生まれた意味なんて、考えたコトは無かったわ。
ずぅっと独りぼっちで、ただ、漂っていただけだったの。
・・・でも。
私、判った。
あの人に出逢う・・・ただ、それだけが全て。
その為だけに、私は存在するの。
細く引き締まった目。
まるで縫い合わせたかのように、寡黙な口許。
・・・私は囚人なの。
罪の名は、恋。
私を閉じこめるのは、鋭く世界を見据える彼の瞳・・・
ふふっ、おかしいよね?
見えない鎖に囚われた私だけど、心は羽根のように浮き立ってる。
うん、まるで・・・宙を跳んでいるみたい。
このまま空高く羽ばたいて・・・
輪を描いて踊る天使達さえ見下ろせるほど、高く、高く・・・
そして、遙かな空の彼方から、あの人の許に舞い降りていくの。
うふふ、あの人・・・紫色の巨人さん。
私を受け止めてくれるかしら・・・
第十使徒、迎撃戦。
片膝を付き、しなやかな鋼の如く上体をかがめ、スタートの瞬間に備える三体のエヴァ。
流れる風は熱く乾き、発令所の主モニターを見つめる人々の間では、引きちぎられる寸前のワイヤーが張り巡らされたような緊張が漂っていた。
画面に映るのは、エヴァンゲリオン・初号機。
聖も邪も分け隔てなく超越した凶暴なエネルギーが、その解放の一瞬に備え、今は静けさを纏っている。
「動いてよっ、ねぇっ! そっちは方向が逆なんだってばっ!! 」
必死に呼びかける少年の声も虚しく、落下予想地点に背を向け駆け出そうとしているエヴァ。
・・・ぼったん!
初号機の顎先から一粒、巨大な汗の玉がアスファルトに叩きつけられたのだが・・・
「先生・・・後は頼みます・・・」
「待てっ、碇! 自分だけ逃げるのかっ!! 」
どーやって生き延びようかと必死に考えるネルフのスタッフが、それに気付く事は無かった。