有床診療所立入検査実施要領の問題点(平成13年10月9日/堺市保健所長/岡澤昭子氏文書)
問題点1.
どのような立入検査の必要性が今般発生したのか、説明がない。
解説:医療法第25条第1項では、「 必要があると認めるときは、****立ち入り、その清潔保持の状況、構造設備 若しくは診療録、助産録その他の帳簿書類を検査させることができる。」とあります。今般堺市では、歴史上初めて、すべての有床診療所の立入り検査を行なおうとしていますが、昨年までと異なりどの様な必要性を市長が認めたのか説明してもらいたい。必要性も無いのに、順繰りに立入り検査を行なうのは、市長の職権乱用の疑いがあります。
問題点2.
要領6.実施体制は、医療法第26条(医療監視員)の規定に違反しています。
解説:下記の如く、立入り検査を行なえる人は、医療監視員に限定されています。
ですから、それ以外の市職員が立入検査を行なうことは違法です。今年度の医療監視員の氏名と資格を市長は公表して下さい。
第二六条【医療監視員】
(1)第二十五条第一項に規定する当該官吏又は吏員の職権を行わせるため
に、 国、都道府県及び保健所を設置する市に医療監視員を置く。
(2)医療監視員は、官吏又は都道府県若しくは保健所を設置する市の吏員の
うちから、 厚生大臣又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市の市長がこ
れを命ずる。
(3)前二項に定めるものの外、医療監視員に関し必要な事項は、省令でこれ
を定める。
問題点3.
以下の資料報告の必要性が不明です。
1.(有床診療所立入検査補助資料1)調剤数記入欄
2.(有床診療所立入検査補助資料2)1日平均入院患者数及び1日平均外来患者処方箋数
3.有床診療所勤務職員名簿
4.とりわけ、有床診療所勤務職員名簿に看護助手なども含めていること

問題点4.
立入検査時の提示書類についてで、診療録(カルテ)などを列挙していますが、診療録(カルテ)など、患者の個人情報の開示は、正当な理由がないと、刑法134条違反になります。
解説:刑法第134条では、「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」規定しています。診療録(カルテ)など、患者情報の開示を希望するときは、医療監視員は正当な理由を述べて下さい。さもなければ管理者(医師)に刑法第134条(秘密漏示)の罪を犯すことを強制することになり、よって、医療監視員の言動は刑法第193条(公務員職権濫用の罪)に該当します。
問題点5.
医療法第1条の3【国・地方公共団体の責務】では、「 国及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を 効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない。」と規定していますが、これまで、堺市当局は正看護婦や助産婦の養成学校を運営していません。そのためか、堺市の有床診療所には正看護婦や助産婦の就職は少なく、管理医師は苦労をしています。堺市長の命により、今後も3年おきに、立入検査をされる以上、堺市当局の上記責務を果すために、堺市立正看護学校ならびに助産婦学校を開設すべきではないでしょうか。

方針
1.立入検査受け入れ委員会を、小野会長の基に臨時に結成する。

2.その委員会で、今回の有床診療所立入検査の開始の背景や真の目的や問題点などを鋭意検討し、円滑なる受け入れを実現するため、堺市医師会長を通じて、堺市保健所所長ならびに堺市長に、堺産婦人科医会理事会承認の質問ならびに改善要請書を送付してもらう。

3.また、円滑なる受け入れを実現するため、厚生省の留意事項通知にそった、堺産婦人科医会加入有床診療所の現状改善・意思統一を事前に行なう。

4.来年2月からの、10床以上の有床診療所からの立入検査に、複数の役員が立ち会い、円滑なる立ち入り検査を実現する。

5.堺市立正看護学校ならびに助産婦学校の開設要請を堺市市長に行なう。

6.その立入検査の状況を、会員にすぐ報告し、教訓としてもらう。

7.大阪産婦人科医会にも経過を報告する。

以上。文責荒木常男。2001.10.18/戻る