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■ 2002年度医療機関への立入検査の留意事項

2002年度に実施される医療機関への立入検査にあたっての留意事項について、厚生労働省の医薬局長、医政局長連名による下記の通知が、各都道府県知事などに対し10月9日付で出されました。(医薬発第1009003号、医政発第1009003号)今回は特に医療法施行規則等の改正に則った内容が含まれています。

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平成14年度の医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について標記については、医療法令に基づき、「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」(平成13年6月14日医薬発第637号・医政発第638号医薬局長・医政局長連名通知)を参考に実施されていることと思慮するが、本年度における今後の実施に当たっての留意事項を下記のとおりまとめたので参考とされたい。

なお、医療機関の立入検査を実施するに当たっては、他に医療機関に対し立入検査を行う担当部局等があれぱ、当該部局等とも連携し、合同実施することなどもご配意願いたい。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4の規定による技術的な助言であることを申し添える。

I.医療法施行規則等の改正に伴う事項について

平成14年度においては、医療法施行規則の改正により、病院又は患者を入院させるための施設を有する診療所の管理者は、安全管理のための体制を確保しなければならないとされたところである。また、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項については、制限が大幅に緩和されたところである。さらに、診療放射線の防護については、国際基準との整合を図るため、エックス線装置に係る防護基準の改正等を行ったところである。立入検査の実施に当たっては、以上のような制度改正内容を踏まえ、次のような点に留意しつつ検査を行う。

1 診療用放射線の管理について

 平成14年3月27日に公布された「医療法施行規則の一部を改正する省令」(平
成14年厚生労働省令第44号)により、診療用放射線の管理に関する事項として
医療法施行規則第30条第2項第7号において、従来、被照射体の周囲には「適
当な装置を備えること」としていたが、国際放射線防護委員会(ICRP)Pub.33
勧告との整合性を図るため「適切な手段を講じること」との表現に改める等の
改正を行ったところである。また、記録、帳簿については診療録等と同様、電
子媒体による保存も認めたので留意されたい。なお、事故が発生した時の通報
基準・体制をあらかじめ定めておくよう周知徹底を図る。

【参考】
「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(平成14年3月27目
医薬発第0302701号医薬局長通知)
「記録、帳簿の電子媒体による保存について」(平成14年8月13日医薬発第
0813001号医薬局長通知)

「診療用放射線照射器具の安全管理の徹底について」(平成14年9月12日医薬安発第0912001号・医薬監発第0912001号医薬局安全対策課長・監視指導・麻 薬 対策課長連名通知)

2 医療機関に関する広告について

 平成14年3月29日に告示された「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診
療所に関して広告し得る事項」(厚生労働省告示第158号)により、学会により
認定された専門医資格等、新たに医療機関が広告できる事項が拡大されたとこ
ろであるが、医療法第69条及ぴ同告示に定める事項以外の事頂を広告している
ものに対しては、厳正に対処する。
 なお、雑誌等の広告媒体において、違法な広告を行っているものについても
厳正に対処する。

3 安全管理のための体制の確保について

 平成14年8月30日に公布された「医療法施行規則の一部を改正する省令」
(平成14年厚生労働省令第111号)により、病院又は患者を入院させるための施
設を有する診療所の管理者は、平成14年10月1日から安全管理のための体制を確
保しなければならないこととされたことから、次に掲げる事項について、「医
療法施行規則の一部を改正する省令の一部の施行について」(平成14年8月30
日医政発第0830001号医政局長通知)に基づき指導する。

 (1)医療に係る安全管理のための指針を整備すること。
 (2)医療に係る安全管理のための委員会を開催すること。
 (3)医療に係る安全管理のための職員研修を実施すること。
 (4)医療機関内における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした
改善のための方策を講ずること。

  II.最近の医療機関における享件等に関違する事項について

 最近、医療機関におけるセラチア等による院内感染、O-157による集団食中
毒、無資格者による医療行為、毒薬等の医薬品の盗難、紛失、不正使用などの
事件が起こっている。また、精神病院における患者に対する違法な身体拘束な
どの事例も依然として発生している。ついては、次のような点に留意しつつ立
入検査を行う。

  1 院内感染防止対策について

 院内感染防止対策は、病院の清潔・衛生を保持することが極めて重要である
ことから、医療機関が施設全体として取り組み、感染予防に関する原則的な注
意事項を適切に実行するよう周知する。
 なお、ベッド、マットレス等の寝具類及び病室内の清潔が維持されているか
についても注意する。

