EVERYTHING EVANGERION


    第壱話 雨が上がった後に・・・


  
 二人の男女が、部屋で向かい合っていた。男のほうは黒髪で、なんだか暗そうな少年、片や女の方は、栗色の髪が光るスタイルの良い少女。
「な・・・なに話そうか・・・」
少年は、場の息の詰まりそうな空気に痺れを切らして、向かいに座っている少女に向って言った。
「何でも好きな事話せばいいでしょ。この際私が決めてあげるわ」
いつもの少女にしては、気の利いたセリフだった。その瞬間までは・・・
 少女から発せられた次のセリフは、少年に動揺を与えるには十分過ぎるものだった。
「この前洗濯機にあった長い髪の毛。ミサトのでも、あたしのものでもなかったわ。一体誰の髪の毛なんでしょうねぇ?」
少年は少しでも話題を変えようと
「そ・そう言えばさっ。ミサトさんまだ帰ってこないね。何かあったのかな」
と切り出す。しかし少年はそのような話術に対してあまりにも経験不足のためか、お世辞にも効果は望めるものではなかった。案の定
「話をはぐらかそうとしても無駄よ。霧島さんにパンツ見られたんでしょ」
と、切り返された。少年はたじろき、その事実をしきりに隠そうとする。その姿はこっけいで、その出来事が図星である事は小学生にでも一目で察しにつくものであった。そして苦し紛れに
「!! 何言ってるんだ。そんなわけないだろう」
どっかでみていたのかな・・・と内心ひやひやしつつの少年の精一杯の答弁であった。
 その時、部屋に何者かが現れた。ミサトではない事は二人にも瞬間に理解できた。そしてその人物を見たとき、少女は嫌悪感をあらわにし、少年は安堵感を一瞬覚えた。ただし一瞬だ。その人物の発した言葉は少年に今一度絶望を味わせた。
「碇君・・・ふぅん・・・」
少年が壊れそうになっているのを尻目に、少女がその人物に告げる。
「優等生。ちょっと付き合いなさいよ」
少女は、優等生と呼ばれた人物を利用しようと、そう呼びかけた。
「わたし・・・用があるから。肉嫌いなの・・・」
そう言うとスタスタと外へ去っていった。自分の提案を拒否された事に不快感を示すが、すぐに気を取りなおして今度は少年をからかい出した。
「さぁって。みんなに言っちゃおうかな。霧島さんの下着洗濯機で洗ってた事。…冗談よ。笑いなさいよ」
少年があまりにも可哀想に思えたのか途中でからかうのを止めてしまった。
「笑えないよ」
少年は不快感を露わにした。その時また誰かが現れた。
「遅くなってゴメン。他のみんなは?」
少年は、初めてほっとした。なぜならミサトさんが帰ってきたからだ。
「まだ来てませんけど」
「まだ来てないんだ。あっ、そうそう。シンジ君、それとアスカ…ごめんけど買出しに言ってきてくれない?」
そう、少年の名前は『碇 シンジ』そして少女の名前は『惣流・アスカ・ラングレー』である。ミサトの発言に対して二人の反応は決まっていた。快諾したのは『シンジ』拒否的な反応を示したのは『アスカ』であることは周知の事実である。しかしアスカはシンジについていった。言っている事と行動が違うのは、なにかしらアスカがシンジを意識しているに違いない。ミサトは料理本を眺めていた。しかしすぐに本を閉じてしまう。頭をボリボリと掻くのは癖らしい。その時電話が鳴った。
「よう、葛城!これからレイを連れてそっちに行くから」
用件を言ってすぐに切れた。それからしばらくしてシンジとアスカが帰ってきた。
「レイと加持君は、すぐ来るって言うから。後は、カヲル君ね。リツコと司令と副司令は、用が会って遅くなるって。まっ・・・ぱ〜〜〜とやりましょ」
「料理作りますね」
そういってシンジは台所に入っていった。今日はミサトの家でパーティーをやる事になっている。どうしてミサトの家になったのかは解らないが、とにかくやる日にちと場所だけが唐突に決まったのだ。理由もなく…
「楽しそうだね」
次に現れたのは『渚 カヲル』謎の多さは、アスカに優等生と呼ばれるレイといい勝負である。シンジはカヲルの来訪に大いに喜んだ。やがて料理ができ、カヲルに手伝ってもらって運んできた。
「カヲル君。会いたかったよ」
「となりにいいかい?」
シンジが一段落して座ったときカヲルはそう言った。
「うん」
シンジが一番幸せそうにしているのを見て、アスカは少し機嫌を悪くした。
「よう!!葛城。調子はどうだい?レイも入ってこいよ」
その声を聞いてアスカの表情が良くなり、機嫌もすぐに良くなった。しかしいっしょにやってきたレイに対しては挑戦的な態度を取った。
