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ミステリィ読者の十戒



1.真犯人は、お話の前半で出てくることが多い。しかし、だからといって、出てくる人物、全員を疑っていると、きっとつまらないことになる(損をするのは自分だ)。そうかといって、ぼんやり読んでいて、登場したことも忘れていた人物が真犯人であることもあるので、適当に記憶にだけは留めておこう。

2.超自然の方法、あるいは不可思議な魔力を使って、あらすじの先を読んだり、謎を解くようなやりかたは、読者として避けた方が良い(まあ、できる人はやってみても、かまわない。あくまでも自由だ。でも、人に言わない方が良いと思う)。

3.「密室」と書いてあるのに、実は秘密の経路があった、ということがままあるので、鵜呑みにしてはいけない。密室というのは、実に定義が曖昧であるし、作中人物が台詞の中で言っているだけのこともあるので注意しよう(「蜜室」なんて誤植に見せかけて、ただのシロップの貯蔵庫だったりしたら大変だ)。

4.まだ発見されていない毒薬とか、複雑な説明を必要とする科学的な装置などは使わない方が良いことになっているけど、もし出てきてもあまり関係ないから、気にしない(複雑な説明が好きな人もいるし、今や、CDプレイヤーの原理だって知っている人は少ない)。

5.中国人が登場しても、しなくても、あまり関係ない(昔から関係ないが、最近、中国人留学生が多いから、これからはたぶん活躍するでしょう)。

6.偶然や直感によって事件が解決されることがあるが、そもそも読者が、その小説を読むことになったのも、偶然や直感であるし、作者がその作品を書いたのも偶然と直感であることが多いのだから、しかたがないと諦めることが肝心である(何事も寛容に)。

7.探偵自身が犯人である、いや読者が犯人である、くらいではもう驚かない熟練した読者は、少し休養して、真っ白になってからミステリィを読もう(でも、探偵が実は読者だった、ストーリィにまったく出てこずに、あとがきで作品の読書感想だけ書いていた、となったら驚くかな? しかし、つまらないぞ)。

8.推理の手がかりはかくすところなく読者に提示されている、なんて小説があったら、電話帳より分厚くなっていたり、まあ、そうでなくてもつまらないから、あまり気にしない方がよい(算数の問題だって、補助線は引いてないんだからね。一般に、フェアプレーよりも、ファインプレーの方が面白いんだから)。

9.ワトソン役の知能は読者より幾分低い方が良い? これ、読者をなめとるのか? まあ、いいでしょう。しかし、読者より知能の低いワトソンさんが、どうして小説が書ける? カマトトか? とか、とにかく深く考えない。

10.双子や容貌が似ている人物、足が悪い、目が見えない、など特徴のある人物が、出てくることが多いが、いつもいつも意味があるわけではないので、軽く流そう(まあ、こういう人が出てくるだけで雰囲気が出たりするのは、セクハラに近いものがあるな)。

特1.「読者からの挑戦状」を作家に送りつけてはいけない。




ミステリィ超読者の十戒



1.お話の前半でお気に入りのキャラを決めてしまわないことだ。その人物が真犯人である場合、作家を逆恨みする結果にもなる(キャラばかり探していないで、たまにはミステリィのプロットを感じとるのも一興である)。大学の助教授であるとか、高校か大学からの同性の親友がいるとか、そいつと同じ下宿だったとか、ちょっと髪が長いとか、あるいは、お風呂にアヒルのおもちゃがあるとか、その程度で入れ込んではいけない。先が思いやられる。せめて、お風呂にはカエルのおもちゃくらい欲しいところであろう。そうかといって、誰も愛せないまま話が終わってしまうというのも寂しいものだ。一番良いのは、お気に入りの俳優の写真集を見ながら、ミステリィを読む。これに尽きる。尽きるので、そのあとは何もないだろう。

2.超自然の方法、あるいは不可思議な魔力を使ってでも、好きなキャラを生き返らせようとか、誰かと誰かをラブラブにしよう、などと考えてはいけない(まあ、できる人はやってみても、かまわない。あくまでも自由だ。そういう能力を持った人が意外に沢山いて、同人誌を売っている)。

3.「密室殺人」と帯に書いてあって、内容もけっこう緻密で、今までにない新しいトリックなのに、たった二人の男性キャラが位置的に接近していた場面があったとか、多少相手を馬鹿にしたような馴れ馴れしい会話をするだけで、もう「密室」なんて吹っ飛ぶ。これが密室消失トリックだ(これじゃ、「愛の密室」だ、なんて書くとますます逆効果である。いかんともしがたい)。

4.まだ発見されていない毒薬とか、複雑な説明を必要とする科学的な装置などが使われても、美形キャラがそれを使いこなしていれば問題はない(ようするに、中年の普通のおじさんでは駄目。何をやっても認めてもらえない)。

5.中国人が登場した場合も美形ならば特に問題はない(どういうわけかチャイナドレスは美人しか着ないと日本人は思い込んでいるが、きっと、その昔、何かの法律があったのだろう。大宝律令だろうか? まだまだ中国も日本も不思議な国である)。

6.偶然や直感によって事件を解決する中年の刑事はアンフェア。しかし、同様のことをする美形探偵は文句なしに天才である(これは実社会にも広く通用する法則であるので、いろいろ応用してみよう)。

7.探偵自身が犯人であるとか、読者が犯人とかはどうでもよい。犯人が美形あるいは、実は読者が美形だった!(探偵とラブラブなのは言うまでもない)というのが今、最も新しい課題である(既に実現しているという噂もある。それは妄想だろうか)。

8.推理の手がかりはかくすところなく読者に提示されている、このミステリィはフェアプレィだ、とうたわれているのに、いわくありげなセリフを吐いたまま黙ってしまう探偵! 過去がありそうな二人! いいところで場面転換するショット! アンフェアちゃうんか! これ、なんとかしろ! ちゃんとものを言え! え? 何なんだ何なんだ、という怒りほどもっともな怒りを君は知っているか(本を閉じて、深呼吸するとよろしい)。

9.ワトソン役が事件の解決よりも、探偵とのラブラブ進行に重きをおくことは実はリアリティである。誰だって、自分が一番可愛い。事件なんてどうだって良い( これって、西之園君のことか?)。

10.双子が出てくるとたいていラブラブだが、現実の世界ではああいう関係は滅多にない。同様に兄を慕っている妹なんて見たことないぞ(ところが、こういうキャラが出てくるだけで雰囲気が盛り上がるわけで、サケ茶漬けとお新香の関係に近い。あ、比喩が難しかったか・・)。

特1.「超読者からの挑戦状」を作家に送りつけても良いが、一般に内容がほとんど理解できないという話である。


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