2002.10.24
(1)法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案と,(2)司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案からなる。(2)は,司法試験委員会の設置等に伴う司法試験法の一部改正,新たな司法試験制度の導入に伴う司法試験法の一部改正,裁判所法の一部改正からなる。なお,司法制度改革推進本部のウエブページには,学校教育法の一部を改正する法律案も参考として掲げられており,同法案が関連法案であることが示されている。
2002年度中 設置認可申請受付開始
2004年4月 法科大学院開校
2005年度 新司法試験開始
・ 地域の大学との連携(山梨県)
・ 既存の学校法人と提携して独自の法科大学院を設立(第二東京)
・ ロールーム構想(大阪)
新司法試験下では,その受験資格は法科大学院課程修了者と司法試験予備試験(予備試験)合格者に限定される(司法試験法改正案第4条)。その割合は法案からは定かではないが,プロセスによる法曹養成(司法制度改革審議会最終意見書)という理念,法科大学院と司法試験との有機的連携という考え方(司法試験法改正案第1条3項)からは,法科大学院課程修了が原則的なルートとされるものと予想される。
なお,受験については,法科大学院課程修了後又は予備試験合格後の最初の4月1日から5年以内に受験することを要し,かつ,受験回数は3回以内とされる。
・ 2年ないし3年の通学期間→機会費用の増大
・ 年間200〜300万円の学費
・ 負担軽減措置は,返還が前提の奨学金,学資ローン
→ 特に社会人,貧困者層にとっては法曹になるに当たって高い障害となる。
→ 法曹供給源の限定。
→学問,思想の自由の統制
多様なライフスタイルの制限。
敗者復活の機会の制限。資格試験の受験資格制限としての妥当性。
試験科目として「法律実務基礎科目」が挙げられていることの問題性
大学に,法科大学院における教育の充実に自主的かつ積極的に努めることが義務づけられている。
文部科学大臣は,法科大学院の認証評価機関の法科大学院評価基準の内容が法曹養成の基本理念を踏まえたものになるように配慮する責務を負っているが,この責務を負っていることを理由に,認証評価基準の策定に介入し,その介入を通じて,大学の運営に介入することができる。大学は,適格認定を受けるように教育研究水準の向上に努める義務を負っており(5条3項),適格認定を受けられない場合には教育研究活動の状況について報告又は資料の提出を文部科学大臣から求められる。→報告,資料提出を通じた大学の運営等への文部科学大臣からの介入の可能性
法務大臣からも,文部科学大臣を通じて,報告又は資料の提出,勧告,命令等を受けることになる。→法務大臣による介入の余地の存在
これまでは,当該学校が,設備,授業,その他の事項について,法令の規定又は都道府県の教育委員会若しくは都道府県知事の定める規程に違反したとき」に初めて改善措置を講じさせることができた(現行法14条)。
ところが改正法案では,「法令の規定に違反していると認めるとき」に,改善措置を勧告,変更命令,組織廃止等の処分をすることができるようになっており,文部科学大臣が介入することのできる範囲が法文上も広がっているのである(「認めるとき」とある以上,法令の規定に違反していたかどうかは文部科学大臣の裁量にかかるという解釈が成立しやすくなることになる。)。これは,大学の自主性の尊重などでは断じて無く,大学の自治に対する介入の機会の拡大に他ならない。
大学は,その教育及び研究,組織及び運営並びに施設及び設備の状況について,自ら点検,評価することに加え,認証評価機関による評価を定期的に受けなければならないこととされている(69条の3第2項)。認証評価機関は文部大臣により認証された機関であることが必要とされており(同項,69条の4),また,文部科学大臣による監督下におかれている(69条の5。認証の取消は,「その他認証評価の公正かつ適確な実施に著しく支障を及ぼす事由があると認めるとき」に可能なのであり,文部科学大臣の裁量が広く認められている。)。このように,文部科学大臣による主管下にある認証評価機関による評価を通じて,大学の「研究,組織及び運営並びに施設及び設備の状況」についての介入が行われ,文部省による統制が,大学当局と学生との間の自主的な話合いによる運営の結果を否定することになる可能性が高い。
司法試験管理委員会は国家行政組織法第3条に定める行政委員会であり,「法務大臣の所轄の下」におかれる機関であった。したがってその運営についても,法務大臣からの独立性が保障されていた(司法試験管理委員会規則制定,現行法17条)これに対し司法試験委員会は,法務省内の一機関であり,したがって,その運営も,法務大臣の指揮監督下に属することになる。司法試験実施に必要な事項については,司法試験管理委員会規則による定めから,法務省令による定めに移行している。
また,委員についても,弁護士委員の選任については,日本弁護士連合会からの推薦が要件とされなくなっており(13条),非常勤化されている。したがって,法務官僚からなる司法試験委員会事務局の権限が強くなる。
これまでは,司法試験管理委員会が定める合格者決定方法に基づき,司法試験高裁員の合議によって定められていた。改正法案によれば司法試験委員会が最終的には決定することとなるので,事務局である法務省の意向が入り込む余地が生ずることになる。(8条)
53期から司法修習の期間が短縮されたことに伴い,修習生には過大な負担と最高裁判所による強力な管理が及ぼされるようになっている。1年ないし1年4か月への期間短縮のもとで現在と同等の修習の成果を上げようとすれば,更なる苛酷な日程と管理強化がもたらされるおそれが大きい。
司法試験受験申請時における住民票コードの使用が法定されるが,住民票コード割振りを拒否する自由に影響を与えないよう,監視する必要がある(住民票提出で代替できる運用を定着させる必要がある。)。
法曹になる途を経済面,学歴面で閉ざしてはならない。
借金返済に負われ,人権,正義を唱えられないような社会にしてはならない。
高度に専門的な職業人の育成に目を奪われ,これまでの学部教育が疎かになっていくようなことがあってはならない。
大学院の資格試験予備校化についてどう考えるか。新たな特権の付与を嬉々として受入れるのか。
法科大学院の義務化を崩し,他の問題点への運動の展開を図る。
・ 各会派への働きかけ
・ 弁学共同による運動