「用が済んだから来たわ・・・」
しかしレイは取り合わない。さらに、ひげ親父まで付いてきた。そして来るなり
「シンジ、出撃だ・・・でなければ帰れ!」
と来たからシンジはますますこのひげ親父が嫌いになった。あまりにも突然のセリフに驚いたのはシンジだけではなかった。
「使徒は、まだ確認されていません・・・分かりました。シンジ君・アスカ・レイ・・行くわよ!」
ミサトも困惑した。がすぐに了解した。司令の命令は絶対であるからだ。4人はすぐにこの場を後にした。自分の家から出て行けと同居人でないひげ親父いわれたシンジは、少しだけ自分の父親であるひげ親父に殺意を抱いた。
「人はなぜこうも、死に急ぐのだろうか?リトルだね」
一番謎の多いカヲルに謎かけされたのだから、なんとなくしっくりこない。
「人間はそういう悲しい生き物だ」
その謎かけに答えたのは、人間の中でも一番悲しい人物であるようなひげ親父、『碇 ゲンドウ』であった。その答えにカヲルは、
「神話の時代に失われた『悠久の償還』それは、人に課せられた罰なのか?」
その後、カヲルとゲンドウの果てしない哲学が続いた。しかしあまりにも終わる気配が無いので、
「人は、限られた一瞬を生きる。だからこそ死に急いでいるのだろう・・・」
加持が一番まともな回答で締めくくった。締めくくったところでレイたちが帰ってきた。
「零号機に損傷が出ましたが、初号機・弐号機ともに無事です。零号機の損傷によりすぐの戦線復帰は不能です」
と、ミサトの略式報告が告げられた。
「ふっ.問題ない・・・」
いつもの決り文句で応答するゲンドウ。たまには違うコメントもどうなのかとミサトは思ったが口にはしなかった。そこにシンジが真剣な形相でゲンドウに発言した。
「父さん・・・僕、ひとつ気になることが・・・あるんだけど、いい・・・かな、聞いても」
一同があっと驚いた。一体こんなときに何を聞くのか?どんな話題なのか?そのことに一同は注目した。それを尻目にゲンドウが「早く言え」とせかす。
「あのさ・・・エヴァの中でトイレに行きたくなったら・・・どうすればいいのかな・・・」
彼は真剣なのだ。アスカはあまりにもおかしなそれも予想だにしない質問に腰を抜かしてしまった。
「あんたって、ほんっっっっっっとにばかね。そんなの決まってんじゃない。ガマンすんのよ。ガ・マ・ン ・・・よねぇ・・・ミサト」
アスカもなんだか本調子にならない返答を返す。
「まっ・・・そうならないように、トイレには行っときなさい」
ミサトも一応一歩引きながらもアスカに話を振られたリトルに正常な答弁をするよう心掛ける。しかしそこにいつの間にやら居た少年『鈴原 トウジ』が、馬鹿な発言をした。
「どうせ、なんとかっちゅう・・・液体で満たされ・・・」
液体名を忘れた事に、同じくいつの間にやってきたのか、悪友『相田 ケンスケ』が「LCL」であると助け舟を出す。
「そう!そのLCLの液体で満たされちょんやろ?漏らしても分らせんって。まあ・・・気分は最悪やろうけどな・・」
そのとたん場が急に寒くなった。そんな馬鹿な発言にアスカが制裁を加える
「さ・い・て・い・っ!!」
「いてぇ!!なにかますっじゃ!おんどりゃは!」
シンジも何とか丸く治めようと
「その話題、止めない?」
と切り出す。
「(平和だな・・・もし話題が変われば、!?葛城三佐・・いろっぽいなぁ)」
と思いつつ下品な視線をミサトに向けるケンスケ。しかし加持にはばれてしまった。
「いっ・・・いやべ・別に・・トイレ借りるよ・シンジ」
と逃げた。
「ぬるいな…」
その時点で、またいつの間にやってきたのか白髪の聡明な老人『冬月 コウゾウ』が理解した事を示す。しかし、ミサトは気づかなかったらしく
「なんのことですかー!?」
と素っ頓狂な発言をした。それを見かねてミサトと同期である科学者『赤木 リツコ』が、説明する
「ミサトは、勘が鈍いのねぇ・・・人生はロジックでないのよ・・・」
が、ストレートには言わなかった。そこにやっとケンスケが戻ってきた。
「おう!ケンスケ、便所おそかったなぁ・・・いいんちょ来とるで・・・」
と、トウジが言う。しかし今度はシンジが便意をもよおす。
「うっうんこがーーーーーー」
「さっさとトイレにでもどこにでも行きなさいよ!バカ。・・・さ、ヒカリあたしの隣にでも座って♪」
と怒鳴った。
「でも・・・碇君がかわいそう・・・」
ヒカリは、さすが委員長だけあってシンジへの心配を忘れなかった。
