濃度(濃淡)

 カモメの背の濃度が識別の手掛かりとなることは皆さん周知のとうりです.濃度を表す方法はマンセルシステムの明度やKODAK社のグレースケール(以下GS)などが知られています. 文献(2),(6)には種,亜種の背の濃度がGSで記載されています.GSはコダック社から販売されているもので下の写真のように0から19の番号とその下に白から黒までの灰色が印刷されたものです.

 0は濃度0.05に設定され1段階で0.1ずつ増え19は濃度1.95に設定されています.濃度をN,光の反射率をRとするとN=log(1/R)の関係です. 具体的に0から19までの反射率は以下のようになります.

No0 A1234567 M8910111213141516 B171819
反射率[%]89.170.756.244.635.428.122.317.714.111.28.975.64.43.52.82.21.71.41.1

  GSの値は明るさを表しているのではなく,反射率を規定しています.右のグラフは晴天,薄曇り,曇天の日に千々石海岸の照度を計測したものです. 晴天の日は太陽に垂直面はおよそ7万ルックス,太陽を背にした垂直面は5千ルックスと およそ14倍の強度差があります.
 背の明るさは反射率と背を照射している光の強度(照度)を掛け合わせた値をπで割った値になります.例えばセグロカモメおよびオオセグロカモメの背を夫々1万,4万ルックスの光が照射している場合の明るさの値を求めてみましょう. セグロカモメのGSは6-7,オオセグロカモメは11-12とされていて反射率で表現すると夫々17.8-22.4,5.6-7.1[%]です.これらの反射率と照射している照度から, 各々の明るさ(輝度)は567-714,713-904[cd/㎡]となり,セグロカモメの背の明るさはオオセグロカモメと同じくらいか暗く見えることになります.

  右の写真は晴天の日にセグロカモメ(左)とオオセグロカモメ(右)が太陽に向かって静止したところを撮ったものです.セグロカモメの背がオオセグロカモメより暗く写っています. 晴天の日はカモメの背の明るさでその濃度を推測してはいけないことが分かります.
 天空がすべて雲で覆われ太陽の位置が特定できない曇天の日は晴天の日と違って水平面照度は水平面からから±10°の範囲で2%以内に収まっています. 千々石海岸では全天が雲で覆われた天候の日はカモメの背の濃度を写真撮影により計測することができます

 写真は同じ濃度(反射率)の物体は同じ照度,露光時間,レンズのF値で撮影すると同じ濃さで記録されます. 波打ち際のカモメと手元の水平面に置いたGSを同じ露出条件のカメラで撮影しカモメの明るさがGSの明るさと一致した点を読み取るとカモメの濃度となります. 右の写真のモンゴルカモメの緑の線で囲った部分の平均相対輝度(枠の中の赤(R),緑(G),青(B)のデータを読み取りその平均値が画面の白を100%としてそれに対する値)は66.5%です. GSの0-19の平均相対輝度をグラフにプロットしその曲線の66.5%のGSの値を読むと,このモンゴルカモメの背の濃度はGS5.7となります. この写真はsRGB色空間を使っていますので相対輝度の算出にはR,G,Bおよび白(W)の色度(x,y)は夫々(0.640,0.330),(0.300,0.600),(0.150,0.060),(0.3127,0.3290)を使っています.

緑枠内の数百点の平均値を手計算で算出するのは時間がかかりますのでプログラムを作ってPCで算出しています. フィールドで観察したカモメの背の濃度を計測したい方でプログラムを作るのが面倒な場合は「なんじゃもんじゃ」「サイト紹介」からフォームで連絡いただけば無償にてお送りいたします.








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