BGM< ジョーズ
下校時間
わらわらと 同じ制服の少年少女達が 校門から 流れていく
男の視線は 何人もの生徒を 通り過ぎていった
同じような黒髪に黒い瞳
同じような年齢の子供達
男には それが ”群れ”にしか見えない
ただ 漠然と眺めていた・・・が
その目が とある少年の姿を捕らえると、ピカッと光る
「 ・・・見つけた・・・見つけたぞ 」
「 あの少年は・・・私の助けが必要だ 」
そして にやりっと 微笑むと、目標に向かって 静かに歩き出した・・・
「 ・・・はぁぁぁ 」
何人もの生徒の中で ため息が洩れる
彼は 前方に居る 男の子と女の子を 何とわなしに見つめていた
黒いジャージの少年と おさげの少女
「 ・・・トウジも委員長も、な・・・」
10メートル先のカップルは 楽しそうに談笑している
つい 最近までは、少年の隣に居たのは 彼だったのだが・・・
その位置は 彼女に取られ、今はまるで 仲間外れの状態であった
ま、付き合い始めた カップル
今は 互いの事しか見えないのも判るが・・・
「 それにしたってなぁ・・・」
流れてくる幸せなオーラに 耐え切れず、横を向くと
・・・そこにも 楽しそうな カップル
反対側も しかり
改めて 見渡すと、周囲は ほとんど カップルだらけ
眼鏡の少年は 盛大にため息を吐いた
「 良いさ、俺には これが有るから・・・」
肩から吊るしてあったカメラを 優しく撫でる
そんな彼の耳に はしゃぐ 男女の声
「 やだぁ〜、もぅ〜♪ 」 「 だってさぁ〜 」
ギリッ♪
思わずカメラを握った手に、力が入る
地面に叩き付けたい衝動に駆られたが、危うい所で 踏み止まった
「 ちっ!・・・俺も、彼女が居れば・・・」
ため息混じりの声が 洩れた
その時
彼のすぐ後ろから 低い男の声が 流れた
「 ふっ・・・その願い かなえよう・・・」
( なに!?)
思わず 振り向いた 彼
しかし その時には 既に 彼の顔には、男の腕が回されて
何かが 目前まで迫ったか、と思うと 唇に生暖かいモノが 押し付けられていた
余りにも 間近にある為に、視界がぼやける
ただ 判ったのは 赤いモノと黒いモノ
それが 顔面に張り付いていた
やがて 目のピントが合うと
赤いサングラス、黒い髪
そして ガサガサに乾いた 血色の悪い肌 と 判明する
同時に判った事
・・・それは 自分が キスされている事だった・・・
唇に押し付けられている ブヨブヨした柔らかい 感触
口の周りには チクチクしたモノが 肌を刺していた
鼻孔に流れる どこか オヤヂ臭い 体臭
「 &%@@!? 」
( 嘘だろ? なんで・・・俺の ファーストキス がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)
余りの出来事に、頭が パニックする 少年だった・・・
『 先輩♪ 』
校舎の裏で 呼び止める 可愛い声
振り向くと そこに居たのは 顔を真っ赤に染めた 少女
『 ん、何か用?』
『 あの・・・私、先輩の事・・・好き・・・』
3度目のデート
愛らしい仕草を繰り返す彼女に、俺は 懸命にシャッターを押す
美人とまでは 言えないかもしれないが
俺を必死に慕う様子は 何とも 可愛い
『 先輩♪ こっち、こっち〜 』
『 よぉ〜し、今 行くぞぉ〜 』
はしゃぐ 彼女を捕まえる
触れ合う腕と腕
思わず 見つめ合う 俺と彼女
そして 彼女はゆっくりと 瞳を閉じる
俺は・・・・・・・・・・・・
瞬間
彼の意識の中で、夢の少女の顔が 妖しい中年男に すりかわる
どれだけの時間 トリップしていたのだろう
それは 一瞬のようでもあり、永遠だったかもしれない
がて 唇と唇が ようやく 離れた
つぅー と 銀色の糸が つながれて すぐに切れた
少年の体が ガクガク震えた かと 思うと、ゆっくりと 膝から崩れ落ちる
「 えっへ、えっへっへっへっ・・・」
乾いた笑いだけが 空しく 響いていった
周りを見渡すと、グルリッと 囲む 人垣
何十人もの人達が、強ばった顔で 見ていた
「 ・・・ふっ 」
男は そんな 見物人達に ニヤリッと笑う
そして 地面にペタンッと座った少年に
眼鏡がずり落ち、ソバカスだらけの顔を クシャクシャにしている 少年に 向かって 言った
「 ・・・これで、君も 人気者だな・・・」
「 ふっ・・・問題ない・・・」
なおのコメント(^ー^)/
ケンスケも「G」の癒しの対象にされてしまいましたね。(汗)
でも、「G」はどうしてケンスケが癒しを必要としていると言うことがわかったのでしょうか?
あ、見ればわかるか。(爆)