『第三使徒迎撃戦に敗退、身体に多大な損傷を被る。
頭部から列挙する。
側頭部裂傷、眼球破裂、頸椎挫傷・・・
追記:サードチルドレンと接触。』
『・・・修復用の装備に補充の要有り。止血帯、消毒液、モルヒネ。
交換した眼球に痛み有り。行動に支障をきたすので、本日の身体洗浄を取りやめる。
朝食としてブドウ糖溶液の経口摂取・・・』
『・・・昼食にレーション・Dを摂る。
コンビニエンス・ストアで購入した食品に、規定以上の塩分を認む。水洗処理の後、夕食として摂取。
入浴による身体洗浄を終了次第、予定に従い休眠に入る。
個人的接触は、チルドレン、及び葛城一尉。』
『行動食の補給を申請する。
内訳:レーションA×12、レーションB×12、レーションC×48、レーションD×3。
レーションCは暖めると美味しい事を発見。
修復用装備に関して、継続補給の中断を申請・・・』
『眼球の違和感は消滅した。
モルヒネの中毒も脱した。
培養槽に於ける身体管理の経過は順調である。
朝食はレーションC、昼食は司令と共にざるそばを摂取。夕食は・・・』
『レイ:弐号体』と書かれた日報を抱きしめながら、わたしは食事を続けた。
今日はネルフの野戦訓練。
全てが終わり、ネルフを除隊し・・・。
予備役となった私たちが、半年に一度だけ参加を義務づけられている軍事演習。
「ほんと、温めたら意外にイケルわね、レイ。」
「うん。綾波、教えてくれてありがとう。これなら美味しく食べられるよ。」
ゴシック体で大きく『C』とプリントされた缶詰から、立ち上る湯気。
スプーンで緑褐色のペーストを掬い、口に運ぶ。
「そう? 良かったわね。」
笑顔で返事をしながら、わたしは一粒、雫を落とす。
「ほんとうに・・・おいしいわ。」
わたしの舌で、彼女が笑った。
なおのコメント
二人目のものを継承したのは、記憶だけという三人目のレイ。
その葛藤を、見事に表現した前作。
本作は、その後日談。
二人目の存在を自分の中に意識しながらも、同居を心地良く思っている、ということが感じられました。
いつもながら、鋭い文体とアイデアに脱帽です。(^-^)
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