2000年、丸瀬布で見た夢

 

 

 

 ホームにたたずむ軽便の客車。味わうことのないと思っていた匂い、この感覚は紛れもない自分が求めていた感触。そこに見ることのないとあきらめていた現役の井笠の客車が、人待ち顔で時間の流れにたたずんでいる。

 

 

 本日の稼動は無理かと思っていたら、新宮商行にいたDL(1959年運輸工業製6トン)が入れ替えに動き出した。古くは鶴居村営軌道の機関車であったことは今更言うまでもない。動き出せば、百聞は一見に如かず。なんという愛らしい動きだ。ギヤが合わずノッキングを起こすと、車体が大きく揺れる。釧路の工場で、体当たりで貨車を押していた姿さえ想像できた。やはり静態では現役の感動は伝わらない。

 

 

 雨はいよいよ強くなり、お客さんもいなくなった。石炭もなくなったので、編成が変わった。最後に井笠の客車に乗ろうと思っていたので、ちょっと残念。

 15:00の列車はお客さんゼロで発車せず、自分はそろそろ女満別空港へ行かねばならない。残念だけれど別れを告げる。今度いつこれることであろう。団体さんが帰る時には、汽笛を吹いて見送ってくれるが、自分は静かに目線を送って「さようなら。」

 

 

 この風景がある限り、自分は機会を作ってまたやってくる。遊技用だろうがなんだろうが、そこには私の大好きな軽便の匂いが、色濃く残っている大切な場所であるから。もうすぐ532号も帰ってくる。願わくばいつか、井笠の1号か、頸城の2号がここで走ることはないだろうか。それさえ見られれば、自分の心に残る妙な燃えかすは、完全燃焼して消えてしまうと思うのであるが・・・。

 

 

 

 

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