内痔核根治術における血管融合閉鎖装置Liga Sure の適切な使用法の検討
荒木産婦人科肛門科 荒木常男 2008年3月27日


目的 血管融合閉鎖装置Liga Sure(以下L.S)を用いた内痔核根治術の利点と有害事象の検討に基づき、L.Sの適切な使用法の検討を行いました。
方法 今回の検討対象は2005年7月から2008年3月までの間に、当院で血管融合閉鎖装置L.S (ハンドピースの形はMax)を用いて内痔核根治術を行った34例で、比較対象は1989年3月から1998年12月までの間に当院で本装置を使用しないで内痔核根治術をおこなった176例です。


成績 患者背景、手術成績、有害事象頻度などは以下の通りでした。
有意差の有無についてはt値が2以上で95%の信頼度で有意差ありと判定しました。

今回症例 従前症例 t-test 有意差の有無
人数(人) 34 176
5 33
29 143
満年齢 49.1±13.7 39.5±13.7 3.74 有り
手術時間(分) 7.3±3.6 (155例)
12.2±6.4
-4.42 有り
内痔核一ヶ所当たり手術所要時間(分) 7.3±3.6 (155例)
12.2±6.4
-6.1 有り
麻酔後創部無痛時間(時間) 12.3±10.0 15.5±8.7 -1.74 無し
麻酔後創部21時間以上無痛例数比率 13/34=0.38 79/176=0.45 -0.45 無し
術後肛門浮腫発症例数比率 26/34=0.76 不明
術後創部出血例数比率 1/34=0.03 0
術後肛門狭窄例数比率 3/34=0.09 0
創部治癒日数 46.7±12.9(28例) 不明

考察 1.L.Sの利点は、手術時出血が少なく、手術時間が短縮されることと考えられます。実際、術中出血量は感覚的にも減少しましたし、術者の精神的疲労度、不安度も軽減されました。
2. 麻酔後無痛時間や麻酔後創部21時間以上無痛例数比率の比較では、有意差は有りませんでした。
3. L.S使用の有害事象として、術後創部出血と肛門狭窄がありました。
4. 肛門狭窄例数比率は今回、3例(9%)に見られ、従前の症例では皆無でしたので、重視すべきL.Sの有害事象と考えます。
5. 創部治癒日数は判明している28症例に関して今回46.7日で、従前と印象として同様でした。


結論 以上の成績、考察よりL.Sの適切な使用法として以下の事項が挙げられます。
1.L.Sは静脈瘤タイプの痔核切除には出血予防に効果的と考えられます。
2. L.Sの過度の使用は熱傷、熱傷瘢痕、肛門狭窄を引き起こす危険があり、必要最小限の
利用が求められます。
3.具体的には2ヶ所までの根部使用が安全で、3,4ヶ所の使用は慎重に判断する必要があります。
4. L.Sの根部血管融合閉鎖効果は有効と考えられますので、根部の追加結紮はL.S使用直後の根部の状態をみて判断すべきと考えます。(充分に凝固閉鎖されていれば、追加結紮は不用と考えられます) 戻る