ウラシマ君は日がな一日、さびれたアパートの一室で何をすることもなくダラダラと過ごしていました。 年齢は26歳。 もういいかげん働いてもいい年齢なのですが、一向に働く気配を見せません。 親もあきれて仕送りすることもなく、彼はなんとなく入ってきた小銭で毎日菓子パンなどを食べて過ごしていました。 部屋ですることといえば、テレビを眺めているか、太陽の動きを見ているか。 たまに天気がいいときは散歩に出て公園のベンチで子供たちが遊ぶのを眺めているだけでした。 もちろん、そんな生活が長続きするわけもなく、お金がなくなったらしぶしぶバイトもするのですが、少しお金がたまると彼は働くのがイヤになって仕事を辞めてしまうのでした。 彼のグータラな生活を見かねて仕事を紹介してくれた学生時代の友人も何人かいるのですが、いくらいい仕事を紹介してもすぐに辞めてしまうので、結局誰も彼に仕事を紹介することはしなくなってしまったのです。 ウラシマ「あ〜、どっかにお金でも落ちてないかな〜。一億円くらい落ちてたらオレも優雅な生活できるのになあ〜。そしたら毎日うまいもの食べて、いい家に住んで・・・」 ある日のこと、ウラシマ君は公園のベンチに座って、そんなことを考えていました。 すると、ウラシマじゃないか、久しぶり、と声をかけてきた人物がいました。 見るからに質のいい生地でできたスーツに身を包み、ヴィトンのアタッシュケースを片手に持った青年でした。 ん? 夢想の世界からいきなり現実の世界に引き戻されたウラシマ君は、少し考えて、 ウラシマ「ああ、カメちゃんじゃないか」 中学のときの同級生、カメヤマ君でした。 以前、同窓会であったときカメヤマ君はまだインターンでしたが、今はもう立派な外科医になっているはずでした。 カメヤマ「まだグータラな生活してんのかい?」 東京大学理V類に進学し、その後は順調に医者への道を進んだカメヤマ君は、年齢に不相応なほどの風格を備えていました。 ウラシマ君とは大違いです。 まあ、たまに会ったんだし、昼メシくらいおごるよ、というカメヤマ君の誘いを受け、ウラシマ君はカメヤマ君のクルマに乗り込みました。 クルマは真っ赤なポルシェです。 ウラシマ君は、「同じ中学で同じ学年だったのに、オレとは全然違うんだなあ」と思いました。 |