問題無い
 
 

第0話 シンジ 紹介
 
 

「ミサト、これ読んでおいてくれる」

「ん!何〜これ」

「3日後にサードチルドレンがこちらに来る事になったでしょ、その彼のプロフィールよ」
 

 ここは第三新東京市にある特務機関ネルフ。

 その技術部長である赤木リツコ博士の研究室である。

 そこに三十・・・

「「何か言った?!」」
 

 失礼、妙齢の美女が2人。

 1人はこの部屋の主、赤木リツコ博士。

 その赤木博士に 「ミサト」 と呼ばれたのは、ネルフの作戦部長の葛城ミサト一尉である。
 
 

 ミサトはリツコから封筒を受け取ると中身を確認するなり。

「へ〜どれどれ。おおっ!!なっかなかの美少年じゃない。」

 多少(いやかなり)ショタのケがあるミサトは思わず本音を漏らしてしまう。

「ミサト! 誰が写真を見ろと言ったの、私は“資料を読め”と言ったのよ!」

 ミサトと十年来の付き合いがあるリツコはすかさず反応する。

 どうやらこちらもその方面に対しては、ミサトと五十歩百歩のようである。

 特にこのシンジに対しては赤木一族と碇(というよりは六分儀)一族、

 互いのDNAが呼び合うせいか、リツコ自身は意識していなかったが、

 口調はかなりキツめのものとなっていた。
 

『冗談じゃないわ、せっかくこんなかわいい子がやってくるっていうのに、
 いいかげんあのヒゲオヤヂにも飽きてきたし、
 むざむざミサトなんかに横取りされてたまるもんですか』

 一方、ミサトから見てもリツコのことはわかり過ぎるほどわかっているので、

『な〜によリツコったらムキになっちゃって、
 あなたはもう大台に乗ったんだから若い子のことは私にまかせて、
 あなたはおとなしく実験してるか、ヒゲオヤヂの相手でもしてればいいのよ』

 とは思ってもそれを口にしたらサードインパクトを自分たちの手で引き起こすことは必至なので、

 とりあえずごまかしの言葉を口にする。
 

「わ、わかってるわよ。いや〜ねえ冗談じゃない」

 説得力無い事この上ないが、とりあえず

『私はサードチルドレンのプロフィールを真面目に読んでいます』

 というポーズを取るため資料を机の上に広げるとそれを眺め、いや眺め始めるふりをした。
 
 

        イカリ シンジ
 Third.C: 碇  シンジ

 西暦2001年6月6日 生誕

 父: 碇 ゲンドウ
 

「この父: 碇 ゲンドウてのは・・・・」

「もしかしなくても司令のことよ」

「ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・」
 

 書類から顔を上げるミサトの表情には、『嫌〜カンベンしてよ〜』 というのが露骨に現れていた。

(一応作戦部長という要職にあるんだから、少しはポーカーフェイスを覚えろよ)

「どうしたの続きを読めば」

 したり顔でリツコが促す。

「わ、わかったわよ、読むわよ、読みゃ〜いいんでしょ」

 ミサトは半ばやけ気味に答えると続きに目を走らせた。
 

 母: 碇 ユイ

 西暦2005年9月:母 碇 ユイ 死去、直後施設に預けられる

 西暦2008年4月:第二新東京市立泉谷小学校入学

 西暦2014年3月:同小学校卒業、同時に施設を出て1人暮らしを始める

   同    年4月:第二新東京市立第四中学校入学

 性格:物静かで中学2年生にしては、落ち着き過ぎる程落ち着いている。

     そのためか基本的には孤独を好む傾向があり、友達と呼べる存在は皆無に等しい。

     しかしカリスマ性が異常に高く、彼の元には自然とスタッフが集結してくるようである。

     事実小学校5年生の時には児童会副会長、6年生時は会長、

     現在は第四中学校生徒会副会長を努めている。
 

「へ〜見かけによらず、なかなかやり手みたいじゃない」

「カエルの子はカエルってとこかしら」

 そうリツコが言い終えると、お互いどちらからともなく相手のことをチラチラと観察しあう。

 さしずめカエルを目の前にした二匹の妖蛇といったところか。
 

「さてと、それじゃリツコは忙しそうだし、
 私もシンジ君のプロフィールをもう少し詳しく確認しなければならないから、そろそろお暇するわ」

 なかなか殊勝な事を言うようだがミサトの本心は、

『早く1人になってシンジ君のことをじっくり眺めたいわ〜 ラララ〜』

 となっていることはリツコにバレバレであった。
 

 リツコはいまいましげにミサトを睨み付ける。

 ミサトの言ったようにお気に入りの猫の肉球をプニプニしたい(あれ?何か違うな)

 程自分は忙しいのに対し、ミサトの作戦部は給料泥棒と言われても

 まっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったく反論できない程ヒマなのである。

『自分はこれからまた仕事に戻らなくてはならないのに、コイツは1人、
 部屋でシンジ君の写真を見ながらニヤニヤするのか』

 頬をヒクつかせながらミサトを退治する言葉をリツコが発しようした刹那、

 それを制する様にミサトがまた口を開いた。
 

「ところでシンジ君て、ここに来るのは初めてよね」

「え!? 多分そうだと思うけど」

 虚を突かれた形となったリツコは瞬間思考が停止し、

 ミサトが何を言おうとしているかに思い至らなかった。
 

「ふ〜ん。そうね〜やっぱ大事なサードチルドレンが道に迷うと大変だし、
 彼がこっちに来ればパイロットとして当然作戦部の所属になるわけだから、
 直属の上司になるおネ〜さんが迎えに行ってあげましょう。ヨシ!そうしよう」

