃん、乳首の先がカビてるよ?」

と思ったものである。母親以外で生で見た初めての乳首がそんなんでは、夢よりも先に絶望を知ったとしても不思議ではないだろう。

食事のあとは、3人で交代でテレビゲームをするのが通例だった。テレビゲームといってもファミコンなどではなくて、簡単なテニスゲームだ。ハードウェアにゲームが内臓されている古いパターンの二人対戦型ゲーム機だった。

オバちゃんは、そのテのゲームになると興奮するらしく、身を乗り出してコントローラーに神経を集中させていた。5歳の子供のほうがゲームに対する順応性が高いのか、持ち主であるオバちゃんといい勝負をしていた。

しかし、オバちゃんとゲームしているとき、必ず、ピタン、ピタン、という不思議な音がするのだった。初めはそれが何かわからなかったのだが、実はそれはオバちゃんの長い乳が腹にぶつかって鳴る音だった。

興奮して身を乗り出すたびに、乳が揺れて出っ腹にあたるのだ。ピタンピタン。テニスでジュースになるたびにピタンピタン。興奮するたびにピタンピタン。テニスゲームのピコーンピコーンという音に混じってピタンピタン

そして乳を持ち上げてタオルで裏側を拭くのである。

ヘソまで長く垂れた乳ってヤだな、と思ったのはこのときからだ。それ以来、僕はどちらかというと巨乳派というより美乳派である。大きい胸の人を見るたびに、タオルで「裏側」を拭いてしまいたい衝動に駆られるのだ。

僕は精神科に相談しに行ったほうがいいだろうか?



 
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