わらしべ長者

 

あるところに、「正直そうな」風体で有名なおっさんがおりました。彼は別に、正直モノでは全然なかったのですが、その太った体格と、ほのぼのとした雰囲気で周囲の人から「正直者チックだね」「人柄が良さそうに“見える”ね」などと評されていました。

しかし、実際かれはその風体をさんざん利用してあくどいことをたくさんしてきました。若いときには妙に安心感を与えるその雰囲気を利用して女の子をたくさん騙し、もてあそんだのです。

でも妙に安心感を与え、人柄がよさそうに“見える”その顔で、誠実そうに謝ると何事もなかったかのように忘れられてしまうので、お得であった。

ある日、彼は神棚に手を合わせてこう願った。

「おいらを、日本で一番えらい人間にしておくれ」

ずいぶんと身勝手極まりない願い事であったが、彼には、「誠実そうに見える人柄」という武器があった。それに神様までが騙されたのかどうかはわからないが、その日の晩、夢の中に神様が出てきて、こういった。

「みやこにいきなさい。そして、目が醒めてから初めて目にするものを大事にとっておきなさい」

翌朝、目が醒めた彼は、いちばんに目にはいったものを手に取りました。それは、農耕馬を働かせるためのムチでした。彼は、これを持ってみやこまで出かけることにしました。

しばらく行くと、道の脇で一人の紳士がうずくまって倒れています。

「おや、どうしたのですか?」

持ち前の人柄のよさを最大に発揮して、いざとなったらなんかチョロマカしてやろうと考えていたのですが、返ってきた答えは、想像を超えたものでした。

「ああ、あなたはいいものをお持ちだ! 是非、このわたしの尻を叩いてくれ」

わけがわからなかったので尋ねると、どうやらこの長身の紳士は、SM症候群にかかっており、ムチで叩かれないと、死んでしまうという病気にかかっていたのでした。

紳士はそこでペロリと尻を出すと、ひざまずいて、尻を高く掲げた。

おっさんは、何度も何度も尻をムチでひっぱたきました。

はうう、はうう、あ、はうう…

紳士は、何度も声をあげ、そして再びうずくまってしまいました。

「ありがとうございます。行きがかりの心優しい方。代わりに、これを差し上げましょう」

紳士はそう言って、バッチをくれました。そこには、「けんせつ・なかむら」と書かれていました。

おっさんは、そのままずんずん道を行きました。お昼になったようです。おなかが空いてきました。途中道のわきに茶店があったので、中に入りました。中には、一組のお客がおりました。

よく見てみると、それはヨーダのようなちびっこいジジィと、盲目のさらなるジジィでした。

「…もう、株はあかんね。バレてもうたがな」

「…じゃのう、これからはゼネコンかのう」

二人のわきを通りすぎ、奥の席につこうとしたとき、おっさんはバッチを床に落としてしまいました。

!!!

二人のジジィの目が光りました。

「もし、旅の方。もしよかったら、そのバッチをわしらにくれないだろうか」

「いえいえ、これは旅の途中でとある紳士から受け取ったもの。タダでは差し上げられませぬ」

「それならこれをやろう。」

そういって、盲目のジジィは「山梨リニア」と書かれたカバンのなかから金塊を取り出した。

「金の延べ棒でも差し上げられません」

すると、ヨーダのようなジジィが、カバンのなかから「ヤクザのツテ」と書かれたノートを取り出した。

「このなかには、役に立つ電話番号が書いてある。もし『ホメ殺し』にあったときには電話してみなさい」

「わかりました」

おっさんはノートと金塊をもらって、ホクホクです。

茶店で昼食をたべたあと、再び歩きはじめました。初めはムチ一本しかなかったのがいつのまにか役に立つノートと、金塊に変わったのです。

歩いていくと、とうとうみやこにつきました。しかし、なんだか様子が変です。重苦しい雰囲気があたりを取り囲み、家という家はすべて窓が閉められています。

「どうしたのですか?」

おっさんは、乞食に聞いてみました。

乞食がいうことには、「カンリョウ」の国に操られたドラゴンが、みやこを荒らしているらしいのです。そして、そのドラゴンを退治した者にはほうびとして、みやこの長者の地位が与えられるということのようです。

「じゃあ、わたしが退治しにいきましょう。まずは長者の家にいかなくては」

おっさんは長者の家を目指します。

長者の家は、とても大きく、贅沢で、ムダな造りをしていました。入り口には門番が立っています。

「おらおら、じじぃ、そこで何突っ立ってんだよ。邪魔だからどっかいけよ」

やたらと口の悪い門番でした。

こういう輩にはリベートが一番です。おっさんは、金塊を渡すと、すんなりとゲートをくぐることができました。

「ドラゴン退治希望者はこちら」と書かれた部屋にはすでに二人の男が座っていました。一人は恰幅のいい軍人で、目が血に飢えていました。もうひとりは、と見ると、頭にピンクの象をかぶり、見Mからバナナを生やし、そして鼻にチューリップを挿していました。これではまるで変人です。

長者の家には美しいお姫様がいました。

長者は、3人の男を前に、こう言いました。

「勇敢な男どもよ。もしドラゴンを退治してきたら、長者のイスを退治した者にあげよう。そしてその晩は、『しゃぶしゃぶ』大会じゃ。」

3人は、思い思いに立ちあがり、そしてドラゴンの潜む場所まで向かっていきました。

軍人と変人が真っ正直にドラゴンを攻撃したのに対し、おっさんは、とりあえずもらったノートに書かれた電話番号に電話してみました。そこに、軍人+変人への攻撃を依頼したのです。そして次にしたことは、みやこの真ん中に立ち、大声で叫びました。

「わたしはたったいま、ドラゴンを倒してきた!」

家という家の窓があき、おっさんの姿を見ました。

“人のよさそうな顔をしている”

それだけで、みやこのひとはおっさんの言葉を信じました。

ところで、軍人と変人はドラゴンを倒すことができたのですが、しかしドラゴンに受けた傷で死んでしまいました。いえ、別に死ぬほどのケガではなかったのですが、どこからか飛んできた鉄砲の玉にあたって死んでしまったのです。

おっさんは、長者の家に着くと報告しました。

「軍人と変人は、わたしが助けようとしたのですが、間に合わず、死んでしまいました。そのあと、ドラゴンとわたしが格闘し、そして辛くも勝利してきました。」

長者はおおいに喜びました。

そしてその晩、下着をつけていない娘がシャブシャブを用意し、楽しく過ごしました。ついでに、シャブも楽しみましたとさ。

教訓「世渡り上手なだけ?」

 

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