有床診療所立入検査実施要領(平成13年10月9日/堺市保健所長/岡澤昭子氏文書)について公開質問します。
2002.5.3.(憲法記念日)
堺市長 木原敬介殿
堺市保健所所長 福田雅一殿

〒590-0063 大阪府堺市中安井町3-4-10 堺東八千代ビル2階
荒木産婦人科肛門科 院長 荒木常男
TEL 072-223-7959
FAX 072-223-7065

(1)この要領は憲法第31条(法定手続きの保証)に違反していませんか。
憲法第31条(法定手続きの保証)は「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられえない。」と定めています。この要領は市議会の承認を得ていますか。条例ではないようですが、誰の権限で誰が定めたものですか。改めて質問いたします。

(2)この要領の根拠を医療法第25条第1項に求めるのは、無理が有りませんか。
医療法第25条第1項では、「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、 必要があると認めるときは、病院、診療所若しくは助産所の開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、 又は当該職員に、病 院、診療所若しくは助産所に立ち入り、その有する人員若しくは清潔保持の状況、構造設備 若しくは診療録、助産録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」とあります。
今年3月より堺市では、歴史上初めて、すべての有床診療所の立入り検査を行ない始めましたが、昨年までと異なり、どの様な必要性が発生したのでしょうか。説明が有りません。必要性は医療法第25条第1項の立入検査の要件ですので、その必要性の提示、説明無しに、に本立入検査を開始したことは、市長並びに堺保健所所長の職権乱用になりませんか。刑法第193条(公務員職権濫用の罪)に抵触していませんか。また、地方公務員法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)に違反していませんか。

(3)この要領の、有床診療所のみの立入検査の実施は、憲法第14条(法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界)及び地方公務員法第30条(服務の根本基準)「すべての職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」に違反していませんか。
有床診療所のみの立入検査が必要で、無床診療所は必要ない理由を説明して下さい。助産院も必要ない理由を説明して下さい。

(4)「要領6.実施体制」は、医療法第26条(医療監視員)の規定に違反していませんか。
解説:下記の如く、立入り検査を行なえる人は、医療監視員に限定されています。
ですから、それ以外の市職員が立入検査を行なうことは違法です。今年度の医療監視員の氏名と資格を市長は公表して下さい。
第26条【医療監視員】
1.第25条第1項及び第3項に規定する当該職員の職権を行わせるため、厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、厚生労働省、都道府県、保健所を設置する市又は特別区の職員のうちから、医療監視員を命じるものとする。
2.前項に定めるもののほか、医療監視員に関し必要な事項は、厚生労働省令でこれを定める。

(5)以下の資料報告の要請にはいかなる法的根拠があるのですか。
1.(有床診療所立入検査補助資料1)調剤数記入欄
2.(有床診療所立入検査補助資料2)1日平均入院患者数及び1日平均外来患者処方箋数
3.有床診療所勤務職員名簿
4.とりわけ、有床診療所勤務職員名簿に看護助手なども含めていること

(6)理由も無しに、立入検査時の提示書類について、診療録(カルテ)を列挙していますが、この要請は、医師に刑法134条違反の罪を犯させることにはなりませんか。

刑法第134条では、「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」と規定しています。今回どのような理由で、診療録(カルテ)など、患者情報の開示を希望しているのですか。説明して下さい。さもなければ保健所所長は、管理者(医師)に刑法第134条(秘密漏示)の罪を犯すことを強制することにもなり、よって、保健所所長のこの要請は刑法第193条(公務員職権濫用の罪)に該当します。

(7)今年2月からの立入検査が実施され、別紙のような指導文書をある検査対象医療機関に送付しておられますが、各指導事項の根拠となる法律条文および、監督の権限が保健所所長に存在する旨を定めた法律条文の記載が不十分です。
この行為は憲法第31条(法定手続きの保証)は「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられえない。」に違反しませんか。又、刑法第193条(公務員職権濫用の罪)に抵触しませんか。
刑法第193条では、「公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。」と規定しています。

(8)堺市長自身、医療法上の責務を果していないのではないでしょうか。
立入検査では看護婦免許の提示を保健所所長は要請していますが、十分な看護婦の診療所での確保は困難です。これは、診療所だけの努力では解決しません。
さて、医療法第1条の3【国・地方公共団体の責務】では、「 国及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を 効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない。」と規定していますが、現在、堺市立の正看護師や助産婦の養成学校は存在していません
堺市長の命により、今後も3年おきに、立入検査して、看護婦の確保を要請される以上、堺市長自身、上記責務を果すために、堺市立正看護師学校ならびに助産婦学校を開設すべきではないでしょうか。以上。戻る

資料:指導文書
(参考)平成13年度立入検査結果
NO. 口頭指導内容(立入検査)
1. 1階コミュニティールームの感染性廃棄物の容器については、「感染性廃棄物」 であることを明示し、また、感染性廃棄物の飛散や他の廃棄物の誤投入を防止するた めにも、常時フタを閉めておくこと。
2. 医療ガスに関して
@医療ガスの保守点検指針に基づく保守点検を実施すること。「診療の用に供するガス設備の保安管理について」(昭63.7.15健政発第410号)参照。A医療ガス安全 管理委員会を設置し、要綱及びメンバー表を作成すること。B定期的に医療ガス安 全管理委員会を開催し、会議録を作成すること。
3. 省略
4. 職員の健康診断において、視力、聴力、胸部X線、心電図等の項目が未実施であった。労働安全衛生規則に基づき項目に漏れのないよう実施し、個人票に記録してお くこと。また、夜勤従事者については、6か月毎、年2回実施すること。
5. 感染性廃棄物、産業廃棄物の収集・運搬・処分の委託契約書において、添付されている許可証(写し)が有効期限切れとなっていた。有効期限内の許可証(写し)を取り寄せておくこと。
6. マニフェストA票の照合確認欄に日付を記載すること。
7. 地元消防署と連携を密にし、消防計画に基づく避難訓練を年2回実施すること。
8. 《放射線関係》X線装置は使用していないとのことであるが、使用を再開する場合には、電離放射線障害防止規則に基づく健康診断を実施し、X線室の漏洩線量についても、6か月毎に測定すること。また、被曝線量測定器を用意し、放射線作業従事者の被曝線量測定を行うこと。戻る