「アスカ、いる?」
シンジは和室へと続く扉を開いた。
「きゃぁ!」
同時に、短い悲鳴が部屋の中からあがる。
シンジは悲鳴よりも、その部屋の中にいた女性を見て、目を見開いた。
正確に言うと、その女性の服装に、だ。
「ア、アスカ?」
「バ、バカァ。み、見るなぁ!」
「ん、もう。なにも笑う事ないでしょ」
アスカの頬は、熟したトマトのように真っ赤になっている。
シンジは軽い気持ちで微笑んだのだが、アスカにとっては軽蔑されたように感じたのかもしれない。いたくアスカの気に触ったようだ。
「ごめん、ごめん。でも笑ったわけじゃないよ。なんだかひどく懐かしい気がしてさ」
アスカが着ているのは、高校のときの制服だった。
去年、大掃除をしたときに出てきて、懐かしくなってなんとなく袖を通したらしい。
シンジも同じ高校へ入学したので、毎日の様にアスカの制服姿を見ていた。
もう何年も前のことだ。
「うそだ。絶対笑った」
「笑ってないってば」
「笑った」
「笑ってない」
押し問答が何回か続いた。
「いいわよシンジったら。そうやってあたしをバカにしてればいいんだわ。
あたしも昔、アンタのこと散々バカにしたからね。
今、思いっきり笑うといいわ。
笑いなさいよ!」
横を向いたアスカの瞳が潤んでいた。
「バカだな、アスカは」
「どうせアタシはバカよ!」
振り向いたアスカの肩をやさしくつかむ。
「きれいだよ」
目を閉じてアスカを抱きしめる。
「あの頃よりも、アスカはきれいになった」
「でも……年をとったわ」
「うん。でも素敵に年をとった。
あの頃のアスカも魅力的だったけれども、今のアスカはもっと美しくなった。
それに……」
「それに?」
シンジはアスカの肩に両手を置いて、アスカの青い瞳を見つめた。
「その制服も、良く似合う」
アスカは困ったような、泣き笑いのような、笑顔を作った。
「もう。笑った罰だからね」
言いながら、アスカはシンジの唇に、自分のそれを重ねた。
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