日々是好日・身辺雑記 2005年 4月
(の一部)

 
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四月某日「今日の料理:『抜刀質店』の作り方・いきなり、その3.8」
「秋刀魚苦いかしょっぱいか の巻」   
          
タンタカタカタカタンタンタ〜ン♪ (NHK「きょうの料理のテーマソング」鳴る)
みなさま、こんにちは。
「抜刀質店の作り方・いきなり、その3.8」の時間です。
「いきなりその2」で、最初がいわゆる「作文」じゃなくて「報道文」の基本から
始まっちゃったことは書きましたね、そうです、新聞部の「鬼の 岩平先輩」鉄の指導のもと。
んでもって、いきなり「その4」で「銀座タダ飯酒・・・・おととっ、『話芸』修行物語」。
間の「3.8」は・・・「3.8」はカタイです。
私は文章校正(というか翻訳)をしていました。
1円の得にもなりませんでしたが、父の命令でしたので。
     
インターネットの前、こんなふうに個人がサイトを持つなんて遠い夢だった、パソコン通信
の時代。 ニフティの方なら「フォーラム」といえばお分かりいただけるでしょうか。
ひょんな事から、実父がそれをひとつ、まかされることになりました。
元エンジニア、しかも C@A だのNAT@ だのと特許がなんじゃと働いていた男が、定年後
いきなり農園はじめたんですワ、三宅島で。 
で、「その農業体験エッセイを書かないか」とさるところからハナシが来ました。
父、書きました。
それは「日本語の」文章になっていませんでした。
    
元・技術屋の彼は、頭の中が、数字とアルファベットと単語、それをつなぐ「て・に・を
・は」のみ。 書けば書くほど機械工学論文になり果てていく。(初期のレニを「う〜ん
とオヤジ」にしたカンジ?)
   
で、いきなりハナシとハシは娘に振られました。
晩ご飯の最中で、わたしゃさんまの塩焼き食べてました。
「おまえ、オレの文章に手入れろ。」
っぅつ
咽詰まりましたわよ、そりゃもう。 むせかえりました。 
背中を詩人の佐藤春夫がポンポンたたきましたね〜、ああ、さんま、さんま、
さんま苦いか塩っぱいか。
   
なにしろ父と私の人間関係は最低最悪です。
ここまで仲悪い父娘もめずらしいんじゃないかな。 
いまだに「親子モード」すると双方カチンコチンに緊張するのがよ〜く分かりますもん。
   
それがなんと、校正係やれとな。
この男、何事も命令形です。 言ったが最後、決定です。
    
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
    
だあぁぁあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!
とにかく、ハシにもボウにもマルタにも引っかかんねぇっっっっっ!
な日々でございましたが、それでも少しずつ、少ぅしずつ、見えてくるものがありました。
会社に残りゃ、それなりのポジションでふんぞりかえって?いられた男が何で、離島の
荒れ地を開墾して農業をやろうとしているのか。 島のこと、海のこと、緑のこと、人
のこと。 ここまでたどりついた彼の少年時代。 少しずつ、少しずつだけれども、文法
間違いだらけのお堅い学術研究調文の間から、にじみでてきました。
     
そのかわり打ち合わせはハンパじゃない「がなりあい合戦」でしたわよ。
もう、思い出すのもイヤダ。 助詞ひとつ、形容詞ひとつの使い分けで、なんで何時間も
むかいあわなきゃならんのよ、大嫌いな天敵と。
      
しかしその頃、じつは私自身の方も日本語に少し問題がありましてね。
英語じゃなくてフランス語で大学受験やったせいでラテン系の文法で考えるクセがつい
ちゃってたんです。 寝言までフランス語の動詞活用表暗唱(150ページ位ある)
でうなされました。
たとえば「S'ASSEOIR(座る)」の男性三人称複数・接続法半過去型「qu'ils s'assissent」・・・
(いまはダメよ、フランス語で「ABC・・・」最後まで言えない。 ああ、教育って無力。)
名詞も形容詞も形容動詞も男性形・女性形、それと、これはフランス語にはないけれど中性
型、動詞の活用型は「直説法」現在、半過去、大過去、単純過去、単純未来、前未来、
「接続法」「条件法第2過去型」「命令法」「分詞法」「不定法」・・・・・・もうなにが
なんだか(笑)。
かなりこんぐらかった文法のアナ底にはまりこんでしまっておりまして、
「いったいこれからさき、自分の日本語をどうしよう?」
な時期だったわけですな。
     
んなもんで、父が三宅島からファクシミリ送るなり、東京に来て書くなりする文章に、毎晩
父娘でヒタイ寄せて(ツノ突き合わせてともいう)、父の、もはや日本語とすら呼べない
文字の羅列を、見知らぬ方々にとりあえず「エッセイ」として読んでいただけるレベルに
持ってゆくべく、あーでもない、こーでもないと大騒ぎしておりました。
   
とにかくその校正作業を、単行本にして2〜3冊分やったのが、はからずも自分の文章修行
には、なりました。
   
もいっぺんやれっていわれても絶対!イヤダけどね・笑。
   
     


      
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