どらこさんの
KISSの温度「」Edition 4th


 目覚めるとそこは彼の知らない部屋だった
 打ちっぱなしのコンクリート
 天井には裸電球がぽつんと弱々しい光を放っていた
「・・・ここは一体?」
 男は痛む頭を抑えながら 起き上がろうと床に手を置く
 しかし・・・
 
 ズキンッ
 
 背中に衝撃が走る
 心臓の丁度裏側、何か硬いモノがあたった
「 ぐっ・・・」
 思わずうめき声を漏らす彼の耳にひとつの声が聞こえた
 
「 ・・・気づいたの?」
 
 女・・・というより少女の声
 しかし不思議なことに それからはどんな感情をも聞き取れない
 硬質で無機質な若い女性の声だ
 その上
 ・・・どこかで聞いた覚えがあった
「 ・・・君は誰?・・・」
 
 うつ伏せに床に這いずったまま、彼が訪ねる
 
「 ・・・私がわからないの?」
 
 背中越しに少女が問うた
 苛立ちも憎しみも一切の感情を排して
 ・・・あぁ、この声は確かにどこかで・・・
 男は再び身体を起こそうと、腕に力を入れる
 しかし・・・
 
 ガシッ
 
 背中に走る 2度目の衝撃
 そして分かった
 彼は、自分が蹴られている事が・・・
 硬い靴で踏まれている事が・・・
 ・・・何なんだ、これは?
 顔を上げる事も出来ず、床をじっと見つめたまま 彼の脳裏には様々な思いがよぎっていくのである・・・
 
 
 不思議な沈黙の中
 不思議な少女の声が 小さく響いた
 
「 25万ヒット、おめでとう・・・」
 
 ピクンッ
 男の背中が一瞬 動揺する
 更に・・・
 
「 ・・・でも、どうして 私の話が少ないの・・・」
 
「 ・・・貴方、隠れアヤナミストなんでしょ・・・」
 
 
 その瞬間
 男の胸を去来するのは 紅い瞳の美少女
 自称 『隠れアヤナミスト』と称して 崇めている蒼銀の髪をなびかせる少女
 ・・・ま、まさか・・・
 そう、その声は 男が崇拝し祭り上げていた 彼の女神のモノであったのだ
 
 
 ・・・う、うそだろ
 ・・・レイちゃんが・・・
 ・・・あ、あのレイちゃんが・・・
 
 ・・・僕を踏んでくれているぅぅ〜〜〜
 
 
 突然の事に舞上がる
 そんな彼の耳に聞こえてくる 冷たい声
 
「 ・・・アヤナミストの筈なのに・・・何故 ここには弐号機パイロットのお話の方が多いの?」
 
「 ・・・何故、私ではなく 彼女が碇くんと一緒になる話があるの?」
 
「 ・・・それに何故『るなぶる』は一年も止まっているの?」
 
「 ・・・弐号機パイロットが出たところから、どうして進まないの?」
 
「 ・・・あの話は、私と碇くんが一つになるのではないの?」
 
 質問のたびに、硬い靴の踵が男の背中に穴を穿つ
 肩甲骨の盛り上がり
 柔らかい膝の裏
 盛り上がった臀部
 そして男の顎を、鋭く尖ったピンヒールが踏みつけた
 ジョリッ
 口の中に広がる コンクリートの細かい破片と鉄錆の味がする血液が苦い
 ジリジリジリ
 真紅のピンヒールが男の口を蹂躙する
「ぐっ・・・」
 微かに彼の瞳が捉えたのは・・・紅い瞳、蒼い髪、そして無表情な少女
 男はうめき声と共に ある叫びを漏らしてしまった
 
「 ああぁ、レイちゃん・・・もっと、踏んで〜〜♪」
 
 そしてその靴にキスをした・・・
 
 
 
 一瞬だけ、少女は動揺を示すと寂しそうにづぶやく
 
「 ・・・もう、駄目なのね・・・」
 そして小さな息を吐くと くるりと後ろを向いた
 コツコツコツ
 男が這いずっている床に 少女の靴音が流れる
 ギイィィ
 鉄の扉が開く音
 バタンッ
 そして扉が閉まると共に 少女の気配は部屋の中から消え去った・・・
 
 
 
 夢か 現か 幻か
 彼にとっての女神が さっきまでこの部屋に同席していたのである
 そして その足を踏んでくれていた
 ・・・夢なら覚めるな
 ・・・現実なら死んでもいい
 ・・・幻だとしても かまわない
 幸福と快感でジ〜ン痺れてしまった彼の脳裏に
 やがて 小さな疑問が浮かび上がった
 
 ・・・レイちゃんが僕を踏んでくれた
 ・・・そしてこの部屋から 悲しそうな顔して出て行った
 ・・・それは確かだ
 ・・・あの扉の閉まる瞬間に見た、彼女の顔は忘れられない
 ・・・
 ・・・
 ・・・
 ・・・
 ・・・それじゃ
 ・・・
 ・・・
 ・・・今
 ・・・今、背中に感じる この感触は何だ?
 ・・・今、僕を踏んでいるのは 一体誰だ?
 ・・・さっきから ギリギリと背中を踏み付ける この足は・・・
 
 彼は今まで、少女を見る為に曲げていた首を反対側に回す
 背中の圧力は相変わらずで、彼の身体は床に伏せたままだ
 首を曲げて、彼の視線に入ってきたモノは・・・
 
 さっき見た 紅いピンヒール
 そしてその上にある やたらごつい素足
 ・・・絶対、レイちゃんのじゃない
 更に視線を上げると・・・
 そこには期待していた透き通った紅の瞳ではなく、濁った赤いサングラスが彼の身体を見下ろしている
 そして・・・
 髭に覆われた ピンク色の唇が にやりっ と歪んだ
 
「 ・・・ふっ、問題ない 」
 
 
 
 レッドシューズの『R』(笑)
 
 
 どうぞ、リクエスト通りの赤いピンヒールです
 思いっきり堪能して下さいませ(ニヤリッ)
 

 

 

 


管理人のコメント
 どらこさんから、『Luna Blu』25万ヒット記念を頂いてしまいました。
 でも、これのモデルって、管理人ですよね。きっと。(笑)
 
>「 ・・・でも、どうして 私の話が少ないの・・・」
>「 ・・・貴方、隠れアヤナミストなんでしょ・・・」
 ええっと、なにせ「隠れ」ですからね。
 基本はアスカ×シンジのヒトなんですよ。(^^;
 
>「 ・・・それに何故『るなぶる』は一年も止まっているの?」
 それは禁句です。
 でも、もうそんなに経ちますか。(^^;
 
 しかし、最後は……
 ちょっとイヤすぎます。
 でも「G」ではなくて良かった。(^^;
 
 この作品を読んでいただいたみなさま。
 のあなたの気持ちを、メールにしたためてみませんか?
 みなさまの感想こそ物書きの力の源です。

 どらこさんのメールアドレスは seiriyu@e.jan.ne.jpです。

 さあ、じゃんじゃんメールを送ろう!

△INDEX