■医療機関への立入検査について厚生省が留意事項を通知

2001年度に実施される医療機関への立入検査にあたっての留意事項について、厚生労働省の医薬、医政両局長連名による通知が、各都道府県知事などに対し8月3日付で出されました。第4次医療法改正や各種の事件報道に配慮した内容となっています。

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医薬発第859号、医改発第803号(平成13年8月3日)

 平成13年度の医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施につ
いて

 標記については、「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要
綱」(平成13年6月14日医薬発第637号・医政発第638号医薬局
長・医政局長連名通知)を参考に実施されることと思慮するが、本年度の
実施に当たっての留意事項を下記のとおりまとめたので参考とされたい。
 なお、医療機関の立入検査を実施するに当たっては、他に医療機関に対
し立入検査を行う担当部局等があれば、当該部局等とも連携し、合同実施
することなどもご配意願いたい。
 おって、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)、第245
条の4の規定による技術的な助言であることを申し添える。

 

1.医療法改正その他の制度改正に伴う事項について

 今般、「医療法等の一部を改正する法律」(平成12年法律第141
号)が平成12年12月6日に公布され、従来の「その他の病床」が「療
養病床」及び「一般病床」に区分され、平成15年8月末までに病床種別
の届出が必要となり、また、一般病床の看護職員の人員配置基準が入院患
者4人に対し看護婦・准看護婦1人から入院患者3人に対し看護婦・准看
護婦1人に引き上げられたところである。この他、適正な入院医療を確保
するために人員配置基準に照らして職員の配置が著しく不十分である等の
場合における医療機関に対する増員命令の制度化、広告規制の緩和等も行
われた。(平成13年2月22日医政発第125号医政局長通知参照)
 さらに、診療用放射線の防護に関して「医療法施行規則の一部を改正す
る省令」(平成12年厚生省令149号)が平成12年12月26日に公
布され、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告、国際電気
標準会議(IEC)等の国際基準を取り入れ、新しい医療技術が医療現場
で実施可能になるよう所要の整備がなされたところである。
 立入検査の実施に当たっては、以上のような制度改正内容を経過措置等
も含め熟知の上、次のような点に留意しつつ検査を行う。

1.医療従事者の充足について

 医療従事者の充足率については、徐々に改善が図られている
ものの、なお不十分な状況も見受けられるので引き続き重点的
にその確保を求めていく。

(1)医師、看護婦等の標準人員の充足状況の検査について
 ア 職員名簿、出勤簿、タイムカード、勤務割表、労働者名
簿、賃金台帳その他の帳簿書類を相互に照合する。また、非常
勤職員の就業実態の確認を行う。
 イ 複数の医療施設を開設している医療法人等の病院につい
ては立入検査を同日に実施する等工夫し、病院間で名簿を照合
し、医療従事者の実態の把握に努める。

(2)医療従事者が著しく不足している医療機関に対しては、
具体的な改善計画を提出させ改善状況を追跡調査する等により
指導する。

(3)無資格者による医療行為の防止については、医療機関に
対し採用時における免許証原本の確認の励行を指導するととも
に、無資格診療等に係る通報等があった場合は直ちに検査を実
施し、無資格者による医療行為が行われていることが明らかに
なった事例については、刑事訴訟法第239条の規定により告
発するなど厳正に対処する。
   また、助産婦免許を有していない者が助産業務に従事し
ている等の事例があることから、無資格者による医療行為及び
助産婦免許を有しない者による助産業務が行われることのない
よう、上記により対処する。

【参考】「無資格者による医業及び歯科医業の防止
について」(昭和47年1月19日医発第76号医
務局長通知)、「日母産婦人科看護研修学院の研修
修了者について」
(平成13年3月30日医政発第
375号医政局長通知)

(4)病室の超過入院(臨時応急のため入院する場合を除
く。)については、是正を指導するとともに、医療機関に具体
的な改善計画を提出させる。なお、履行されない場合には、医
療法に基づく改善命令等により厳正に対処する。

2.医療機関に関する広告について

 医療法第69条及び平成13年1月31日厚生労働省告示第
19号に定める事項以外の事項を広告しているものに対して
は、厳正に対処する。
 なお、雑誌等の広告媒体において、違法な広告を行っている
ものについても厳正に対処する。

3.診療用放射線の管理について

 線量限度の変更等、放射線の線量に関する評価のあり方の見
直しに伴って、記帳の記載事項が追加されたため、その記載事
項の確認を行う。また、事故が発生した時に、あらかじめ通報
基準・体制を定めておくよう周知徹底を図る。

 【参考】「医療法施行規則の一部を改正する省
令」(平成12年12月26日厚生省令149号)
「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行につ
いて(通知)」(平成13年3月12日医薬発第1
88号)

 

2.最近の医療機関における事件等に関連する事項について

 最近、精神病院における患者に対する違法な身体拘束、その他の処遇な
どの事件や毒薬等の医薬品の盗難、紛失、不正使用などの事件が起こって
いるところである。また、新聞報道等では医療事故の報道が増えている。
ついては、次のような点に留意しつつ立入検査を行う。

1.精神病院に対する立入検査について

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にいう精神病院へ
の立入検査にあたっては、精神保健福祉所管部局及び生活保護
所管部局等とも連携を密にして対処する。
 また、立入検査により改善指導を行った精神病院に対して
は、改善状況を逐次把握し適切な対応を行う。

【参考】「精神病院に対する指導監督等の徹底につ
いて」(平成10年3月3日障第113号・健政発
第232号・医薬発176号・社援第491号厚生
省大臣官房障害保健福祉部長・健康政策局長・医薬
安全局長・社会・援護局長連名通知)、「精神病院
に対する指導監督の徹底について」(平成13年2
月28日障精発第12号厚生労働省社会・援護局障
害保健福祉部精神保健福祉課長通知)

