イスラームの聖書『クルアーン』は、アラビア語の読誦による韻律の美しさをもっているので、本来は他の言語に翻訳してはならないとされた。 偶像の忌避によって 絵画が十分に発展しなかった代わりに、アラビア語の書道は大いに尊重され、クルアーンの章句が建築の装飾にも大々的に用いられるようになる。
上の写真は トルコのオスマン朝における書家 ハーフィズ・オスマーン (1642-98) の筆によるクルアーン写本の 1ページで、イスラームの美学をよく表している。書体はナスヒー体。本文の飾りに 人間や動物の姿を描くことはないが、草花の紋様は許された。    (トプカプ宮殿蔵の『クルアーン』の複製本)