【参考】
「医療施設における院内感染の防止について」(平成3年6月26日指第46号健
康政策局指導課長通知) 
「セラチアによる院内感染防止対策の徹底について」(平成14年7月19日医薬
安発第0719001号医薬局安全対策課長通知)

2 食中毒対策について

 食中毒発生防止に万全を期すよう注意の喚起を行う。食中毒の発生を把握し
た場合には食品保健部門との連携を図り適切に対処する。
 また、食中毒発生時における患者への給食の確保等について検討を行うよう
指導する。

【参考】
「国立大学付属病院において発生した食中毒疑いのある事件の対応について」
(平成10年2月26日衛食発第11号生活衛生局食品保健課長通知)
「医療機関における食中毒対策について」(平成11年8月25日衛食発第117号・
医薬安発第101号・医薬監発第90号生活衛生局食品保健課長・医薬安全局安全対
策課長・監視指導課長連名通知)

3 無資格者による医療行為の防止について

 無資格者による医療行為の防止については、医療機関に対し採用時における
免許証原本の確認の励行を指導するとともに、当該行為に係る通報等があった
場合は直ちに検査を実施し、無資格者による医療行為が行われていることが明
らかにななった事例については、刑事訴訟法第239条の規定により告発するなど
厳正に対処する。
 また、助産師免許を有していない者が助産業務に従事している等の事例があ
ることから、無資格者による医療行為及び助産免許を有しない者による助産業
務が行われることのないよう、上記により対処する。

【参考】
「無資格者による医業及び歯科医業の防止について」(昭和47年1月19日医発
第76号医務局長通知)  

「日母産婦人科看護研修学院の研修修了者について」(平成13年3月30日医政
発第375号医政局長通知)

4 毒薬等の適正な保管管理について

 毒薬・劇薬・向精神薬等の医薬品及び毒劇物の適正な保管管理については、
近時の薬物等を使用した事件の発生に艦み、これら毒薬等の保管管理が適正に
行われていることを確認するとともに、その盗難防止等について一層の周知徹
底を図る。

【参考】
「毒薬等の適正な保管管理等の徹底について」(平成13年1月11日医政指発第
3号・医薬監麻発第4号医政局指導課長・医薬局監視指導・麻薬対策課長連名
通知)
「毒薬等の適正な保管管理等の徹底について」(平成13年4月23日医薬発第418
号医薬局長通知) 

5 精神病院に対する立入検査について

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にいう精神病院への立入検査にあ
たっては、精神保健福祉所管部局及び生活保護所管部局等とも連携を密にして
対処する。
 また、立入検査により改善指導を行った精神病院に対しては、改善状況を逐
次把握し適切な対応を行う。

【参考】
「精神病院に対する指導監督等の徹底について」(平成10年3月3日障発第113
号・健政発第232号・医薬発176号・社援発第491号大臣官房障害保健福祉部長・
健康政策局長・医薬安全局長・社会・援護局長連名通知) 
「精神病院に対する指導監督の徹底について」(平成13年2月28日障精発第12
号社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長通知)

  III 立入検査後の対応その他

1 立入検査後の対応について

 立入検査の結果、不適合・指導事項を確認したときは、他の関係部局とも連
携をとりつつ、不適合・指導事項、根拠法令及び不適合・指導理由を文書で速
やかに通知するとともに、その改善の時期、方法等を具体的に記した改善計画
書を期限をもって提出させるなど、その改善状況を逐次把握するよう努める。
 また、医療法上適法を欠く等の疑いのある医療機関については平成9年6月
27日指第72号健康政策局指導課長通知を参考とされたい。
 なお、特に悪質な事案に対しては、法令に照らし厳正に対処する。

2 系列病院等について

 系列病院及び同系列と見なしうる医療機関への立入検査については、各都道
府県等において検査日を統一し、同一法人が開設する医療機関を所管する他の
都道府県等と連携を密にして行うなど厳正に対処する。

3 情報提供について

 医療機関における医療の事故の報道が相次いでいるが、今後の行政の参考に
するため、医療機関において重大な医療関係法規の違反若しくは管理上重大な
事故(多数の人身事故、院内感染の発生、診療用放射線器具等の紛失等)があ
った場合又は軽微な事故であっても参考になると判断される事案については、
その概要を医薬局監視指導・麻薬対策裸へ情報提供していただくようお願いす
る。また、併せて都道府県知事が医療法上の処分を行おうとする場合は医政局
指導課へ連絡していただくようお願いする。(以上)戻る