堺市長回答(2002.6.10)への疑問
荒木産婦人科肛門科/院長荒木常男
2002.6.11.
2002年6月11日(火)午後1時より2時まで、私の診療所で医務係長の河盛浩司氏より回答を聞き、若干の質疑応答を行ないました。回答文を下に掲載しましたが、やはり堺保健所所長の作成した、実施要項並びに実際の立ち入検査行為には、私が指摘した憲法上、法律上の違反内容が存在すると考えます。以下、項目に沿って反論します。

(1)この要領は憲法第31条(法定手続きの保証)に違反していませんか。
回答は「「保健所長に権限を委任する規則」に基づき保健所長が定めたものであり、手続的な不備はありません。」と述べているが、やはり条例も無く、違憲と考えます。

(2)この要領の根拠を医療法第25条第1項に求めるのは、無理が有りませんか。
回答は、「保健所を設置する市の市長(堺市においては保健所長)は、「必要があると認めるときは」、医療法第25条第1項の規定に定められている権限を行使する裁量権を有しています。」と述べていますが、その法律解釈は間違っています。
裁量権とは、「自分の意見でとりさばき、処置する権利」ですが、そんな独裁者的権限は市長にも保健所所長にも憲法上も法律上も与えられていません。あくまで、市民や、医療機関が納得できる理由がなければ、立入検査は行なえません。

(3)この要領の、有床診療所のみの立入検査の実施は、憲法第14条(法の下の平等、貴族制度の否認、栄典の限界)及び地方公務員法第30条(服務の根本基準)「すべての職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」に違反していませんか。
有床診療所のみの立入検査が必要で、無床診療所は必要ない理由を説明して下さい。助産院も必要ない理由を説明して下さい。
回答は「無床診療所及び助産所への立入検査については、必要ないとは考えていませんが、堺市内の無床診療所が約千ヶ所あること、また、人員体制の問題もあり、現在実施に至っていません。今後の課題と考えています。」と述べていますが、このような態度、行為が憲法第14条違反、地方公務員法第30条に違反と私が指摘しているのに、無視しています。

(4)「要領6.実施体制」は、医療法第26条(医療監視員)の規定に違反していませんか。回答は色々弁解していますが、規定違反の記述であることに変わりはありません。

(5)以下の資料報告の要請にはいかなる法的根拠があるのですか。
回答は結局、法的根拠はないと述べているわけで、法的根拠の無い検査は違法行為の疑いがあります。(その検査は止めてもらいたいものです。)

(6)理由も無しに、立入検査時の提示書類について、診療録(カルテ)を列挙していますが、この要請は、医師に刑法134条違反の罪を犯させることにはなりませんか。
回答は全然回答になっていません。私たち医師は医師の診療上の守秘義務について、刑法134条に記載があるからだけでなく、医師と患者の間の倫理上の要請として、肝に命じる必要があります。ヒポクラテスの宣誓にも「業務上より見聞し、または人の私生活に関して知り得たる秘密は、厳守して口外せざるべし。」とあります。

(7)今年2月からの立入検査が実施され、別紙のような指導文書をある検査対象医療機関に送付しておられますが、各指導事項の根拠となる法律条文および、監督の権限が保健所所長に存在する旨を定めた法律条文の記載が不十分です。
回答は「ほとんどの項目については、法的根拠を持ちますが、堺市保健所としましては、院内感染防止や医療事故防止対策などの項目のように法的根拠の有無にかかわらず、適正な医療の確保に資すると考えられる事項については、医療機関自身による自主的な管理を支援するという趣旨からも、指導を行っていきたいと考えています。」と今後も違法行為の指導を行なうと宣言していることは許せません。既に監督の権限が保健所所長に存在しない指導行為を行なっていますから、居直っているわけです。(たとえば、口頭指導内容1.の「感染性廃棄物の容器については、***常時フタを閉めておくこと。」など、どの法律にこんなことが書いてあるのか。また、4.の職員健診のことは労働基準監督官の管轄です。又、7.の消防計画は消防署の管轄です。他、「毒薬であるウブレチド錠の受け渡し記録を作成すること」との指導を行なっていますが、薬事法にはこのような規定はありません。又、毒薬等管理に関する検査行為は薬事法69条に基づく立入検査であり、今回堺市保健所所長は薬事法第69条でなく医療法第25条に基ずく立入検査を行なう通告したにもかかわらず、薬事法上の検査指導を行なうという、対象外検査指導を行なっており、職権乱用の疑いがもたれます。)

(8)堺市長自身、医療法上の責務を果していないのではないでしょうか。
回答では、「堺市では、堺市医師会立の堺看護専門学校に対し、本市規則及び要綱に基づき運営補助金を支出し、本市域における医療従事者の確保に一定の責務を果たしているものと考えています。」と述べていますが、堺市民の一人としてこのような市民の要請に全く応えて来なかった市政を恥ずかしく思います。堺医師会立看護学校は准看課程とその後の進学過程とからなり、講師はほとんど医師会員で、堺市医師会は毎年約1千万円を支出しています。堺市の税金投入は数千万円です。立入検査とは別に今後も堺市立の看護学校、助産婦学校の設立を運動していきたいと思います。戻る