●「子ども研究会」は小児科医の毛利子来さんを中心に雑誌編集者らが集い、さまざまな分野の講師を招いて勉強会を開いている。今日のパネリストは評論家の芹沢俊介さん、劇作家の別役実さん、劇作家の山崎哲さんの3人。 さて人間に対してWHO ARE YOU?と問いかけるのにはいろいろな方法があるだろうが、犯罪というのは最もエキサイティングな切り口のひとつだと思う。ふつう社会の裏側の出来事、人間にとってよけいなものと考えられている犯罪だが、それがぼくらを魅了して止まないのはなぜだろう。犯罪は宗教と同じように非日常の産物であり、聖と賤のダイナミズムを形成する。社会や時代の産物であると同時に、ぼくらの無意識の産物でもある。犯罪研究は、人間研究のもっとも鋭角的な一部分といえる。 それに、いわゆる”いい話”がどこか嘘臭いのに対し、犯罪には人間のほんとうが出る。とくにこれから話される昭和初期の犯罪は、いかにも人間味にあふれた、物語としても上質のものばかりだ。 |
●「犬を飼ったほうがいい」という発言の真意はどこにあるのだろうか。単純に、罪の意識から防犯の必要性をアドバイスしているとは思えない。もしかしたら犯人は、なんでもいいから話がしたかったのではないか。コミュニケーションを求めていたのではないか。防犯の話だったら相手も安心して聞くだろう。それをきっかけに、犯人と被害者のあいだで何かが交流する瞬間を持ちたかったのではないか、などと考えてしまう。 |
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