キスの温度 R Edition












全てが終わった日・・

私の新しい人生が始まった。


そう、人生。
私は人間になったの。

人ではなく、使徒でもなった私が人間になれたのは、碇君のおかげ。

他人との関わりを拒絶していたあの人は、最後の最後で人間としての道を選んだ。
結果、人類はまた進化を模索する事になったけど・・


全てが溶け合った世界。

それを再構成するとき、至高存在と一体化した碇君は私を人間として位置づけてくれた。
彼の姉でも妹でもなく、親類ですらない赤の他人。
一見突き放されたようで、そうじゃない。

私はそこに一つの可能性を見いだす。


碇君が補完を拒否したのはあの人がいたからだと、私は知っている。

紅い髪の毛を持ったあの人・・・アスカ。
碇君との融合を拒みながらも、碇君を求めた人。

そして碇君も、私との魂の融合より現実世界でアスカと生きる事を望んだ。

それは私の敗北。

求め合う二人の絆に私は負けた。
彼のお母さんの遺伝情報を持つ私が、最初から勝てるはずもなかった。

でも他人となれば条件は五分。

人間になった私は彼の子供だって産める。
体だって鍛えれば丈夫になる。
アスカになんて負けない。

仕切り直しよ!



と、思ったんだけど・・








「ダメじゃないシンジ・・パンくずで服が、ほら」


「え?そうかな・・」


今日はネルフ職員組合の親睦会でピクニック。
私と碇君、そしてアスカは特別招待されて同行してるの。

約束はしてなかったけど、私は碇君のためにお弁当を作ってきたわ。

リツコさんとマヤさんに教わった料理。
まだそんなに上手くは出来ない・・

でも一生懸命作れば、碇君はきっと食べてくれるってそう思った。

たとえ見た目は悪くても碇君は気にしない人だって・・
みんな言ってくれた。

だから、いっぱい作ったのに・・


「形は崩れてるけど、このおにぎり美味しいじゃないレイ」


「なんであんたが私のお弁当食べてるの!?」


「ふぇ?」


私の愛が詰まった愛情弁当をたいらげようとしているのは、碇君ではなくて霧島 マナ。
かつての敵・・
そして私と同じ、恋の敗残兵。

戦自から逃げた彼女はサードインパクトのどさくさでネルフに潜り込み、まんまとパイロット
候補生の地位を得るに至ったの。

勿論、彼女一人でそんな事が出来るはずない。
無精髭の中年と髭親父を上手く丸め込んだみたいね。
ロリコンにも困ったものだわ。


「・・・・・っと、美味しかった。
いいじゃない、愛しの碇君はアスカの愛妻弁当しか食べないんだから。
残したら勿体ないと思って、私は仕方なく食べてあげたのよ」


「そ、そんな事ないわよ。
私が持ってきたって言えば、碇君は・・」


「あれを見てもそう言える?」


マナが指さした先には、衆人環視など物ともせずにキスする二人。
何時の間にあんな事にまで・・

葛城さんの言っている通りね。
碇君はすっかりアスカに骨抜きにされてる。
もう、ダメなのね・・


「もういいわ。
私は引き上げるから・・マナも来ない?」


「あら珍しい、レイが私を誘うなんて」


「そういう気分なのよ」


「じゃ、お付き合いしますか」


私の思いは終わった。

もっと早く見切り付けてれば良かった気もする。
少し遠回りしたかな・・

でも私は自分の可能性を信じる。

きっと私にだって運命の人がいるに違いないと・・
昔の私じゃない。
性格だって、マナと同じくらいに明るくなったし。


「元気出しなさいよ、レイ。とっくに諦めた人でしょ?
それに、男は彼一人じゃないぞ。
もっといい男探して、アスカを見返してやればいいじゃない」


口は決してよくないけど、マナはいい友達。

家に帰る道すがら、彼女は色々と気を遣ってくれる。
こんな彼女が男の子だったら、迷わず好きになってるのに。
世の中うまくいかな・・・くもないか。

別に性別にこだわらなくたって・・


「そうね・・じゃあいい男が見つかるまで、マナで我慢しとくわ」


「へ?・・・・・どういう意味?」


「こういう意味よ」


ちゅっ


いきなり唇は・・やっぱりダメ。
最初はほっぺから。

マナの頬はとても柔らかい・・

癖になりそう。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってレイ!
私、そっちの方はまるで・・」



「だから、格好良い男の子が見つかるまでの繋ぎだったら♪」


「見つからなかったらどうするのよ!」


「その時はその時で考えましょ」


「無責任よ〜〜〜!」




私はずっと、このままでもいいわよ・・・マナ。

 

 

 


管理人のコメント
 でらさんから、とうとうレイちゃんバージョンを頂きました♪
 しかし……シンジ君はやっぱりアスカさんとべったり。(^^;
 し、しかもレイちゃんは、マナと……
 ひぃ〜〜〜(^^;
 ……でも、それもいいカモ。
 
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