がん治療における副作用軽減のための漢方薬処方を始めました。2017年 5月1日
すべての処方につき、保険診療です。(一部常備していない薬品もあります。)
1. 目的 がん治療において、漢方薬を併用する目的は、その副作用軽減、及び副作用の軽減のみならずがんと闘う気力や体力を高めることです。
2. 時期 (漢方薬の併用の時期) 抗がん剤などでつらい症状が出てからでなく、抗がん剤治療など開始の時から漢方薬を併用するのが理想的かつ効果的です。
3. 実績 臨床的に効果が確認されている漢方薬として、以下のものが報告されています。

症状 漢方薬
腸閉塞 大建中湯 だいけんちゅうとう
術後のリンパ浮腫 牛車腎気丸 ごしゃじんきがん
胃がん手術後の逆流性食道炎 六君子湯 りっくんしとう
抗がん剤(塩酸イリノテカン)による下痢 半夏瀉心湯 はんげしゃしんとう
抗がん剤(パクリタキセル)による筋肉痛・関節痛 芍薬甘草湯 しゃくやくかんぞうとう
抗がん剤(パクリタキセル)による末梢神経障害 牛車腎気丸 ごしゃじんきがん
進行乳がんの化学療法+ホルモン療法の併用の際の生存率改善 十全大補湯 じゅうぜんだいほとう
肝炎ウイルスによる肝硬変患者における肝細胞がんの予防効果 十全大補湯 じゅうぜんだいほとう
進行胃がんの5-FU経口剤による術後補助化学療法における生存率改善 十全大補湯 じゅうぜんだいほとう
アービタックスなど、上皮成長因子受容体抗体使用時のニキビ 清上防風湯 せいじょうぼうふうとう

日本東洋医学会EBM特別委員会「漢方治療エビデンスレポート」などより。


4. 具体的処方
1)補剤+2)補腎剤+3)駆お血剤(くおけつざい)+4)その他
1)補剤 効能はがん症状や治療による副作用で弱った患者さんの気力・体力を改善することです。
  具体的には、人参(にんじん)と黄耆(おうぎ)を含有する参耆剤の以下の漢方薬です。
  補中益気湯 あるいは十全大補湯 あるいは人参養栄湯 です。
2)補腎剤 効能は、先天の気((両親から受け継いだ生命エネルギーのことで腎気(じんき)と言う))と後天の気(飲食物や大気から取り入れる生命エネルギー)の低下を改善することです。(西洋医学的には説明しにくいものです)具体的には、六味地黄丸 あるいは八味地黄丸(六味地黄丸に桂皮と附子を加えたもの)あるいは牛車腎気丸(八味地黄丸に牛膝ごしつと車前子しゃぜんしとを加えたもの)です。
3)駆お血剤 効能は血流やリンパ流の改善です。具体的には、桂枝茯苓丸、あるいは当帰芍薬散、あるいは桃核承気湯(とうかくじょうきとう)です。戻る..