3日,3ヶ月,3年。

 ”3”という数字は人間にとって我慢の効く1つの目安だと昔から言われている。
 
 

『3日坊主』 という諺にもあるように、人が何かしら物事に取り組んだ時、あるいは行動を起こした後、

 大体上記の期間が経過したした時、人は必ず! と言って良い程、”飽き”を感じるそうである。
 
 

 それは人が生きていく上で避けて通る事の出来ない、

 殊に男女間においては、最悪の場合、破局へと至る事もある魔の期間なのである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3年目の・・!?






第1話
 
 

「あ〜〜あ、今日も退屈だったわね! 何かアッと驚くような・・・、
 そうね、出来れば弱っちい使徒でも攻めてこないかしら」

 第三新東京市立第一高等学校の放課後の2年A組。

 見るからに艶やかなブロンドヘアに、サファイアを思わせる澄んだ碧眼。

 黙って座っていれば数百年の後の世にも残る名工の手によるフランス人形、

 とも思えるような素晴しい容姿を持つ少女の口から、何とも物騒な言葉が漏れ出てくる。
 

「相変わらずねアスカは、私は、今のゆったりとした時間がずうっと続いた方が良いと思うけど」

 それに対して、こちらは光をあでやかに反射するプラチナヘアに、ルビーを思わせる情熱の紅眼。

 連綿と続く伝統の技量(わざ)を受け継いだ生粋の職人の手による博多人形、

 とでも言うべき、やはり素晴しき容姿を保つ少女が静かに答える。

 今更説明は不要かも知れないが、前述のフランス人形のような少女が、

”元”セカンドチルドレン、総流・アスカ・ラングレーであり、

 後述の博多人形のような少女が、

”元”ファーストチルドレン、綾波レイである。
 

 かつてはエヴァンゲリオンのパイロットとして対使徒戦に日夜明け暮れていた彼女達であったが、

 その努力の甲斐が実って見事に全ての使徒を退ける事に成功してからはや3年。

 今では平和な、いわゆる普通の女子高生として穏やかな日々を送っている。

 そうした中で、3年前は何かとレイに食ってかかる事の多かったアスカであったが、

 共に死線を潜り抜けた仲間意識と、そして何より、

”チルドレン”としての競争が必要なくなった事で、それ迄の様々なわだかまりが溶け、

 またレイの方では特段アスカに対してライバル意識を抱いていたわけでもないので、

 早晩この2人は歩み寄る事になり、いつしか第1中、そして今では第一高の名華二輪として、

 近隣の同年代の少年少女達の間では、その名を知らない者が居ない程の存在となっているのだ。

 勿論これだけの美少女! しかも2人を目の前にすれば、

 人生の中で最もエネルギーを持て余している年頃の少年達が黙っている訳がない。

 さすがに周囲の人物の殆どが知り合いだった中学時代はそれ程でもなかったのだが、

 高校に進学し、彼女達と初めて顔を会わせる者が出現した途端、その者らを中心に、

 まずはレイ、駄目だったら次はアスカ、あるいはその逆、と言ったように、

 入れ替わり立ち替わり2人に対して猛烈なアタックが繰り返される事になるのであるが、

 残念ながらこれ迄誰一人として、色よい返事を貰えた者は居ないのである。

 とは言うものの、現在もそれを継続しているのはレイ1人であり、

 もう1人のアスカの方については・・・・・
 
 