「そうだよ・・・だいたいアスカが話題を決めないからこういう事になるんじゃないか・・」
シンジが、意味不明に切れてしまった。すかさずアスカが反撃する。
「あ〜ら、シンジも怒るんだ? バァ〜カシンジ!!」
アスカの冷やかしにシンジは逃げた。でもちゃんと捨てゼリフを忘れない。
「もう・・・トイレ行って来るよ。 ・・・アスカ、加持さんいる前でそんな態度だと・・・ブツブツ(-。-) ボソッ」
シンジは何か秘策を思いついたようである。ぶつぶつと文句交じりに予告する。
「おれもトイレや・・・」
トウジもツレションする。その時冬月が真に戻って
「京都も暑いな・・・外では選挙のようだが・・・」
と切り出した。
「ふっ・・・所詮金の亡者には良く似合う余興だ・・・当選はもう大方決まったような物だからな」
ゲンドウのいつもながら「俺は裏事情に詳しいんだ」といいたげに発言する。
「・・・また票の買収か・・・」
そこに加持が秘策を耳打ちする。
「(にやり・・・)おもしろい・・・」
どうやらゲンドウもその気になってニヤニヤしていた。二人の悪巧みがまた始まったと冬月は顔を曇らせる。
「では、このプロジェクト開始します。ところでリッチャン、君と火遊びしたいな(笑)」
「さ〜て・・・ミサトが黙ってるかしら?」
リツコもミサトを出して断ろうとするが、かといって強く断るという感じではない。
「(苦笑いして)男は一度に2人の女を愛する事が出来るのさ。では碇指令、自分はスイカを見てきます。葛城、今度飲みに行こうか?」
ミサトにも気配りをして加持はその場を去っていった。
「ふん・・・口裏あわせるんじゃないわよ(ぷんぷん)」
ミサトは嫉妬している自分に気づいてはっとなる。その証拠として顔は赤くなっていた。
「それを知って老人達がどう言うか…」
ミサトと加持の関係がゼーレに何か関係あるのか?そんな含みを持たせて意味深な発言をする。アスカは加持に声をかけてくれなかったことに少し不満げにいう。
「加持さ〜〜〜ん・・・私は?なぁんで私を誘ってくれないのぉ〜?」
「なぜリリン達はこうも自分の事しか考えないのだろう」
「なぁに?私が自己中だって言うの?」
「ボソッ(その通りじゃないか。) ちがうの〜?アスカ」
アスカに対して容赦ないカヲルとシンジ…
にしてもカヲル君が居るとシンジは、かなり強気に出るようである。
「ほな、いくでぇ。そうゆーこっちゃ」
「鈴原・・・私も行く・・・」
トウジとヒカリは連れたってどこかに行ってしまった。
「トウジ、うまくやってるじゃないか。」
ケンスケもからかい気味に見守る。
「うるさいわい!」
「トウジ、まだいたの・・・?」
ケンスケがからかい気味に言った時にはトウジ達はもう居なかった。
「なぁ〜にぃ?・・・みんなで連れ添って、バッカみたい。ヒカリもあ〜〜んなジャージメンに付いて行く事ないのに」
アスカには理解できないといいたげにシンジを見据える。まさか…期待しているのか?
「(逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。)アスカ・・・外に行こうか・・・?ねっ・・・いこうよ・・・」
「そんなについて来て欲しいの?」
どこまでも素直じゃないアスカ…
「まぁまぁアスカ。連れショOは日本人の心なのよん♪・・・」
もっと素直になりなさいと言う意味でアスカを促す。
「!?・・・ばかみたい・・・そんなに言うならついてきてあげるわ・・・ いくわよ・・・」
どうしてそこでアスカがリードする!とシンジは不満げな顔を向ける。
「・・・(碇君は私の物よ・・・せいぜい楽しんでおく事ね)私・・・何を・・・」
レイは自分の嫉妬心に戸惑ってしまった。
「見せ付けてくれるじゃないの・・・しんちゃん」
ミサトは内心シンジの意外性を見てやっぱ男の子なのねと感心していた。

            第壱話  終劇

 
 
 

 『KISSの温度』に続いて、風野旅人さんから『EVERYTHING EVANGELION』の第壱話を頂きました。
 アスカと「連れショO」。女の子の場合でも、そういうのでしょうか?(^^;
 何にせよ、第壱話ってことは、第弐話があるってことで……
 この先、どうなってしまうのでしょう?
 ある意味興味津々だったりします。(^^;;;
 
 
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