法科大学院の「枠」にとらわれない法曹養成制度を


 法科大学院については、既習者コースの卒業者が受験する2006年度の合格者数について現行試験800名、新司法試験800名という素案が法務省から司法試験委員会に示されたという新聞報道をきっかけに、その制度的混迷が誰の目にも明らかになりました。

 二弁は会長声明を出して前記素案を批判しましたが、新司法試験が前提とする「法科大学院における教育内容」が現在法科大学院で現実に行われている教育内容でよいのかどうかは何らふれていません。法科大学院の教育内容についての検証が何ら行われていない段階でその卒業者のみの合格枠=特権拡大を求める議論は乱暴です。成果も不明確な新制度を既存の制度よりも良いものであるはずと決めつける論法はまさしく詭弁です。

 現行の司法試験について移行措置であることを強調し、法務省素案の合格者数が多すぎると暗に批判している点も疑問です。得体の知れない法科大学院に費用と時間をかけて通うのをためらうのは自然であり、他のルートで法科大学院修了者と同等の「知識、思考力、分析力、表現力」を身につけることを志す途が制約されるのは不当です。

 法科大学院では入学者数に比べ卒業者数が絞られることを強調する人もいます。しかし、どの程度の法科大学院が学生募集に際して「厳格な成績評価・単位認定」をスローガンとして打ち出したのでしょうか。また、大学院側に厳格な成績評価・単位認定を行うだけの資質は備わっているのでしょうか。法科大学院というシステムだけで法曹志望者の選別を行えるというのは傲慢です。

 新司法試験では受験資格取得後5年間以内に3回という受験回数の制限が設けられています。この受験回数制限に示されるように、新たな法曹養成制度は、法曹志望者を自分たちが関与した「法科大学院」を卒業した「短期合格者」へと選別排除していくものです。そこには制度の枠外に放り出された現行試験受験生、法科大学院中退者、受験資格を喪失した法科大学院卒業生・予備試験合格者への配慮は感じられません。(攻略)

トップページ