これはある男の物語でもある
神との融合によって 新しい”癒し”の力を 得たと 思い込んだ 男の話
そして 彼は 恐怖を撒き散らした
無意味な程 重厚な扉
彼女・・・葛城ミサトは 扉の前で 立ちすくんだ
背中に走った 一瞬の悪寒
呼び出された時に見せた部下・・・マヤの脅えた瞳
そして これから合わなければならない 男との面会
「 はぁぁぁ・・・」
彼女のため息が 扉に当たって散った
しかし いつまでも ここに居る訳にもいかない
気を引き締めると 扉のブザーを鳴らした
「 ・・・誰だ?」
インターホンから流れる 低い男の声
(呼び出したのは、アンタでしょ!)
そんな怒りの声を感じさせずに、彼女は答える
「 葛城3佐です。御命令により、出頭しました・・・」
そして 扉は ゆっくりと 開いた
廊下と比べると、部屋の中は 薄暗い
(これじゃ 目に悪いわね・・・)
そんな事 思いながら ミサトは 部屋の中に入る
目が 暗がりに馴れてくると、部屋の中央に 大きなデスクが 設置されているのが 見えた
そして そのデスクの上で 両手を組んでいる 男
彼女の上司
国連非公開組織 ネルフ 総司令 碇 ゲンドウ
にやりっ と口を歪ませると こう 言った
「 ・・・御苦労 」
ミサトは、デスクの前で 非の打ち所のない ”敬礼”を 披露した
すっ と伸びた 背筋
右手は きちんと 額に揃え
目は しっか と ゲンドウの顔 15センチ上方に 当てた
しかし 一瞬の目の動き
それによって 彼女は 部屋の壁ぎわに ずらりっと 並んだ 男達の影を捕らえた
黒服に サングラス
たくましい体つきの 男達
( な、なんで 諜報部の奴等が・・・)
しかし、ミサトも 鍛えられた軍人
瞳に 動揺を表す事は なかった
・・・内心は 欺瞞に満ちているが
諜報部と作戦部
影の部隊と 日の当たる職場
その間には やはり 対立関係が 存在する
作戦部長たる自分が 呼び出される
そして 自分を囲むような 配置の 諜報部
( 一体、どういうつもりよ?)
内心で 歯ぎしりしながらも、彼女は彫刻の様に 立ち尽くした
ゲンドウの言葉を 待ちながら・・・
「 ・・・ときに、葛城くん?」
ゲンドウの口が 開いたのは たっぷり 2分過ぎてからの事だった
重い空間の中 やっと 見せた進展に、ミサトは 飛びついた
「 はい、何でしょう?」
「 ・・・情報によると、君のアルコール摂取量は 増えているようだな・・・」
ギクッ♪
ミサトの心臓は 高らかに 鳴った
( くっ・・・こいつ等 告げ口したなぁ〜〜 )
殺気を込めた瞳で、壁際の男達を睨んだ
男達の顔は、暗がりと サングラスよって 判別できない
無言で 並んでいた
「 ふむ。 作戦部長である 君が、酩酊するのは ネルフにとって 好ましい事ではない・・・特に 何時 使徒が 出現するのか わからない 今では・・・」
ゲンドウの冷たい声だけが 流れた
「 これは 何とかしなければならない・・・」
そして ゲンドウは 立ち上がった
「 ・・・それで 私が 何とか しよう・・・」
ニヤリッと 唇を 歪めながら・・・
「 最近、私は ある 不思議な力に 目覚めてね・・・」
ゆっくりと ゲンドウが 近づいてくる
すると 諜報部の男達も 動きはじめた
・・・ミサトに向かって
「 ・・・癒しの力だ。どんな事で 癒す 不思議な 力・・・神の技・・・」
歩を進める ゲンドウ
ミサトは 急いで 敬礼を解くと、ゲンドウを避けようとした
そんな ミサトに向かって、一斉に襲い掛かる 影
「 な、何よ! アンタ達!」
ミサトの怒号にも、男達は 無反応だった
たちまち、数人がかりで 羽交い締めされる
「 ちっ・・・」
ミサトの歯ぎしり
相手も 軍人だ
戦う為に 訓練された 男達
せめて 武器が あれば 撃退できるのだが、司令室には 持ち込み厳禁
と、なると 後は 数の論理
ミサトの体は、完全に拘束された
しかし、ここで 彼女は 奇妙な事に 気づいた
間近で 見た サングラスの男達
何事にも 動じない 彼等が・・・
( ・・・脅えている。こいつ等 脅えてるんだ・・・)
黒いサングラスの奥の瞳が、恐怖に震えていた
その視線の先を探ると・・・デスクの影に 横たわっていた ある物体に 気づく
・・・男
痙攣しながら 口から 泡を吹いている 男
その顔には 見覚えがある
( あ、あれは・・・諜報部長! なんで、アイツが・・・)
そんな ミサトの視線に 気づいたゲンドウが ゆっくりと 微笑んだ
「 ・・・彼かね? 彼も 最近 体の調子がよくないそうだ・・・だから、私が 癒してやったのだよ・・・ふっふっふっ」
不気味な笑い声が 低く 流れた
「 すると、途端に 元気になってね・・・皆で 取り押さえなければ ならなかったのだ。今は 大人しくされているがな・・・」
ゲンドウの妖しい笑みを向けられた諜報部員は、すぐに 顔を背けた
そのあごが 少し 震えている
「 い、癒しの力って?」
ミサトの声も かすれがちだ
「 ふっ、すぐにわかるよ・・・すぐにな・・・」
ゲンドウの笑みが 一層 大きくなった
そして しっかりと ミサトの頭を つかむ
「 ひっ!?」
ミサトの短い悲鳴
彼女が そして 見たのは
・・・赤い サングラス
・・・黒い あごヒゲ
・・・そして 艶々した ピンクの唇 だった
「 !%&$¥&&&###@@@@@@@@@@@@@ 」
声にならない 悲鳴が 響く
唇を覆う 不気味な感触
ちくちくする ヒゲ
ドアップの ゲンドウの 顔
いっそ 失神できたら 楽だったろう
しかし・・・彼女は 鍛えられた 軍人であった
敵の前で、意識を失うなど 許されない事である
そんな 彼女には 救いである 闇は 中々 訪れない
そして 地獄は 続く
「 ・・・うっうっうっ・・・止めます。 もう、酒なんか 一滴たりとも 飲みません・・・」
鳴咽を堪えながら、涙混じりの 声の ミサト
ゲンドウは、そんな ミサトを 満足そうに見下ろした
「 ふっ・・・問題ない・・・」
ゲンドウの 勘違いの ”癒し” は まだまだ 続く・・・(爆)
なおのコメント(^ー^)/
うっうっうっ。い、いやすぎる。(泣)
ミサトさんかわいそう。現実から逃避することも出来ないなんて……(汗)
話数を重なるごとに、強力になってゆく「G]!
彼の行き着く先は……はっ!
ま、まさか!
そ、それだけは、いやだ〜〜〜!(爆)