「アスカ! ちょっと聞きたい事があるんだけど」

「あ、シンジ」

「碇君」

 大抵の少年達が彼女達に対して口を利く時、緊張感から多少上ずった口調になるのに対して、

 ごく普通の、落ち着いた口調で語りかけたこの少年。

 彼こそがアスカやレイと同様にエヴァのパイロットを務めていた、

”元”サードチルドレン、碇シンジ君である。

 中学時代はどちらかというと背は低い部類に入る彼であったが、

 高校に入学したあたりから、ようやく父親の遺伝子の1部の分泌が始まったようで、

 急激に背が伸び始め、今では170の後半に迄その数値を伸ばして来ている。

 現在もその伸びには全く陰りが見られず、3年生の時には180、

 下手をしたら卒業時には190を突破しているのではないか、そう思える程の勢いなのである。

 また、彼にとっては幸いな事に、マスクの方は母親の血が色濃く現れたおかげで、

 女性的なすっきりとした顔立ちとなっている。

 今はまだ平均をやや上回る程度だが、将来的にかなりの長身となる事が見込まれ、

 しかも甘いマスクを備えている上に性格も○。

 となれば、年頃の少女達がこんな上玉に対して、ただ黙って指を咥えて見ている筈がない。

 アスカやレイの場合と同じように、と言うか、はたまた逆に、と言うべきか、

 とにかくシンジ君に対して様々なアプローチを試みたのであるが、

 やはり彼の場合も、甘き言葉を返して貰う事が出来た少女は1人として居なかったのだ。

 そのうち彼ら3人が元々チルドレン同士として結構仲が良く、しかも3年前から現在に至る迄、

 シンジとアスカがずうっと同居を続けてきたという事が知られていくに従って、

 2人がカップルであるという雰囲気が醸成されていき、

 今では、この2人に対してアタックをかける者の姿をめっきり見かける事が無くなってしまっている。
 

「洞木さんを探してるんだけど、心当たりないかな?」

「ヒカリの事だから多分職員室じゃないの? まあ、100%確実って訳じゃないけど」

「私もそう思う」

「そうか、じゃちょっと行ってみるよ」

 そう言い残すとシンジ君はあっさりとその場を去っていってしまい、

 跡に残される形になったアスカちゃんは、あっけにとられながらも、

 何やらシンジ君の様子がいつもとは違うような感じを受け、こっそりとその後をつける事にする。

「レイ、アタシちょっと用事を思い出したから、アンタ先に帰っててよ」

「碇君の事、気になるのね」

「そうよ、悪い」

「ううん。私も気になるから、つきあうわ」

 内心では1人になりたかったアスカだったが、無下に断る理由もないので、

 とりあえずはレイの同行を認める事にし、去っていったシンジの姿を探し始めるのだが、

 生憎職員室へと向かうルートの途中では、お目当ての少年の姿を捕捉する事は出来なかった。

 いったいシンジはどこへ行ってしまったのか?

 ヒカリを見つける事が出来ず、あちこち探し回っているという事も考えられるが、

 あまり余計な所をうろうろするような事がないヒカリの行動パターンを考えた場合、

 それよりは、シンジの言っていた用事とかを済ますために、

 2人してどこかに行っていると考えた方が無難であろう。

 これ迄3年間に渡るつきあいからそう判断したアスカは、

 一刻も早くシンジの居場所を探り当てるべく、レイと2手に別れて捜索を実施する事にした。

 何故かはわからない。が、胸騒ぎがしてならない。

 時間が経つにつれ益々膨れ上がる不安感に囚われるアスカであったが、ようやくとある教室に人の気配を感じ、

 ちょっとだけ開けた戸の隙間にシンジとヒカリの姿を見つけ、ひとまずは安堵の溜息をつく。

『いったい、こんなとこで何してんのかしら?』

 疑問に思うアスカの耳に、途中からではあったが、シンジの話す真剣な言葉が聞こえてきた。
 

「・・・・・僕とつきあってほしいんだ」
 
 

第2話

 


管理人のコメント
 業師さんから『Luna Blu』40万ヒット記念&アスカちゃん生誕記念に頂いてしまいました
 わ〜い。ありがとうございます♪
 
 作品の方は……な、なんと。
 このままではLHSの展開ですか!?
 アスカさん生誕記念なのに……
 いや、きっとこのままでは終わらないでしょう。<多分(ぉ
 と言うことで、次回を待ちましょう!
 
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