「え!! チョッッ ミサト」

「じゃ〜ね〜リツコ」

「ミサト、チョット待ちなさい」
 

 シュッ
 

 しかしミサトはリツコに捕まる前にさっさと部屋を出ていってしまった。

 残されたリツコは地団太踏んで悔しがったが後の祭りである。

「ミサト〜覚えておきなさいよ フフ フフフ フフフフフ
 フフフフフフフ フフフフフフフフフ・・・・・・・・・・・・・・・」

 無論誰が聞いているわけでもないのだが、

 部屋にはリツコのいかにもマッドらしい不気味な笑い声がいつまでもいつまでも響いていた。
 
 
 
 
 

 後にネルフにおいて 「ショタ襲来の前の静けさ」 と言われるようになる3日間はこうして幕を開け、

 直属のオペレーター3人衆をはじめ、

 ネルフ職員のほとんどが固唾を飲んでシンジの襲来を待ち受け、

 襲来後に発生するであろうサラマンダとヒドラの対決に恐怖を覚えるのであった。
 
 

 しかしながらこの二匹の妖蛇の対決は大方の予想に反し、実際に発生することは無かった。

 なぜならやってきたシンジの事をリツコが最上級に気に入ったのに対し、

 ミサトは逆に嫌悪し逃亡寸前にまでなったためである。

 周囲のものは皆一様に安堵し、我が身の安全が確保されたことを喜んだ。
 
 

 その方面に関しては非常に良く似ているこの二匹、

 いや2人の好みが何故こうもはっきりと分かれてしまったのであろうか?

 思い出していただきたいシンジ君のプロフィールの性格の項目を
 
 

 物静かで中学2年生にしては、落ち着き過ぎる程落ち着いている

 そのためか基本的には孤独を好む傾向があり、
 友達と呼べる存在は皆無に等しい。

 しかしカリスマ性が異常に高く
 彼の元には自然とスタッフが集結してくるようである。
 

・・・・・・誰かを思い出さないだろうか!・・・・・・
 

 回りくどいことをくどくど書くより、こう書けばネルフの職員ならば誰もが、

 そうミサトもシンジの性格をはっきりと把握できた筈なのである。
 

 性格:父親とそっくり、あるいわそれ以上に強烈
 

 そしてネルフ、いや人類にとって種としての命運の分岐点となる3日後、
 
 
 
 
 

 天界より遣わされし3番目の使者が、第三新東京市にその威容を顕わさんとするのとほぼ同時刻。

 魔界より遣わされし3人目の少年が、第三新東京市新箱根湯本駅のプラットフォームに、

 少年にとっては小さな、しかし人類にとってはとてつもなく大きな一歩を踏み出そうとしていた。
 
 

                                                         
 
 

 業師の転入のご挨拶

 え〜Luna Bluのファンのみなさん。初めまして。

業師」(わざし) というヒゲオヤジでございます。

 番外編も含めていきなり十数話をドカンと掲載することになったこの 「問題無い」 ですが、

 その経緯と言いますか、状況が全くわからないLuna Bluのファンのみなさんのために、

 その中味を少しお話しさせて頂きたいと思います。
 

 元々このSSは、ここLuna Bluに 「Je te veux」 を初めとして、

 様々な素敵なSSを投稿なされている、map_sさんが主催なされている、

 Esse−Esseのページに掲載させて頂いていたものでした。

 ところが大変残念なことに、このEsse−Esseは2000年の9月17日をもって、

 閉鎖されることになってしまい、行き場を失って路頭に迷う筈だった私を気遣ってくれた、

 map_sさんと、そんな私に温かく手を差し伸べてくれたなおさんのおかげで、

 こうして転入させて貰うことになったのでした。

 map_sさんと、なおさんには、本当感謝・感謝の一言です。
 

 うちのシンジ君はちょっとアクが強くてアレなんですが、もし気に入って貰えましたらたった一言、

「面白かった」 だけでも結構ですので、感想メールを頂けたら大変有りがたく思います。

(お願いします。ちょうだ〜い (^_^;) =本音)

 心機一転、これから一生懸命頑張りますのでよろしくお願い致します。m(_ _)m
 

 後、Esse−Esseは9月17日迄は継続しておりますので、

 map_sさんの書かれた素晴らしい作品の数々を是非堪能してみてください。

 それでは次回予告を、業師でした。
 

                                                         
 
 

 第三新東京市へとやって来たシンジ。ところが迎えに行く筈のミサトはその事をすっかり忘れていた。

 悠々と進行を続ける3番目の使者に対し、戦自は、ネルフは、いったいどのように対処するつもりなのか?

 そしてゲンドウは、戦自のN2地雷の強力さにすっかり己を見失う。

 次回 問題無い  第1話 シンジ 襲来

 この次も サービス! サービスう!

(気色悪いからやめろ)
 
 
 


 業師さん、いらっしゃませ。(^-^)/
 というわけで本日、業師さんお引越しと相成りました。
 『Esse-Esse』の閉鎖はとても残念ですが、これも何かの縁。
 これから、よろしくお願いします。m(_ _)m
 
 さて、問題の『問題無い』ですが、(笑)『Esse-Esse』に行かれた方ならばご存知の方も多いかもしれません。
 これははまります。(笑)

 とにかく、本作『問題無い』のシンジ君は色々な意味で最強です。
 ぜひとも、最後まで読んでいってくださいね。
 
 
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