EVERYTHING EVANGELION

第弐話  消された存在


 ネルフ主催の忘年会にシンジは参加していた。でも、人の集まる所が苦手なシンジは体調を崩してしまった。
「やっぱり気分が悪いから、外の空気を吸ってくるよ」
 シンジはそういって、パーティー会場を後にした。庭らしいところに白いベンチがあった。そこに座り空を見上げる。
 月は青白かった。あたりは静かな闇である。ただ月光が、シンジを照らしていた。やがて月に雲がかかりだし、あたりをさらに漆黒に包む。それまで静かだったところに犬の遠吠えが聞こえてくる。
「なんか、気味が悪いなぁ……」
「そう……気味が悪いわねぇ……」
「えっ……?」
 振り向こうとしたところを、何か鈍器のようなもので後頭部を強く叩かれた。
「な…なにを……」
 シンジはその場に倒れこんだ。叩いたのが誰かを確認しようと顔を向ける。
「い……いんちょ……?」
 そのまま、シンジは意識を失った。
 
 気がつくと、学校の保健室のベットの上だった。
「なんだ……夢だったのか……今何時だろう……どうして保健室に……まぁいいか」
 時計の針を見るとちょうど正午になるところだった。
「教室に戻ろう……」
 いつもなら保健室の養護教諭が居るのだが、今はいなかった。
「いつもは居るのに…」
 教室に向かうと、クラスメートが給食を取っていた。
「なんか・・寝てたみたいで…」
 教室に入るとみんなの視線がシンジに向く。
「おまえは誰やねん?教室間違えとらんか?」
 トウジがいう。
「ここは2−2よ」
 ヒカリがやさしく言う。
「そうだよ。僕は2−2のクラスメートじゃないか……」
「じゃあ、出席番号は?」
「2番だよ」
「2番は、そいつだよ」
 クラスがざわめきたつ……というよりも、みんな様子がおかしい。とシンジは思った。何か隠している
 そんな気がしたというよりも願望に近いものがあった。
「もしかしたら、転校生かもしれないわ。職員室に行きましょう?」
「そうかもしれんなあ……転校生多いし……」
 そう言うわけで、ヒカリに連れられて職員室に言った。
「うちのクラスに転校生かもしれない子が来ているんですけど……」
「碇 シンジです……」
「碇……?」
 年老いた担任の先生が、目を大きくしてシンジを見つめる。そして出欠表を覗いて言う。
「……その名前は出欠表にもほれ……ないじゃろう?それに転校生の届出もまだ来てないようだしなぁ……まぁ……しばらく教室で待っておきなさい。もしかしたらまだ、届が間に合ってないのかもしれん。
 今日のところは教室に戻っておきなさい。じゃあ……後は頼んでおきますよ。」
「はい、わかりました」
 そうヒカリに言って、担任の先生は、職員室を出ていった。
「というわけで、今日からこのクラスの仲間になった?」
 ヒカリに突付かれる……
「い……碇……シンジです」
「ま……よろしゅうなっ」
「え……ああ……」
 トウジに曖昧な変事をしながらそこにアスカとレイが居るのを見つけたが、無関心なようでこちらをみない。
「(どうなっているのだろう…)」
 やがて、昼休みも終わり午後の授業も終わった。帰りの会で先生が言う
「碇君は、隣町から転校してきたそうで、お父さんの転勤で来たそうだ。みんな仲良くするように……」
 そして、閉会しみんなが帰る中、先生にシンジは呼び出された。
「今日はどこか帰る当ては有るのかね? 届にはさっきの紹介で説明するように書いてあったが、両親も不明で内務省から転入届がとどいておるが、ほとんど黒く塗りつぶされて隠蔽されている。まぁ、そこは追求はしないでおこう」
 シンジはありますと答えようとして口を噤んだ。
「(ミサトさんも多分僕を知らないはずだ。)」
「いえ……」
「なら、学校の寄宿舎を使いなさい。相部屋になるがそこは我慢してくれんか?」
「あ……はい。」
 セカンドインパクトの後、孤児が急増し義務教育課程の家のない少年・少女は学校に併設されるようになった『寄宿舎』に住むようになった。ただ、寄宿舎の建設は15年経った今でも悠に進んでいない。
 その為ほとんど2人や3人の相部屋ばかりが現状である。と先生いわく。
「じゃぁ……部屋はここだから」
 と、地図と部屋番号に書いてある紙を渡された。
 シンジがそこにいくとやはり人が居た。
「(カヲル君……)入って……いいか……な?」
「良いに決まってるじゃないか。今日からここは君の家でもあるんだから。違うかい?
 碇シンジ君!それともネルフ本部初号機専属パイロット『サードチルドレン』と言うべきかな」
「え……」
 
 
 
 
 

 第弐話 続


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