2.毒薬等の適正な保管管理について

 毒薬・劇薬・向精神薬等の医薬品及び毒劇物の適正な保管管
理については、近時の薬物等を使用した事件の多発に鑑み、こ
れら毒薬等の保管管理が適正に行われていることを確認すると
ともに、その盗難防止等について一層の周知徹底を図る。

【参考】「毒薬等の適正な保管管理等の徹底につい
て」
(平成13年1月11日医政指発第3号・医薬
監麻発第4号医政局指導課長・医薬局監視指導・麻
薬対策課長連名通知)、「毒薬等の適正な保管管理
等の徹底について」(平成13年4月23日医薬発
第418号医薬局長通知)

3.院内の事故防止について

 医療機関内の事故防止については、平成13年3月26日に
厚生労働省において第3回医療安全対策会議を開催し、本年を
「患者安全推進年」と位置づけ、各関係者との共同行動とし
て、総合的な医療安全対策を推進することとしたので、この趣
旨を踏まえ、医療機関の管理者に対しても更に事故等の発生防
止に万全を期すよう注意を喚起する。
 また、自家発電機を保有している医療機関にあっては、停電
が発生した場合に、自家発電装置が作動しないことのないよ
う、自家発電設備の保守・点検を促す。

【参考】「血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施
に関する指針について」(平成11年6月10日医
薬発第715号医薬安全局長通知)、「医療施設に
おける医療事故防止対策の強化について」(平成1
2年3月31日健政発第408号・医薬発第363
号、健康政策局長・医薬安全局長連名通知)

 

3.その他の検査事項について

1.開設者の確認及び非営利性の確認について

 医療機関の運営に営利性が疑われる第三者が関与することは
医療法の根幹にかかわる重大な問題であることから、このよう
な疑いのある事例に係る通報等があった場合には、厳正に対処
する。

【参考】「医療機関の開設者の確認及び非営利性の
確認について」
(平成5年2月3日総第5号・指第
9号健康政策局総務課長・指導課長連名通知)

2.防火・防災対策について

 医療施設の防火、防災安全対策は患者を入院させている等施
設の特有な事情を考慮し、特に人命尊重の見地から検査を行
う。
 なお、医療機関が自ら被災することを想定して防災マニュア
ルを作成するような場合には保健所はその作成を支援する。

【参考】「医療施設における防火・防災対策要綱の
制定について」(昭和63年2月6日健政発第56
号健康政策局長通知)、「病院防災マニュアル作成
ガイドライン」(平成7年8月29日「阪神・淡路
大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する
研究会」作成)

3.院内感染防止対策について

 院内感染防止対策は、病院の清潔・衛生を保持する上で極め
て重要であることから、医療機関施設全体として取り組み、感
染予防に関する原則的な注意事項を適切に実行するよう周知す
る。
 なお、ベッド、マットレス等の寝具類及び病室内の清潔が維
持されているかについても注意する。

【参考】「医療施設における院内感染の防止につい
て」
(平成3年6月26日指第46号健康政策局指
導課長通知)

4.食中毒対策について

 食中毒発生防止に万全を期すよう注意の喚起を行う。食中毒
の発生を把握した場合には食品保健部門との連携を図り適切に
対処する。
 また、食中毒発生時における患者への給食の確保等について
検討を行うよう指導する。

 【参考】「国立大学付属病院において発生した食
中毒疑いのある事件の対応について」(平成10年
2月26日 衛食第11号厚生省生活衛生局食品保
健課長通知)、「医療機関における食中毒対策につ
いて」(平成11年8月25日衛食第117号・医
薬安第101号・医薬監第90号生活衛生局食品保
健課長・医薬安全局安全対策課長・監視指導課長連
名通知)

5.職員の健康管理について

 関係法令に基づいた定期健康診断を受診していることを確認
する。
 特に、結核については、医療機関や施設における結核集団感
染が増加していることから、「結核院内(施設内)感染予防の
手引きについて」(平成11年10月8日健医感発第89号保
健医療局結核感染症課長)を参考に管理者に対し職員の健康管
理の徹底につき注意を喚起する。

 

4.立入検査後の対応その他

1.立入検査後の対応について

 立入検査の結果、不適合・指導事項を確認したときは、他の
関係部局とも連携をとりつつ、不適合・指導事項、根拠法令及
び不適合・指導理由を文書で速やかに通知するとともに、その
改善の時期、方法等を具体的に記した改善計画書を期限をもっ
て提出させるなど、その改善状況を逐次把握するよう努める。
 また、医療法上適法を欠く等の疑いのある医療機関について
は平成9年6月27日指第72号健康政策局指導課長通知を参
考とされたい。
 なお、特に悪質な事案に対しては、法令に照らし厳正に対処
する。

2.系列病院等について

 系列病院及び同系列と見なしうる医療機関への立入検査につ
いては、各都道府県等において検査日を統一し、同一法人が開
設する医療機関を所管する他の都道府県等と連携を密にして行
うなど厳正に対処する。

3.情報提供について

 今後の行政上の参考に資するため、都道府県知事が医療法上
の処分を行おうとする場合は医政局指導課へ、医療機関におい
て重大な医療関係法規の違反若しくは管理上重大な事故(多数
の人身事故、院内感染の発生、診療用放射線器具等の紛失等)
があった場合又は軽微な事故であっても参考になると判断され
る事案については、その概要を医薬局監視指導・麻薬対策課へ
情報提供していただくようお願いする。戻る